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第百六十四話 エルフの村

翌日、俺たちはいまだに森の中にいた。すでに太陽は沈みかけている。これは今日も野宿かな、と思っていると、突然視界が開けた。


「つ、ついたぞー!」


俺たちより少し先を行っていたアンディの先日声が聞こえる。その声を聞いた俺とシャラル、溺結とアルケニーは顔を見合わせて少しうなづきあった後、先導者たちを追い抜いて先へと進む。


「わあ!家だ、家があるよ!」


シャラルがそう言ってはしゃぐ。木造で茅葺屋根の家がまばらに建っている。昔から人口は少なかったが、今もそれは変わっていないらしい。ところどころ煙が昇っているので、夕食の準備でもしているのだろう。


「ようこそお越しくださいました。アレス・アカデミアの皆さん。」


村からエルフが出てくる。金髪美形で耳が長い男、まさにこれぞエルフという姿をしている。


「予定よりもお早い到着、運よく森を抜けられたようですね。」


「ええ、今回は何とか抜けられましたよ。では、まずは宿に案内してもらえますか?今日はもう休みます。」


ルイスがそう受け答えする。その後俺たちは先ほどの男エルフに連れられ村のはずれの方にある一際大きな建物に案内される。


「ええと、ここに人数分の寝具などをご用意させていただいております。食事などはこちらにお持ちしますのでご心配なく。」


そう言いながらこちらの人数を数えていたエルフは首をかしげる。


「ふむ、予定していた人数よりも多いですね。これでは寝具と部屋がたりません。」


そう言えばそうだな。俺たちが飛び入りで参加しているのだから、人数が合わなくて当然だ。恐らく向こうの想定よりも3人分多いのだろう。アルケニーはすでに小さくなっている。


「予備で寝具2人分は即席でご用意できますが…部屋などは難しいですね。」


「いや、それで大丈夫です。」


俺は応える。俺が飛び入り参加しているのだから、これは俺が解決すべき問題だ。


「俺の分は必要ないからこの2人分の寝具を準備してやってくれ。」


溺結とシャラルを指さしながら言う。


「で、まあ部屋の方は適当な女子部屋にでも入れておけばいい。アテナの部屋とかいいか?」


「え…まあいいけど。」


俺は素早く話を進める。今ここで出しゃばるのはあまり得策ではないが、俺は一つ確かめるべきことがある。それを早急に済ませなければ今後の長期的な計画に支障が出る。


「と、言うことなので、それでお願いします。ラーザ君、食事はどうするんだい?」


「うーん、とりあえず今日はいいかな。じゃあ、シャラルと溺結をお願いします。」


俺はそう言ってその場の離脱を試みる。


「ちょ、ちょっと待ってよ!ラーザは今晩どうするの?」


当然この采配に文句を言う奴がいる。それはシャラルだ。この子からしたら文句しかないだろうが、一旦いうことを聞いてもらうしかない。


「シャラル、いい子にしてるんだぞ。溺結もシャラルがピンチなら守ってくれよ。」


「うん、わかってる。ラーザも安全に気を付けて。」


俺は更に文句を言われないようにするために指輪の力をフルで使いながら走り去る。


【どこに行くのだ?】


「エルフの村の中心部だ。依然来た時とあまり地形が変わってないように見えるからな。多分エルフ王様の家がそこにある。まあ王国っていうにはちょっと規模が小さいかもだけど。」


道を通っていると、道行くエルフから訝しむような眼で視られる。まあこんなところに人間がいるなんておかしいからな。しかし俺に話しかける暇もない位に俺は急いでいた。なるべくこの用事は早く済ませた方がいい。


「あった。」


王様の家は俺の記憶と違わぬ位置にあった。2000年前に一度訪れたきりだったが、俺の記憶が正確で助かったぜ。王といってもそんなに偉い存在ではない。ただ、村の政治の最終決定者というだけだ。といっても自分の独裁をすることができるわけではない。公正公平な話し合いの場が設けられるらしい。


【で、ラーザはここに何をしに来たのだ?】


「まあ見てればわかるって。」


俺はそう言って村で唯一高床式になっている家の中に無断で入る。人口が少ないこの村では犯罪というのはほとんど起こらない。だからこのようにすんなりと入ることができる。


「すみませーん、誰かいませんか?」


俺は少し大きな声で呼びかける。そこそこ広いこの家中に響かせるには調度良い。


「何用だ?姫様は今休まれておられる。大声を出すな。」


奥の部屋から男のエルフが出てくる。一応外部から人が来るということで衛兵的なのがつけられているのだろう。しかしエルフの男というのは誰でもイケメンだな。


「いえいえ、そこを何とか。その姫様に合わせていただきませんかね?」


俺は手を擦りながら男に近づく。


「無理だ。公式な面会以外は姫様に合うことは禁じられている。そう言われなかったか?」


こいつ、結構ガードが堅いぞ。ふむ、このままじゃジリ貧だな。


「じゃあ俺がこのまま強引に押し入ろうって言ったら?」


「その時は命に代えてでも姫様を守る。」


いや、そうも簡単に言われるとちょっと打つ手なしなんだが。すると、奥の方で足音が聞こえてくる。


「なあに?ちょっとうるさくて眠れないんだけど。」


奥から金髪で碧眼をもっているエルフが顔を出した。眠たそうに眼をこすっている。


「ひ、姫様!申し訳ございません。すぐこの侵入者を追い出しますので…」


「うん…侵入者?まさか人間?へえ、結構肝が据わってるじゃない。どれどれ…」


姫、と呼ばれた女性は目を擦るのをやめてこちらを見る。そしてその瞬間顔が青く染まる。


「ギャー!幽霊よ!助けてー!」


そのまま奥の部屋に引っ込んでいってしまった。

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