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第十四話 お礼の品

「なんと、お礼を申し上げればいいか。」


そう言って馬車の中で頭を下げているのは、商人の男だ。ちなみに盗賊たちはあのあとロープでぐるぐる巻にしといた。死んでる奴も何人かいた気がするが、まあ大丈夫だろう。


「いえいえ、僕はただ自分のためにやっただけなので。それに、パワータブレットを5つも使っちゃたし。」


先の戦いでなぜ俺があんなにも恐ろしい肉体だったかというとパワータブレット5つのおかげである。パワータブレットは一般的に力が強くなると思われがちだが、実際には違う。これは使用者の筋肉及び皮膚の耐久性を向上させれいるのである。これにより、肉体はより強い衝撃に耐えられるようになるし、耐久性が増したことにより、筋肉で100%の力を使い続けても全く疲れない。まあ一応筋肉の最大出力の向上もするが、これはおまけ程度の効果だ。


「いや、そんなことはない。実際君がいなくては、私達は殺されていただろう。」


そんなことを言ってくるものだから、困っていると、


「あなた、彼も困ってるじゃないの。その辺にしといたら。彼へのお礼は何か物質的なものにして。」


と、奥さんが提案してきた。この人は生粋の商売人だな… 。


「うむ、そうか。では今私たちが持っている魔法具の中から、一つ、お礼として受け取ってはもらえないだろうか?」


「え?」


魔法具を一つもらえるだって?それは願っても見ないことだがいいのだろうか?


「何、遠慮することはない。どれでも一つ選んでくれ。」


そういうと、彼らは荷物の中から次々と魔法具を取り出している。


「これはミスリルでできた剣だ。君のように素晴らしい戦士にぴったりだろう。筋力を少し強化する魔法が込められている。こっちは魅惑の鏡という魔法具だ。これは、一度鏡に写った自分を見てしまうと自分の姿に見惚れてしまうという中々の曲者だが、獣にも効くため結構使えると思う。それからこれは……」


どんどん出てくる魔法具に驚きを隠せない。と、説明を終わったのか、


「どうだね、どれがいい?」


と、聞いてきた。


「うーん。」


悩んでいると、俺はもう一つ魔法具が荷物の中に入っていることに気づいた。


「これはなんでしょうか?」


壺のようなそれを取り出しつつ説明をお願いすると、


「いやぁ、それがね、何かわかんないんだよ。魔法具だと言うことは知ってるんだけど、使い方とかがわかんなくて。」


俺はそんな説明を聞きながらこの壺の解析を行なっていた。そして解析終了後、


「わかりました。この壺にします。」


そう高々と宣言する。


「ええ、どうして?もっといいのがいっぱいあるのに。」


「そんなに高価なものをもらうのは気が引けるので。」


正直そんな理由じゃないのだが、誤魔化しておく。そんな会話をしていると、


「お客さん、ノルムントつきました。」


運転手さんが声をかけてくれる。


「すぐにミトウワ村へ出発するので気をつけてくださいね。」


まあこの場には俺1人しか残らないから、勧告は妥当だろう。


「ああ、そうか。ありがとう。これ、代金です。」


そう言って馬車から降りる2人。


「じゃあ、またいつか会いましょう!」


「さようならー。」


そう言いながら離れていく2人。俺も精一杯手を振るのであった。


馬車の中で1人になった俺は、先ほど手に入れた壺を見回す。禍々しい模様があるひと抱えの壺。しかも、相当頑丈そうだ。確かに一見何か術式が込められているようには見えない。というか術式ならこもっていない。そう、こもっているのは魔力を使用する魔法なのである。そして、この壺にこもっている魔法はこうである。


『周りにある魔力を吸い込み溜め込むことができる。溜め込んだ魔力は一度のみ魔法陣を当てることで使用可能。使用後、この壺は破壊される。』


そりゃあ、聖力を使う人間にとっては意味不明な壺だと言う事しかわからないだろう。とりあえず、魔力を限界まで貯めるか。そういうことで俺は魂から魔力を放出する。無作為な魔力の放出だけは魔力器官がなくてもできる。すると、放出した魔力が次々と壺に吸い込まれる。


「よしよし、いいぞ。」


正直上限はどれくらいかわからないが、貯めていく。すると、壺の側面が発光を始めた。これは満タンの合図だろう。魔力の放出をストップする。


「ふう。」


俺は一息つく。この続きは帰ってから、家でしよう。今日のところは休憩だ。そう思って俺は窓の外の景色を眺め始めた。



「お客さん、つきましたよ。ミトウワ村です。」


あれから2日後、馬車はミトウワ村に到着した。


「ありがとうございました。」


俺そう言って代金を手渡す。受け取ると馬車は走って行った。


「とりあえず家に帰るかぁ。」


俺は大きな壺を抱えたまま帰路につく。


「ただいまぁ。」


家のドアを開けてからそういうと、


「おかえり!ラーザ。怪我とか無い?」


セリシアが出迎えてくれた。


「うん、順調だったよ。」


「そう思ってたわよ。今日はシチューを作ってあるからたんまり食べてね。」


帰ったから早々シチューとは運がいい。


「父さんは?」


俺がそう言うと、


「おお!ラーザ帰ってきたのか!」


テオドナが出てきた。


「うん、ただいま父さん。」


俺は長い長い受験を終えて帰ってきたのである。そう言う実感が湧いてきた。


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