第十話 説明してみる
「なぜ私たちがいるのかと言う質問ですね。」
俺に質問に対して答えてくれそうなのは、魔術師の方である。
「それはですね、私たちが気になったからですよ。あなたがいかなる方法であのゴーレムを少ない聖力で崩壊させたのかと言うのが。そのことを試験官の方に相談させてもらいと、本人がいいと言ったら許可すると言うことでした。」
「そうか、別にいいんだが、それは隣の剣士さんも同じなのか?」
俺がそう問うと、
「うむ。」
と言う言葉と頷きをくれた。
「そうかそうか。とりあえず自己紹介と行こうか。もう知ってる人も多いかもしれないけど、俺の名前はラーザという。姓はない。」
「アテナ・メーティスです。よろしくお願いします。」
「その父のヘリウス・メーティスだ。」
「アリア・マーリンと申します。以後お見知り置きを。」
魔術師はアリアという名前らしい。そう頭にメモを取ると、
「ウラノス・アイネアスだ。よろしく。」
相当簡潔に済ませたのは剣士の少年である。
「では早速自己紹介も済んだことだし、君か昨日見せた魔法の種明かしを、と行きたいところだが…」
ふむ、何やら不穏な空気が流れている。
「その前に、なぜ君はこんなに遅刻をしてしまったのかと言うことをきちんと説明していただこう。こう言うのは普通15分前には行動しておくものなんのだ。」
やはりそうきたか。
「ええと、話せば長くなるんですが……」
「はっはっは!なんだ、つまり君は仮眠を取るつもりがぐっすり寝てしまって寝坊をした挙句、昨日渡した地図まで忘れたせいで遅刻してしまったと言うことか。なんとも愉快な話だ。」
ヘリウスはそうやって笑っている。他のみんなも笑いを堪えるのが必死と言う表情だ。まあウラノスはやはり無表情なままだが。
「ちょっと、ラーザ君本当におっちょこちょいすぎるよ。」
「この人が昨日の人と同一人物だったなんて、思えませんね。」
アテナとアリアも好き勝手言ってくれる。しかし、
「まあこの話は後にして、本題に移ろう。君は昨日、いかなる方法でゴーレムを倒したんだい?」
驚くべき切り替えの速さだ。それに釣られて他にみんなも真剣な顔になる。
「まず約束して欲しいのが、俺が説明中の間は一切口を挟まないでいただきたいと言うことです。口を挟まれると話がややこしくなるので。」
「わかった。そうする。他のみんなもいいな?」
全員が頷いたところで説明を始める。
「まず基本的なことなんですが、あのゴーレムは魔法によって動いています。このことは知っていますよね?」
皆が何をそんな基本的なことを、と言う顔をしている。
「では、話は変わって。魔法についてです。魔法を使用した場合、聖力は詠唱により魔法を行使するための形を常に保ち続けているんです。しかし、ある一定の条件下ではこの聖力が変容してしまい魔法を維持できなくなる時があるんです。」
ここで皆の顔を見ていると、魔法に詳しいのであろうアリアとヘリウスはわかったような顔をしているが、アテナは頭に?が浮かんでいる。ウラノスは知らん。
「その状況というのが周りから強い聖力の干渉があった時です。とてつもなく強い聖力の干渉が周りからあった場合、魔法が乱れて聖力が魔法を行使するための形を維持できなくなるんです。ただ、により影響をうけるのは、見習い魔術師のような人のみで、少し魔法に慣れてくれば少し大きい干渉ぐらいでは影響を受けません。」
この説明で頷くのはやはりアリアとヘリウスだ。アテナはいまだに?だし、ウラノスはガチでわからん。
「しかし、とてつもなく巨大な干渉以外でも魔法が崩れる場合があるんです。」
これはアリアもヘリウスも知らなかったのか、驚いた顔をしている。
「どのような場合か、それは魔法の弱い部分を正確に射抜いた干渉です。具体的に言うと、込められた魔法には必ず、核となる部分が聖力により構成されています。その核がどのような聖力を流しこめば壊れるかを見抜き、聖力を干渉させ、壊して仕舞えばいいんです。これは小さな聖力でも、大きな魔法を崩すことができます。あとは簡単です。俺はあの時、ずっとゴーレムの一部を握りしめていましたよね?その時に込められた魔法を分析して、先程説明したことをやればいいんですよ。これで説明は終わりですが、何か質問はありますか?」
皆驚愕した顔をしている。
「ええとだな、つまり君はあの短時間でゴーレムに込められた魔法を解析して、その核を壊す勢力を流し込んだと言うことか?正直あの魔法はそう簡単に解析できるようなものじゃない筈だが。」
ヘリウスが聞いてくる。
「ええ、そうですけど。」
しかしありえない、と言う顔だな。とりあえず、用意していた決め台詞を言ってみるか。
「まあ、ここには自信がありますからね。」
俺は自分の頭を指差して言うのであった。
今日はこの辺で〜。また次も楽しみにしておいてくだい!
これから面白くなりますから。(予定)