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第六話 少女との出会い

「アレス・アカデミアへの受験希望の方は、こちらの建物へお入りください。」


俺れはその指示に従って、大きな建物に入った。おそらく公民館か何かだろう。そこにはすでに二千人強の同年代のものが座っている。俺が指定された会場の席に座っていると、


「なんだあいつ。」「髪白くね?」「それより服が安物のそれなんだけど…。」


俺のことを言っているのだろうか。何やら喋っている。そんなことはどうでもいいから、脳内で術式について考えていると、


「ねえ、君。ここはアレス・アカデミアの受験会場なんだけど、関係者以外は立ち入り禁止なんだよ?」


なんだこいつは。俺が受験者だということがわかってないのか?とりあえず無視でいいか。


「おい、君のことを言っているんだよ!!」


流石に無視できないな。


「えっと、それってお…僕に言ってるんですよね。だったら僕がここにいることは正解だと思うんですけど。」


「はあ?そんなわけないだろ、お前みたいな貧民が受けれるような場所じゃねえんだぞ。」


何を言っているのだろうか。この学院は俺と同じ世代だったら誰でも受けれるはずだが。俺が何言ってるかわからないみたいな顔をしていると、


「わからねえのか?だったら教えてやるよ。お前みたいな貧民は勉強したって馬鹿なのは変わらないんだから、帰って他の学院にでも行ってろよ。」


「馬鹿ってどういうことでしょうか。これでも結構勉強はできる方なんですけど」


「あのなぁ。どうせお前が住んでる場所ではだろ?しかも家庭教師も雇えない独学。そんなんじゃダメなんだよ。独学なんて、できることは限られてんだ。残念でした。どうせ一次試験も通れずに不合格だ。ああ、これまで必死にサポートしてきた両親に顔向けできねぇなぁ。」


さっと周りを見渡すとこいつのようなお偉いさんの子どですよ感があふれている人間がたくさんいて、クスクス笑っている。


「すみませんが…」


俺が言い返そうとすると、


「はーい、ではみなさん着席してくださーい。これから試験の概要を説明します。」


試験官がやってきたた。


「ちっ」


あいつはそう舌打ちして自分の席に帰っていった。俺も不完全燃焼感がある。


「みなさんわかっていると思いますけど、これから始まるのは王立アレス・アカデミアの入学試験の一次試験、筆記です。合計1000点満点で、500点以上の者が2次試験の実技に進めます。筆記には地理、歴史、薬草一類、薬草二類、魔法基礎、魔法応用、数学、法律、文学、複合の10の科目があり、それぞれ100点満点です。制限時間は20時間、この時間の間に自分がしたいものから解き進めて行ってください。それでは試験用紙を配ります。」


そういうと試験官が何やらぶつぶつ言い始めた。すると俺の目の前に紙の束が現れた。なるほどこれが術式の実践的な使い方か。魔法でもできることではあるが。


「言っておきますけど、カンニングは即失格、魔法の使用も見つかった時点でアウトですよ。それでは、初め!」


そう言って試験官は術式で作り出したであろう時計を進め始めた。


正直に言おう。試験は俺が想定していた10倍は簡単だった。何せ20時間もあったが、8時間ほどで全て終わってしまったのだからな。正直500点以上なんて簡単じゃないか?と、心配してしまうほどだ。もしものことがあったら、【思考分割】と【思考加速】を併用しようかとも考えていたほどだが、拍子抜けだ。まあただ時間が余ってしまったことは重大な問題だ。とてつもなく暇である。仕方ないから寝ることにした。見直しなんてしなくても大丈夫だろうしな。



「おーーい、起きてー。もうこんな時間だよー。」


声が聞こえた。誰だろうか?というか俺は何をしていた?確か俺は、、、、


「そうだっ。試験、あの後どうなった?」


そう言って俺は顔をあげる。そこにいたのは少女だ。と言っても俺と歳は変わらないだろうが。


「試験?もうみんな帰っちゃたよー。君があんまりにも気持ち良さそうに寝てるからパパが起きるまで見ておいてって。本当に困ったわ。あっパパっていうのはあの試験官のことねー。」


正直俺は彼女の話はあまり耳に入らなかった。それはなぜか、彼女の容姿のせいというのも少しはあるがほとんど彼女の素質である。聖力の探知はまだ慣れていない俺でもわかる10歳にしては膨大な量の聖力。さらにその聖力は光属性を得意とするものに違いない。光属性の魔法を使えるというものは稀有な存在だが、ここまで光に適性があるものは魔族領にもいまい。そんな俺の反応をどう捉えたのか


「あっ私ったらまだ名前を言ってなかったよね。アテナ・メーティスです。ふふふ、それにしても君、本当に面白いね!あんなに大切な試験で眠っちゃうなんて。大丈夫なの?」


そう話しかけられて俺は我に帰った。


「ああ、あの試験ね、ちょっと簡単すぎて眠くなっちゃったんだ。後12時間も耐えられなくて寝ちゃった。」


「え?後12時間ってことは8時間であの試験の問題全部解いたの?早過ぎない?」


はて、と思った、そんなに早かったか?


「え?あの問題だからそれぐらいだと思うんだけど。」


「いやいや、私なんて20時間かけても7割しか解ききれなかったよ?」


「そんなことないでしょ。あんな問題…」


「そんなことあるの!でもなんだか悔しいな〜。自分の中では結構できてた感触だったのに、こんな人がいるなんて。あっあなたが起きたらすぐ帰るようにって言われてたんだった。それじゃ!」


そう言って荷物をまとめて駆け出していくアテナ。しかし、突然こちらを振り返ると


「そういえばあなたの名前を聞いてなかったわ。なんていうの?」


「ん?ああ、ラーザだ。姓はない。また縁があれば会おう!」


「わかった!それじゃあね、ラーザ君。」


そう言ってアテナと別れた俺は誰もいない試験会場で一人帰り支度を始めるのであった。

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