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第百八十八話 最高戦力決戦 2nd

「【ハイドロ・スピア】」


リリアンの周囲の生成した槍が俺めがけて複雑な軌道を描き飛んでくる。俺は同じ数の炎を周りに出し、それらを打ち落とす。その間にアリオンがもう一度距離を詰める。


「せやっ!」


俺はすんでのところで避けるがアスカロンが俺の目の前を掠める。そう言えば2000年前にもこういった感じの状況になったことがある。このように神器持ちに囲まれるという状況が。


「その時は隙作って戦線離脱したんだよな。」


「ん、何の話だ?」


「いや、何でもない。」


あの時の俺と今の俺では、状況もさらには扱える力すらもまるっきり変わっている。


「足元、気を付けた方がいいぜ。」


俺は地面を指さす。俺とほぼ密着状態で剣を振るっていたアリオンの足元から炎が噴き出る。俺は後ろに大きく飛んで距離をとる。


「そう簡単にはいかないか。」


炎が引いた先には無傷のアリオンの姿があった。そして炎が一部、アリオンの周囲を螺旋状に回っている。これは俺の呪いではない。


「本当にさぁ、ちょっとは警戒しといてよ。」


あの少年がそう言った後俺のものだったはずの炎が俺に牙をむく。


「呪詛返しか…」


まだ扱いきれてないがこれは神級怨霊の力そのままなのだ。いくら本気ではなかったとしてもそれを返せるだけの実力があるのだろう。


「そうだけど…返せるのも今回だけかな。」


俺は俺の方に飛んできた炎を体で受け止めながら、かけられた呪詛返しを解析する。それをもとに呪いの改良し、今後奴の呪詛返しを食らわないように対策を講じる。


「じゃあ僕もこれを出すかな。」


そう言って呪術師の少年は、呪言を言って手を合わせると、森の奥から人型の人形が多数出て来た。すべてから呪力を感じる。


「なるほど…すべての人形にお前の体の一部を取り込ませてるんだな。その部位ごとに機能も違うと。」


「すごいね。見ただけで僕の特製人形の秘密に気づけるんだ。普通に操るだけじゃ弱すぎるからね。僕の体の一部が入ってれば強力になる。」


そう言うと人形のうち5体がこちらの方に駆け始める。驚くべき速さだ。俺は炎を出し、それらに向かって放射するが、それを意に介さぬ様相でつっこんでくる。しかも見事に俺の炎を突破してきている。見ると後方で手をかざしている人形が見える。


「ずいぶんと手の込んだ人形だな。」


「そりゃそうだよ。その子たちには僕の髪の毛をたくさん混ぜてるんだから。髪を持ってる個体はある程度の呪いを使えるんだよ。」


俺は五体に囲まれながら、格闘戦に持ち込まれる。その一体一体がその道の達人のような動きだ。


「まあただ、俺の足止めにはならないけどな。」


俺は全員の中心に立つような位置取りをして、地面に手を付ける。それを好機ととらえたのか、人形たちは俺の方へ襲い掛かってくる。


「たかが人形ごと気が俺に勝てると思うなよ。」


俺は手を起点として地面に炎を這わせる。そして人形たちの真下から噴出させる。


「ふう、まあこんなもんだろ。」


中心部分を正確に打ち抜いたのでまだ原型が残っているが動き出す気配はない。恐らく魔法や術式で作り出すゴーレムのような核があるのだろう。


「油断は大敵だぞ。」


俺の耳元から声が聞こえる。俺は咄嗟に体を回転させる。背後に現れたのはアリオンだ。恐らくリリアンの術式で気配を消していたのだ。そしてアスカロンは俺の右腕を斬り裂く。


「っと危ねえ………なんて言うと思ったか?」


俺は左手で指を鳴らす。するとアスカロンに斬られ未だアリオンの近くで宙を舞っていた俺の右腕が輝きだし、爆発する。俺はその爆風と追撃を避けるために一度足に呪力を込めて空に避難する。


「ようやく一撃らしい一撃が入ったかな。」


煙が引くと少し傷のついたアリオンの姿がある。傷といってもさしたる障害にはならないだろうが。


「【ストーム・コリドー】」


アリオンから俺へと延びる風の道が作られる。アリオンはその風に乗り俺のところまで急接近してくる。周りを見れば人形たちからもその道が伸びており同じようにこちらへ来ている。


「【ハイドロ・チェイン】」


俺の四肢に水の鎖が絡みつく。炎で燃やそうにも水はなかなか破れない。


「恨むなら己の無謀さを恨むことだな。」


アリオンはそう言って俺を腰から真っ二つする。そして残った上半身に人形が拳を入れてくる。その一撃の大量の呪力を込めていたのか、そのまま崩れ去っていく。


「流石にやりすぎましたかね。」


リリアンがそう言いながら俺の方へ歩いてくる。アリオンと呪術師の少年ももう終わったという顔をしている。


「何言ってんだ?」


俺は上半身があおむけで転がったままそう言う。このまま死んだふりをしておけば、もっと隙を晒してくれそうな気もしたが、正直面白すぎて抑えられなかった。俺は死んでいないのに死んだと思い込んでいるのだからな。


「わぁお、信じられない。まだ生きてるんだ。」


呪術師の少年は笑いながらそう対応するが、その他2人は本当に驚いたような顔をする。経験があるがゆえにこの状態で死んでいないことがおかしいのだろう。


「死んでおいてくださいよ。それがあなたがまだ人間であるかもしれない最後の砦であったのに。」


俺が下半身を再生しているとリリアンがそんな失礼なことを言った。

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