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第百五十七話 旅の前支度

「ラーザよ、エルフ、という種族を知っているか?」


「エルフですか…これまた珍しい種族の話をしますね。」


エルフと言えば人間や魔族に比べて寿命が相当長い種族だ。しかしそのほとんどがとある森に引きこもって外部と隔絶された生活をしているため、謎多き種族でもある。一説によれば不思議な力があるとかないとか。


「ふむ、知っているなら話が早い。実は人間領政府に忍ばせている密偵からこのような知らせがあってな。」


冒険者協会と王族周辺の関係はとても悪いものだからな。密偵の一人や二人位いても疑問はない。もちろんその逆も然りだ。


「貴族とエルフが機密的に連絡をしている可能性が高い、とな。具体的な内容はつかめないが、こちらにも王族どもの怪し動きが多く報告されている。」


「内容はわかりました。それでその話がどのようにシャラルにつながるんですか?」


「ここからは不確定な情報も含まれる。鵜呑みにせず聞くと良い。忍ばせている密偵がこのような会話を聞いたらしい。


『ラーザとかいう奴に、あのガキとられてなきゃこっちもこんなに苦労しなくて済んだのかもな。』


『まあ仕方ないだろ。そもそもあのガキがエルフに関係しているかも怪しいんだから。』


と、いう具合に。」


あのガキ、というのは確定でシャラルのことだろう。つまりシャラルはエルフに何かしらの接点がある可能性がある人間ということか。


「そしてこのことを俺に話したということは…」


「察しが良いの。ラーザ、シャラル、溺結、そして骨喰、冒険者協会会長として、依頼を発行する。エルフ領へ行き、王族よりも前にエルフの秘密を明かせ。」


簡単に言ってくれるぜ。エルフの森を抜けるのがどれだけ難しいのか分かってるのか。しかし俺たちには拒否権はない。


「わかりましたよ。」


俺たちは建物を後にした。





「あっ!ラーザ、お帰り。」


家に帰るとシャラルが夕飯の準備を終えたところだった。そのまま椅子に座り食べ始める。


「シャラル、明日から遠出をするから準備をしてくれ。」


「遠出?どこに?」


「エルフ領だ。まあエルフなんていう種族の名前すら聞いたこともないだろうが、さっきドレークから依頼を仕ってな。」


それから俺はエルフの簡単な説明と、話の経緯を説明した。シャラルとエルフに関係がある可能性については伏せておいたが。


「わかった。で、肝心のエルフ領への入り方はどうするの?森を抜ける以前に大きな結界で守られているんでしょ?」


「それについては案があるから安心してくれ。明日は朝早くに出るから、準備してくれよ。」


俺はそういって席を立つ。俺も食料などの準備をせねばな。


「ちょっと待って。」 【待て。】


溺結と骨喰が同時に声を出す。


「どうしたんだ?」


「そこに行くなら、多分あれも持って言った方がいい。


【俺様と一緒に封印されていたであろうあれだ。】


俺は一瞬何のことかがわからなかったが、恐らくあのゴーレムから出てきた、何かが封印されている黒い手のひらサイズの箱だ。


「でもあれは俺やお前たちでも開封不能な封印がされていて、役に立たないだろ?」


「いや、恐らくそのエルフ領にもっていけば封印を解くことができるはず。」


【その通りだ。これまでの話を聞いた限りだと、あの封印を解くことができる者が件の場所にいる。】


まあそこまで言うのなら持っていくか。できる限り身軽な荷物で行きたいところだが、そうは言ってられないな。


「えっと…確かこの辺に…あった。」


その封印の箱は物置の底の方に眠っていた。といってもほとんどがあのゴーレムからとれたミスリルだ。暇なときにシャラルの聖力を借りて精錬してコツコツとここまで輸送してきている。ここまで高純度のミスリルを大量に保管しているのだ。魔法具氏師からしたら喉から手が出るほど欲しいだろう。


「うーん、本当に訳が分からん。」


俺は黒い箱を眺める。何か特別な力が働いているのだろう。魔力も聖力も呪力も感じないのに箱はびくともしないし、破壊も出来ない。


「これ、なんでかわかるか?」


俺は後ろに控えている二人に聞いてみる。


「まあ、わからないこともないけど…」


【今の俺様たちでどうこう出来る代物ではない。】


はあ、いつもと同じ答えだ。こいつらは何かを知っているようだが、これに関しては本当に何も教えてくれない。まあ俺もこれが喫緊の問題になったことはないので、放置しているのだが。


「エルフ領にこれの秘密を教えてくれるものがいるのか…楽しみだな。」


しかし問題もある。それはエルフが長命だということだ。通常であれば100年も生きればいい方だが、エルフはその比ではない。実際生きている奴はいつから生きているのかが不明な奴が多い。もしかすれば俺のことを知っているエルフがまだ生きているという可能性も無きにしも非ずだ。最低限人間領に比べて四大魔族の記録は多く残っているだろう。


「まあそんなことを考えても仕方がないか。」


俺はその後も準備を進め、気が付けば朝になっていた。





「よーし、じゃあ、しゅっぱーつ!」


「シャー!」


全員でアルケニーの背中に乗り、エルフ領へと向かう。人間領とエルフ領は隣接しているので、まずはその手前まで行く。結界をどうにかして、その先がとても濃い霧、通称迷い霧(ストレイ・ミスト)に包まれたエルフの森だ。

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