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第十三話 馬車の中で

俺以外にもこの馬車を利用するというものがいると聞いていたので俺が馬車の中を見渡すと、そこには行商人らしき男女がいた。夫婦でやっているのだろうか。


「こんにちは。」


挨拶をすると、


「あら、こんにちは。」


「ああ、どうも。」


と、2人も笑顔で返しれくれた。こういうふうに、笑顔で挨拶をされると言うのもまた魔族領では経験がなかったことだ。


「どこまで行くんですか?」


俺が尋ねてみる。


「今までは、王都で商売をしてたんだけど少し違うところでやってみたくて。だから今、ノルトムントまで移動中なんだ。」


ノルトムントというと、人間領の地方都市的な場所である。決して王都のような大都会ではないが、十分人口がいるらしい。


「あなたはどこまで行くの?」


女の方が聞いてくる。


「僕は用事があって王都まで来ていて、今はミトウワ村っていうところまで帰るところですね。」


嘘はないが、アレス・アカデミアのことは伏せておく。


「あなた、ミトウワ村って言ったらどこだったかしら。」


「あれだよ、王都からノルムントを経由して、さらに奥側。」


「ああ、あそこね。まだ行ったことないわよねぇ。」


ミトウワ村は田舎すぎてあまり認知されていないらしい。


「そういえば、お二人はどんなものを売っているんですか?」


気になったので聞いてみる。


「僕たちはいつも魔法具を取り扱っているんだ。と言っても強力なものは中々手に入らないから、普段はちょっと便利程度のものを売ってるんだけどね。」


なんと、魔法具を売っているのか。魔法具と言うのは平たく言えば、魔法もしくは術式が込められた道具のことである。効果は様々で、日常的に使うものや戦闘用など多岐にわたる。だが、魔法具を作ると言うことがとてつもなく難しく、市場では高価で売買されていると聞く。単なる道具だけではなく、飲んで使ったり噛むと効果を発動するものもある。忘れられがちだが、時計の正式名称は魔法時計であり、立派な魔法具である。


「どんな魔法具を売ってるんですか?」


「うーん、例えばこれなんかは結構見かけるんじゃないかな。パワータブレットというものだよ。」


そうして袋の中から取り出されたのはピンク色の錠剤である。これは食べたものの筋力を一定時間底上げすると言う魔法具で、作り方が比較的簡単なため、確かに割と見かける。それでも十分値を張るものだが。


「ああ、これですか。確かに時々見るかも。美味しいんですか?これ。」


食べたり飲んだりするものは多くが苦かったり酸っぱかったりする。これもそんな感じだろうか。


「ああ、これは特殊な製造方法で効果はそのまま、でも無味無臭になっているんだ。」


「へえ、それはすごいですね。他にはどんなのがあるんですか?」


「たとえばコレなんかは……」


俺達はその後も魔法具の話で盛り上がっていた。しかし、突然馬車が急停止したかと思うと、


「誰だっ君たちは!」


運転手さんの声がする。


「どうしたんですかね。」


俺はそう言うと外にでて、ぐるっと見渡す。そのタイミングで


「動くな!荷物を全部置いていったら命だけは見逃してやる。」


いかにも盗賊ですと言った感じの人達が馬車を囲っていて、リーダーらしき人が叫んでいる。


「王都にいる仲間の情報から、この馬車に魔法具が積んでることは知ってるんだ。それをよこせ!」


さらにリーダーらしき人が声をあげる。


「はあ、なんでこんなことになっちゃうかなぁ。」


俺は思わず声をあげる。


「そんなこと言ってる場合じゃないよ!早く逃げなきゃ!」


あの夫婦はさんなことを言っているが、


「大丈夫ですよ。あと、これ少しもらいますね。代金は後で返すので。」


俺が声をかける。そう言って俺は、ピンクの錠剤を5つ取り出し、口中に放り込む。確かに、無味無臭だ。


「何が大丈夫なんだ!これからどうすれば……。」


慌てふためいている夫婦を無視し俺は盗賊の方へと歩いていく。


「なんだぁテメェ?さっさと魔法具を持ってこい!」


「すみません。そこ、どいてもらえませんか?」


なるべく穏便に声をかける。


「何がすみませんだとぉガキが。そんなに死にたいなら、殺してやるよ!お前ら、やっちまいな!」


その掛け声のもと、部下たちが一斉にへ向かってくる。5人。みんなが鈍く光っている剣を持っている。いやそれにしても、血の気が多いなこいつら。絶対魔法具を出しても後で殺してたって。そんなことを考えていると、俺の1番近くにいたやつはすぐそこまで来ていた。


「ヒャッハーーー。」


そう言いながら剣を振り下ろすが、


「ガキン」


剣が俺の腕に当たったと同時に折れてしまった。


「なっ。」


盗賊は驚いた顔をしているがそんなことには目もくれず、


「ほいっ。」


そう言って俺は盗賊1人の腕を持って投げた。体重は60kgぐらいだろうか。ちなみにそいつは52mほど飛んだ後に、大樹にぶつかって気を失っている。いや、死んでるかも。


「な、何をしやがった!」


リーダーが叫んでいる。


「いや、何をしたって言われても。」


俺は1人にジャンプで一気に近づく。踏み込みも無い軽いものだが、それでも20m程は簡単に飛べるため、結構調整が難しい。


「ひっ。」


そいつは完全に恐怖で体が停止していた。そこに目掛けて、


「コツン」


と軽いデコピンをしてやると、脳震盪を起こして倒れてしまった。

あとは簡単だ。残りの奴らを一瞬でシバき回った後にリーダーの元へ行ってみる。


「ゆ、許してくれー。」


そいつは俺が何か言う前に土下座をしてきた。


「なんでもする、今後一切お前には関わらねえから。」


そう言ってくるので、


「まあ、それならいいよ。」


そう言って後ろを向くと、


「このクソガキがー!」


そう言いながら剣を振りかぶってくるリーダー。


「はあ、」


そんなバレバレの演技でよくいけると思ったよな。俺は振り向かずに肘を後ろに突き出す。


「ぐはっ。」


そう言ってリーダーはもう一度俺に土下座をした。今度は意識がないが。

昨日は諸事情あって投稿できませんした〜すみません!

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