表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/199

第三話 ミトウワ村での生活 後編

 昨夜の興奮から一晩、俺は脳内でも冷静さを取り戻し始めた。つまり俺はこれから人間の魔法である術式を使うことができるということだ。朝ごはんを食べながら、さてどんな術式を使おうかと思考を巡らせていると


「どうしたの?ラーザ、いいことであった?」


セリアシアがそう尋ねてくる。やべ、ついついニヤケが出てしまったか。


「ううん。全然そんなことないよ。」


「そう?でも何かあったらきちんと報告してね。お母さん達はあなたのことについての話を聞くのが1番の楽しみなの。」


なかなかに嬉しいことを言ってくれる。理由は難しいのだが俺の実の両親は2000年も前に無惨な死を迎えている。それ以降は誰からも俺の話を一番に考えてくれるやつなどいなかった。そう考えれば人間として新たな命を迎えたことも悪くないのかもしれない。


「じゃあ、そろそろ行ってきます!」


 朝ごはんを食い終わると俺はお昼の弁当を持って日々の日課である畑仕事の手伝いに行く。2〜3件の農家の手伝いをして少量ながらお金も貰っている。今日は米農家と、野菜全般を扱っている農家に行く予定である。


「よお、ラーザ、元気にしてるか?」


「おはようございます。ゼムルド村長。」


今話しかけてきたのはこの村の村長であるゼムルドだ。8年前のあの日には名前を誰も呼ばなかったために知る術もなかったが、2年ほど前に自己紹介をしてくれたのである。結構面倒見がよく村の人全員に好かれているいい村長と言える。


「今日も畑の手伝いかい?元気なことだ。うんうん、働く子にはご褒美だよ。」


そういうと村長は、俺に飴玉を一つくれた。飴玉は魔族領にもあったものだが、糖類が貴重なこの田舎では結構なご馳走である。


「わあ、いつもありがとうございます。」


「いやいや、いいんじゃよ。ところでラーザよ、聞きたいことがあるんじゃが。」


「聞きたいこと?」


聞きたいこととはなんだろうか。


「お主の髪の毛とその瞳の色はそんなにも白かったかね?何、気のせいかもしれんのじゃが1ヶ月前と比べても相当白い気がするんじゃよ。」


そのことか。これは魂の記憶が現在の肉体に影響を与えていることで起こる現象である。正確に言えば、魂に刻まれた自己像が能力に害がないレベルで肉体に現れるというものである。俺の場合は体全体の色である。髪も目も強いては肌の色まで白い、というのが2000年間で俺の中で確立された自己像であるために、成長していくにつれて髪も目も肌の色も白くなるのである。と言ってもこれは、転生後の肉体に魂がよく馴染んでいるという証になるためあまり害はない。このことに気づいたテオドナとセリシアは俺の体質だという解釈をしている。まあそういう風に間違ってくれた方が都合がいいため黙っておく。


「わかりませんが、両親が言うにはこれは僕の体質だそうです。別に体に害があるとかではないため大丈夫だと思いますが。」


「そうかそうか、体質かそれならよかった。すまんのう、引き止めてしまったわい。今日も頑張るんじゃぞ。」


「わかりました。がんばりまーす。」


そう言って俺は村長との話を終え、まずは米農家の場所に向かうのだった。


「おおー。毎日ありがとうねぇ。今日はこことあそこしてくれないかね?」


「わかりました。」


今日も昨日までと変わらない1日が始まった……



と、そんなわけもなく、今日は昼から人間版魔法である術式の勉強をしようと思っている。と言っても畑仕事のあと、8歳の体では相当疲れていて普段は広場のベンチで休んでいる頃なので激しいことはできない。ということで早速俺は村の本屋で『魔法の基礎の基礎』という本を買ってきた。人間領では術式のことを普段は魔法と呼ぶらしく、魔力を使った魔法と棲み分けるとき以外では術式という言葉を使わないのである。魔族領とは違う文化の一つであった。


「なになに、魔法は言葉で聖力を制御し具現化する行為であると。なるほど、魔力を使った魔法のように魔法陣を描いて制御するのではなく言葉による制御なのか。」


その後も術式もとい魔法についての理解を深めていって、ようやく第一章【魔法の意味】を読み終えた頃にはすでに随分と遅い時間帯になってしまったため、今日はこの辺にして家に帰ることにした。


 俺が今日買った本を家に帰ってさらに読み進めていると、母さんがやってきて、


「あらあら、この歳でもう魔法の勉強ですか。さすがだわ。それにしてもどうしたの?突然。」


と尋ねてきた。


「もうそろそろ僕も10歳でしょ。10歳から都会の方の学園に行くんだから、これぐらいしとかなきゃと思って。」


この国では10歳になると6年間の学園生活が義務付けられているのだが、この村には学園と承認されているものが存在しないため、都会の方に出て入学しなければならない。


「確かにそうだけど、まだ早すぎないかしら……っともうそろそろテオドナさんが帰ってくるわ。夕食の準備しなくちゃだから片付けといてね。」


「おーーい帰ったぞー。」


今日の夕食は魚の塩焼きだった。一見普通の塩焼きなのだが、塩加減が絶妙で絶品である。


「うん、やっぱりセリシアの料理は最高だなぁ。」


テオドナはいつでも同じことを夕飯の時にいうのだがこれに関しては文句なしの同意である。そういう風にして今日もいつもと同じように夜が更けていく


「提案なんだが、次の大型安息日に家族みんなで王都へ旅行にでも行かないか?」


いつもとは違う話題が提示がされた。

とりえず今回はここまで投稿させていただきます。少し期間が開いちゃいましたかね?次話は明日金曜日に登校予定なので楽しみにしておいてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ