第二話 ここがミトウワ村だ
きこりに拾われ抱かれてあること30分ほど、小さな村が見えてきた
「ほーら、見えてきたぞー。ここが俺が住んでいるミトウワ村だ。狭い村だけど、食べ物は美味しいし空気が綺麗なんだ。って赤ちゃんに言ってもわからねぇか。」
いやいやわかるぞ。正直とても田舎なのだがいい眺めだ。そうこうしているうちに俺たちは村の中心の一点から西南西に53mほど離れたところにドアがある家に中に入った。え、どうやってそんなに細かい情報が手に入ったのかって?普通に測っていただけだが。
「よお、帰ったぞ。」
男が言うと
「お帰りなさい。今日も疲れましたよね?もうすぐご飯ですよ。」
そう言いながら女性が出てきた。夫婦なのだろう。出てきた女性は俺のことを見ると
「テオドナさん!誰ですかその子?」
ふむ、この男はテオドナというのか。
「あぁ。この子はね、ファスゴー森林で捨てられているのを見つけたんだよ。あまりにもかわいそうだから保護しようと思って。
「あらあらそれはかわいそうに。うちで保護するのですね。わかりました。では早速村長の家にいって手続きをしなくてはですね。」
これから急にか?この二人怪しむということを一切しないな。まあ都合がいいから別に気にしないが。
そういうとテオドナが俺を抱いたまま今度は奥さんも連れて村の中心の一点その位置にドアがある大きな屋敷に行った。
「村長さーーん。」
そう言いながらテオドナが屋敷の中に入った。すると、
「おお、テオドナか。どうした?こんな時間に。」
村長というのはもう随分高齢のお爺さんだった。
「実はこの子をファスゴー森林で見つけましてね。できれば自分たちで育てていきたいんですけど。」
村長がこちらをみる。できれば穏便に済ませて欲しいのだが。
「ファスゴー森林か。それはそれは大変危ないところでしたな。いいでしょう。その子の入村を認めましょう。村のものには明日の集会で説明してもらいますからそのつもりで居ってください。」
前言撤回だ。少しは警戒ということをしないのか?テオドナとその奥さんといいこの村長といい。
しかし俺の気持ちなど知らんとばかりに
「よかったなぁ。これでお前は正式にうちの子だ。」
テオドナは能天気に笑っていた。
〜翌日〜
「今日の集会では報告があります。」
そう声をあげるのは村長である。村の総勢三百人ほどが耳を傾けている。
「この度この村の一員となるものがいます。それではどうぞ、テオドナ」
そうしてテオドナが壇に上がる。当然俺も抱き抱えられたまま。
「この子を見てください。この子は先日僕がファスゴー森林で見つけました。まだまだ幼いのに捨てられていたんです。かわいそうだということで僕の家の養子にしたいんですがいいでしょうか?」
相当簡潔だな。大丈夫なのか?
「質問がある。」
それ見たことか。反発の声が上がっているではないか。
「その子をあなたの養子にすることは賛成ですが、その子の名前はどうすのでしょうか?」
は?論点そこじゃないだろう。つくづくこの村は警戒する、怪しむということができないのか?そう思っているとさらに衝撃的な言葉が聞こえてきた。
「それはもう決まっています。ラーザですよ。いい名前でしょう。昨晩妻であるセリシアと考えていたら唐突に思いついたんですよ。」
何、、、だと。ラーザという名前は人間につけるべき名前ではないのではないか?2000年前より人間と敵対している魔族の一領主の名前だぞ。いいのか?というか奥さんセリシアというのか。いやそこじゃなくて
「ラーザ。いい名前だな。」「これは将来有望では」
といった言葉が聞こえてくる。つまり、考えられる可能性は2つ。人間領のお偉いさんが四大魔族のことに箝口令を敷いているか、そもそも人間に名前が残っていないか。しかし今考えても仕方のないことだ。とんだ偶然で前世の名前と同じ名前を授かったのだ。これは奇跡というべきだろう。
「では、新しい仲間であるラーザの入村を祝って!今夜は宴だーーー!!」
村長が年に似合わない大声をあげると村の住民が
「おおおーーーーーー!!」
とさらに大声をあげるのであった。
そうして俺の新たな命はこれまで経験したことない人間という形でスタートしたのである。俺は村人全員が宴をしている中、決意するのである。絶対に魔族領に帰ってみせる。そして絶対に今度は魔王に勝ってみせると。
「どうした?ラーザ。顔が少し勇ましくなったか?」
やべ。とりあえず可愛い声を出しておくか。
「あうーーー」
いやぁ。ミトウワ村の住民さん達すごく優しそうですねぇ。これからの生活を楽しんで欲しいものです。