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第百七十七話 圧倒的強者

先週は投稿をすっかり忘れておりました。申し訳ございません。今週は先週分も合わせて2本投稿します。前話を見ていない方はご閲覧お願いします。

「いつの間にそんな呪いを使うようになったの?」


溺結さんが問う。確かにあの呪いは私が抱いていた炎恨とはかけ離れている。


「ふふ、僕の中に彼の魂に入ってからの記憶が流れ込んできてね。その中にあったんだ。彼は僕の力を使うことはしなかったけどずっと考えてたんだろうね。呪いはイメージの世界だ。炎を直線的に動かすのはイメージしやすいだろう。でも、不規則な動きを作るのは難しいんだ。でもこうやって形を与えてやるとその動きのイメージが簡単になる。こういう風にね。」


彼の周囲を待っていた蝶がこちら側に飛んでくる。速度も軌道もバラバラで読みづらい。


「その程度の呪い、意味ないんじゃないかな?」


オベイロンが指をパチンと鳴らすと、蝶たちは霧散して消えていく。


「ふふ、いいね。じゃあ、始めようか!」


炎恨は紫色の炎でできた片手剣を両手に作り出す。それを皮切りにウラノスさんやアンディさん達が距離を詰める。


「聖なる力よ、我に力を。生み出すは迅雷【プラズマ・ランス】」


アリアさんの魔法だ。普段であれば詠唱を省略しているが、今回は詠唱をきちんとこなす。こうすることで魔法としての完成度の上昇を図っているのだ。


「ფლეიმის აკინძვა」


溺結さんが呪いを使う。呪言は何を言っているのかわからないが、相当強力な呪力が炎恨に向かう。


「じゃあ、僕も行こうかな。」


オベイロンが指を鳴らすと、光の矢が生まれ、炎恨の方に飛んでいく。こんなにも強力な攻撃を一度に食らうのだ、無事で済まないだろう。


「ウラノスさん、避けて!」


私は現在正面から炎恨と斬りあっているウラノスさんに向かって叫ぶ。その言葉を背後から聞いた瞬間、ウラノスさんは確認するでもなく、大きく飛んで退避する。そしてまず溺結さんの呪いが炎恨に当たり、身動きを封じた。そして【プラズマ・ランス】と光の矢が直撃し煙が舞う。


「やったか?」


誰かが言う。いや、そんなこと言わないでほしい。それを言う時は大体…


「うん、流石は神霊だ。それにこの術式もなかなかいい火力をしている。相手が僕じゃなかったら死んでたね。」


血を垂らしながら炎恨が姿を現した。


「くっそ、化け物が!」


前衛に行っていた一人がすぐさま飛び掛かる。炎恨は下を向いて流れている血を眺めている。確かに今はチャンスかもしれない。


「おりゃあ!」


その刃が炎恨の首元に届くかという瞬間、彼は急に顔を上げてニヤリ、と笑う。


「避けろ!」


ウラノスさんが叫ぶ。しかしもう遅い。炎恨の全身から呪力が放出され、それが炎に変わる。その炎は斬りかかっている者の全身を包む。


「ぐああああ!」


その場で倒れこみ、悶え始める。炎は一向に収まる気配がない。


「聖なる力よ、我に力を。癒すは友。【セイクリッド・ヒール】」


治癒は私の仕事だ。私はきちんと詠唱をした全力の治癒魔法で彼を癒す。長い間かけ続けてようやく炎が引いた。しかし体にまだやけどの跡が残っている。


「ふうん、治癒か。めんどくさいな。そうだよ。わざわざ前衛の相手をしてやる義理はないよね。」


「…みんな、来るよ!」


ウラノスさんの剣を弾いて、一気に加速し始めた。途中他の人が立ちはだかるが、すべて炎で吹き飛ばして直線状に攻めてくる。


「【ガーディアン・シールド】」


私は結界を張って対処しようとする。


「こんな結界で、僕を止めれるとでも思ったのかな?」


炎恨が炎の弾を複数出し、私の結界を攻撃し始める。その攻撃の苛烈さに結界は持ちこたえられずにひびが入り始める。


妖精の壁(フェアリー・ヴェール)


オベイロンがそう言うと私の結界の表面を覆うように薄い膜が張る。その膜は確かに薄いが、私の結界の耐久を確かに上げてくれている。


「っち、やってくれるね。」


炎恨が飛びのくと、その空中で停止してしまう。


「そっちこそ、守りが疎かなんじゃない?」


溺結さんの呪いだ。炎恨は周りに漂う呪力を見てそれを除去しようと呪力を別のことに使い始めた。今がチャンスだろう。


「聖なる力よ、我に力を。生み出すは濁流。【ハイドロ・バレット】」


「聖なる力よ、我に力を。生み出すは輝き。【ラディアント・アロー】」


アリアさんと私の魔法を皮切りに次々と魔法が放たれる。溺結さんとオベイロンは相手の動きを封じるのに注力してくれているらしい。それくらいしないと抜け出してしまうのだろう。しかし煙が引いた後に見えたものに衝撃を受ける。


「嘘、でしょ…」


私は思わずつぶやいてしまう。間違いなく、これは私たちが出せる全力だ。


「ふう、本当に危ないなぁ。」


そこには炎の殻があった。その殻がなくなった中にいたのは今まさに腕を再生中の炎恨だった。あれをもってしても倒せないというのか。


「うん、君たちは頑張ったよ。僕にここまでの傷を負わせて。でもその程度じゃ僕に勝つなんて無理だね。何せ僕と君たちでは格が違うから。神級怨霊、しかも憎悪という直球な感情で生まれたのが僕だよ。戦闘において僕は他とは一線を画すんだ。」


炎恨から放出される呪力がさらに増した。その呪力は渦となって彼の体を包み込み、傷という傷を再生した。


「うん、ようやくこの魂での呪力操作に慣れてきた。じゃあ、もっと楽しもうじゃないか!」


「させんよ。」


唐突に声が聞こえてきた。その瞬間、どこからか人影が現れ先ほど再生したばかりの炎恨の胸に風属性魔法…【ストーム・ランス】だろうか…を至近距離で直撃させ、文字通り風穴を開ける。


「な…どこから!」


炎恨は距離を取ろうとするが、人影はそれに完全に追従し追い打ちをかける。体術という面でもすごい腕前だ。


「ほっほっほ、いやぁ。みな、良い"釣り"であったぞ。」


人影、ジェイク校長はそう言いながらも年に似合わぬ体術で炎恨に再生の隙を与えない。


「本当に今までどこにいたんだい?」


「儂は気配を消すのが得意でな。ずっと気配を消しとっただけじゃ。事前に詠唱を済ませた魔法を保ったままな。」


いや、簡単そうに言っているが、それは相当難しいことだ。なにせ詠唱を終わらせた魔法はすぐに飛んで行ってしまうからだ。それを【クリア】を維持した状態で保つなんている芸当は校長くらいしかできないだろう。


「それにしても体は同じでも中身が違えばやはり気づけぬか。以前ラーザは儂が隠れて言えることを即座に見抜いたぞ。」


「クソジジイ、不意打ち決めたくらいで…」

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