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第百五十一話 百鬼夜行‐其の漆

俺の目の前に結界が生じる。その結界は紫の炎を防ぐと同時に割れてしまう。


「この聖力は…アテナか!」


俺が下を見ると炎恨により崩壊した建物の一部屋、内部が見えている部分に俺の元級友たちの姿が見える。そしてその中央に立ち、手を掲げているアテナの姿も。


「人の子か、余計なことを。君たちもじきに殺してあげるから今は黙っていてくれ。」


炎恨はそういい放つと炎を起こし、校舎を取り囲む。これでは救援は期待できそうにない。


「まあいい。もう既に君に抵抗の余力は残っていない。今から楽にしてあげますよ。あのような不測の事態があっても僕の勝ちは揺らがない!」


炎恨から呪力が発せられる。今当たれば即死級の一撃を放つつもりだろう。


「そうだな、あれだけだと弱いかもな。だが、この一瞬で状況は変わったぜ。」


辺りに炎恨のものではない巨大な呪力が漂い始める。この呪力は覚えがある。


「何を言って…待て、もしやこの呪力は。来たというのか?」


炎恨から発せられる呪力が少なくなる。そして呪力の主は姿を現した。


「そのまさかですよ。あなたを助けに参りました。」


姿を現したのはハクだ。出会った時よりも巨大になり、上級怨霊らしくなてっいる。


「ハクか。それにその姿はすでに覚悟しているようですね。」


怨霊に関してはほとんど無知であると同じ俺であってもわかる。ハクは今無理をしている。具体的に言えば恐らく今後の力を前借して今、ここにいるのだろう。先ほどの弱体化した呪体を諸刃の剣の如く一度の戦闘のために鍛えてきた。その後に待っているのが何であるかも承知の上で。


「ありがとな、じゃあ勝つぞ!」


「はい、もともと私と炎恨は相性的には私の方に分がある。」


ハクは炎恨を一睨みする。呪力が放出され、炎恨の周囲に水が巻き始める。


「これは…拘束の呪詛。まるで溺結だな。」


「時間は稼ぎます。何か手があるのでしょう?」


いくら相性が有利だとしても相手は神級怨霊だ。そう長くは稼げないだろう。


「そうだよな…ハクが命賭けてくれてるんだ。俺がここで命賭けれなくてどうする。やるぞ!」


俺は一人で気合をためる。これを使った場合、この先がどうなるかなんて知ったこっちゃない。ただ、今を生きるための策だ。


「聖なる力よ、我に力を。滅ぼすは我が身。【ディザスター・ソウル】!」


俺は崩壊属性の術式を発動する。


「な、なんだ?何をしたんだ。」


炎恨は俺に狙いを定め、炎の弾を飛ばす。


「【ガーディアン・シールド】」


俺は無造作な結界を張る。その結界は炎の弾を受け止めると割れて消滅する。


「何をして…そもそも何故まだそれほどの力が残っている。」


「【ハイドロ・キャノン】」


濁流の一撃が炎恨に放たれる。生半可な火力では燃やしきれないほどの大きさだ。


「დამწვრობა」


炎恨は呪言を言い、水を蒸発させる。そしてそのタイミングで同時にハクの拘束が外れる。


「あまり調子に乗らない方がいい。დაწვა ეს ყველაფერი!」


「させません!დამცავი წყალი」


炎恨の呪詛に対してハクも呪いを使うが、上級怨霊と神級怨霊では力量に差がある。あれでは押し負けるだろう。


「【ケルビン・ジャベリン】」


俺は氷結の飛槍を一気に7本作り出し、放つ。それは呪いの鍔迫り合いをしていた炎恨に突き刺さる。


「これは…こんなものが効くと思いですか?」


炎恨に刺さった飛槍はすぐに溶け始める。全て溶けた後の炎恨には何も痕は残っていなかった。


「【グラビティ・リザーブ】」


俺は重力を操り空を飛ぶ。そして炎恨の上に行くと、


「【グラビティ・エクスト】」


「くっ、なんだこれは」


術式で俺より下の重力を強化する。宙に浮いていた炎恨とハクは突然の重力強化で地面に叩きつけられる。


「【グラビティ・リセット】」


俺はハクにかかる重力のみ元に戻す。


「ラーザさん、流石です。」


ハクはそういうとジャンプし、炎恨にダイブする。


「დაიხრჩო」


「くはっ、苦しい。」


炎恨は明らかに苦しみ始める。よし、これならいける!俺はとどめの一撃を練り始める。


「聖なる力よ、我に力を。生み出すは紫電。【プラズマ・パイル】」


俺は詠唱をして、威力を最大限まで高めた術式を炎恨に向かって放つ。そしてその瞬間にハクはその場を離脱する。


「これで終わりだ、炎恨。」


紫電の杭は炎恨におろされる。そして、辺りに電撃の光が…と思っていた。


「まだここでは死ねないんだよ!」


炎恨の叫びが聞こえた。そしてその瞬間周囲を紫の炎が包み込む。


「ラーザさん、危ない。!」


ハクが俺を炎から守るようにして盾になる。俺は結界を張ろうとするが、結界になる前に聖力が燃やされてしまう。


「はあ、はあ。僕をここまで本気にさせるなんて驚きだよ。」


炎が止んだ先にいたのは、人の形をした何かだ。恐らく炎恨の真の姿なのだろう。狐の面影が残っており、体には面妖な模様がある。そして近くには燃え尽き、今にも消えようとするハクの姿があった。


「ハク、もう無理か?」


「ええ、ここまでのようです。溺結様を頼みます。」


そう言い残してハクはこの世から永久にいなくなる。もともと力はあまり残っていなかったのだろう。


「はあ、ようやく邪魔な夜刀神が死にましたか。まあいい。どちらにせよ君にも死んでもらう。」


炎恨は先ほどまでとは比べ物にならないほどの呪力を発する。これが神級怨霊の力。俺は死を確信する。今度こそ死ぬのだ。すでに結界を張る余力は残っていない。


「では、いい戦いでした。現の者よ。ქაღალდის ცეცხლი」


巨大な呪力が俺の魂を捉えた。

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