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第三話 ミトウワ村での生活 前編

俺がテオドナに拾われてから8年の月日が過ぎた。8年間で俺は随分と成長し、当然ながら喋れるようになったため、テオドナやセリシアとの会話もしている。


「母さん、今日のご飯は何?」


「今日はラーザが好きなシチューよ。」


これには普段2000年分の記憶がある俺もガッツポーズをしてしまう。シチューといえば1800年前にお忍びで人間領を旅したときに(冷戦中ですでに境界は閉じられていたが、当時の俺は当然すでに魔帝と呼ばれ四大魔族の一人だったため、魔法でバレないようにするのも容易かった。)偶然入ったお店で偶然発見した最強の料理だ。何せ店に頼み込んでレシピまで教えてもらったのだから。


「よっしゃ。俺母さんの作るシチューまじで大好きなんよね。いやもちろん他の飯もうまいけどさ。」


お世辞抜きにそうである。セリシアが作る料理はどれも魔族領で食べてきた同種のものよりも数段美味しかった。


「もうそろそろテオドナさんも帰ってくるはずだけど……」


「ただいまー。いやぁ今日も疲れたぜ。」


これは驚くべきことなのだがこの二人は何故か知らないがお互いが帰ってくる時間帯というのをしっかりわかるのである。このことについて以前イザベラに聞いたところ


「愛のなせる技だよ。」


と言っていた。


夕食を食べ終えた後は勉強をする。と言ってもほとんどは2000年間の生活で知っていることなので、他のことを考えている。しかし、時々セリシアやテオドナがどういうことを勉強しているのかなどを聞いてくるため1つの思考では答えられない。ではどうするのか。こういう時こそ魔法の出番である。魂のみで行使できる魔法に【思考分割】というものがある。文字通り自らの思考を分割して同時に違う事柄を考えるというものである。デメリットとしては分割しすぎると魂に負荷がかかってショートしそうになるのと、2つに割れば思考スピードが2分の1、3つだと3分の1というように思考のスピードが落ちてしまうということだ。それを克服するために、【思考加速】という魔法を同時に使っている。これは文字通り思考を加速するという魔法である。常時発動の限界は100倍程度だがめちゃくちゃ無理をすれば1400倍までは加速できる。まあ5秒も持たずにショートするが。


「本当にラーザは勉強好きねぇ。偉いわぁ。」


「うんうん、勉強する子は将来が期待できるな!父さんは嬉しいぞ。」


セリシアとテオドナは普段から俺の勉強風景を見ながら雑談している。ほとんどのことを2000年間の生活で知っているが、人間の歴史や法律などはあまり深くは知らないため時々二人に聞いてみたりする。


「ねえねえ、どうして英雄リースは国王からお誘いを受けずに貴族にならなかったの?」


昨日から疑問に思っていたことだ。貴族というのはこの国特権階級であり、さまざまな権利がある。例えば苗字を名乗る、税の免除等。それを断ったというのは正直意味がわからない。


「それはな、リースが平民の出身だからだよ。爵位を賜ったら、子孫にまで特権が渡されるだろう?平民として貴族の支配の苦しみを知っていて、自分の子孫がそれをしないとは限らないだろう。だから、貴族にならなかったんだ。人間が権力を手にしたらどうなるかをリースはよく理解していたんだよきっと。」


テオドナはとても能天気だが、そういうことを考えられるいい人間出るということがわかってきた。セリシアも同様に。貴族に話は俺もよく耳にする。実はこの村は貴族の支配を受けていない数少ない村であるということ、他の村の中には重い税に苦しんでいる所もあるということ。正直貴族という制度は古すぎる制度である。魔族領では300年ほど前に四大魔族全員の合意によって貴族制の完全撤廃が実現された。


俺の思考の片方がそんなことを考えている間にもう一つの思考は興奮状態にあった。それはなぜか。今ここに新しい魔法を完成させたからである。これは俺が8年前、この村に入村を許された日の翌日から頭の中でずっと考えていた。魔法の名前は【聖力変換】。その効果は自分の魔力を聖力に変換するというものである。言葉で説明するととても簡単そうに聞こえるが、めちゃくちゃ大変であった。まず、テオドナとセリシアに見つからないように全て頭の中で考えなくてはいけない。そしてその変換の手順である。実を言うと魔力と聖力は元は同じエネルギーが変化したものであると言うことは昔からわかっており『マナ』と呼ばれていた。つまり魔族の魂ならば、マナを生み出しそれを魔力に変換することで魔力を生み出していると言うことだ。そしてそのプロセスは不可逆性であるとされており、マナその物を取り出すことは不可能と言われていた。しかし俺は8年と言う長い月日の間、常に【思考分割】と【思考加速】を使い続けようやく魔力からマナを生成し、さらにそのマナを聖力に変化させる魔法を完成させたのである。まだまだ試作品段階の魔法であり、魂のみで行使しようと思ったらとてつもなく効率が悪く1000000の魔力で1の聖力というほとんど使い物にならない魔法だが、これからさらに改良をして行きたいと思う。

 そうこうしているうちにもう片方の思考が眠くなってきたため、今日はこれくらいにして思考を統合し寝るか。


「おやすみ。父さん、母さん」

とりあえず今日はここまで。次の投稿はいつになるかわかりませんが、1週間に一回は必ず更新しますので気長に待っていてください!!

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