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第百五十話 百鬼夜行‐其の陸

「たかが人間風情が…僕に勝てるとでも?」


炎恨はほくそ笑みながら言う。


「【プラズマ・ジャベリン】」


俺は空中で紫電の飛槍を3本生成し、放つ。


「そんなものに何の意味があるんだい。」


炎恨は自らの前に炎の壁を作り出しそれを防ぐ。猛烈な爆発が起こり、吹き飛ばされそうになるが、なんとか耐える。


「【ケルビン・ブレード】」


氷晶の刃が俺の手の中に生成され、俺はそれで炎恨に斬りかかる。しかしそれが当たる前に炎恨は更に上へと飛翔する。


「はぁ、期待外れだ。全く。」


炎恨の左右から炎が生まれ、まるで【ファイヤ・ボール】のように飛んでくる。


「ぐああああっ」


俺はその炎に焼かれ地面に落ちる。【ファイヤ・ボール】のような見た目だったが、威力は上位術式と比べ遜色ない、それどころか強かった気もする。事実、俺も咄嗟に結界を張っていなければ死んでいた。


「【ヒール】」


俺は治癒をしながら炎恨を見る。やはり強い。この過去最大級の相手を骨喰なしで相手取るというのは不可能に近いことかもしれない。しかし、今ここであきらめるわけにはいかない。


「行くぞ!」


俺は氷の刃を握り直し、もう一度炎恨の方へとジャンプする。


「【ストーム・コリドー】」


コリドー系の術式は人が一人が通れるくらいの通路を生成するというものだ。俺は出来上がった強風の道を一気に通り抜ける。


「っち、猪口才な。」


炎恨はもう一度炎の弾を打ち出すが、俺の風に阻まれ、拡散する。


「【ハイドロ・エンハンス】」


俺は炎恨を斬る直前に水属性を付与する。


「せやっ!」


俺が炎恨を斬ると水が飛び、それを伝って氷が炎恨を包み込んだ。


「【ヘル・フィスト】」


凍り、動けなくなった炎恨を蒼炎の拳で殴る。炎恨は地面に強く叩きつけられ、砂埃が大量に舞うが、呪力反応はまだピンピンしている。本当に化け物だな。


「っ!【ガーディアン・シールド】」


砂埃の中から巨大な呪力が飛んでくるため、咄嗟に上位結界を張る。


「何っ!?」


その呪力は結界を通り抜け俺の魂を燃やし始める。なるほど。炎を飛ばしたのでなく、呪詛を直接飛ばしたのか。呪詛自体を結界で完全に防ぐことは難しい。一部は結界に阻まれているが、それでも俺には確実にダメージが入る。


「はぁ、思ったよりやるなぁ。でも、これで終わりかな?」


「ぐあっ」


魂を燃やしていた炎は身体を蝕み始める。


「まだまだ…だな。」


俺は声を上げる。喉が焼け、本当に痛いが振り絞る。


「は?なんだって?」


「まだ、俺は死んじゃいなぜ?」


俺は【エンハンス】を使う。そして足に聖力を集め、一気に駆け出す。しかし、駆け出すのは炎恨と反対側、アレス・アカデミアの方角だ。


「逃がさないよ。」


炎恨が炎の弾を飛ばしてくるが、すべてギリギリのところでよける。そして俺は半径50mはあろうかという湖に出る。そのままダイブし、対岸を目指す。


「それは無駄だよ。僕の炎はそんなんじゃ消えない。」


だろうな。だがそれが目的ではない。俺は後ろからさらなる呪詛を確認する。


「【セイクリッド・ヒール】」


俺は上位治癒をかけ、無理やり耐える。しかしこれも時間の問題だ。


「見えた!【グラビティ・リザーブ】」


俺は重力術式で湖の水を浮かす。


「【ケルビン・ショット】」


水に氷術式を打ち込めば、浮きあがった水は氷るという寸法だ。俺は炎恨の視界から逃れることに成功した。そして岸に上がり、岸の近くにある円盤型の魔法具に乗る。


「【ショット】転移、トリー。」


そう、こんな場所に自然の湖があるのはおかしい。ここはアレス・アカデミアの敷地であり、この湖は人工のものだ。そしてこの学園は全てのエリアに専用の転移魔法具が設けられている。ずいぶんと前にここを利用していた記憶がよみがえる。


「はあ、なんとか一息付けるな。」


恐らく炎恨は俺を追いかけてくるだろうが、あそこからこの校舎までは少しだけだが距離がある。その間に少しでも体力を残しておきたい。


「だいぶ聖力も使っちゃったな。」


残量はおよそ上位術式3回分ほど。本当に絶望的だ。


「…この薬草は…」


今、俺が在籍していた学年は教室で授業中か。俺がいなくなった後どういう風に変わってきたかはわからないが、気配を見る限り元気そうだ。


「アテナはしっかりやってるかな。」


上級貴族の令嬢であった彼女は平民だった俺にも優しく接してくれた。そのことが原因で立場は悪くなっていないだろうか。


「…来たな。」


俺は足元を見る。その瞬間に足元が爆発し、炎恨が飛び出してくる。


「散々僕を引っ搔き回して。もう追いかけっこも終わりだ。」


炎恨の炎で俺は天井を突き破り空高く舞い上がる。炎恨はそれを追うようにして天井を吹き飛ばし、こちらへ向かってくる。


「【プラズマ・プリズン】」


俺は紫電の檻で炎恨を閉じ込めようとするが、軽々壊される。流石は神級怨霊だ。


「დამწვრობა」


炎恨が呪言を唱える。本当に俺を殺すつもりなのだろう。炎恨の周囲に紫色の炎が4つ浮かぶ。


「【ガーディアン・シールド‐アンチカース】」


これは俺のとっておきだ。属性に特化した結界を応用して呪詛に特化した結界を張る。未だ完成には程遠いが、普通の結界よりも耐久力は大幅に上昇しているはずだ。


「頼む、耐えてくれよ。」


しかし俺の願い虚しく、3発目で耐えきれず割れてしまう。4発目が俺に着弾し、俺の身はすぐにでも燃え尽きてしまうだろう。実際炎恨も勝ちを確信している。俺すらもほぼ諦めていたその時、あの声は響いた。


「【ガーディアン・シールド】!!」

節目の150話ですね。これからも週一投稿続けていくので気に入ってくださったら今後ともよろしくお願いします。あと、暇つぶしの短編小説も一本書きました。この小説が完結した先で何か繋がるかもしれません。そちらの方も目を通していただけると幸いです。

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