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第百三十九話 呪層への訪れ

「じゃあ、留守番よろしくな。」


翌朝、まだ早い時間に俺たちは郊外の草原に来ていた。


「うん、元気に帰ってきてね。」


「シャー!」


こいつらは万が一のことを考えてここに残しておく。俺がもし帰ってこなかったらアルケニーには魔族領まで走ってもらうことになる。魔族領には魔獣の言葉を理解できるものが数名いるからな。


【ふん、この俺様がいるのだぞ。五体満足に決まっているだろう。】


その自信が命取りなのだが、こいつは神器だ。謎の説得力がある。


「じゃあ、呪層までの道を開けよう。骨喰、できるよね?」


溺結が言う。


【ふん、任せておけ。】


いや、実際に振るのは俺なんだが。


「はあっ!」


俺が空中に向かって骨喰を振ると、刀身が通ったところに紫色の亀裂が生じる。



【ふむ、久々に空間を割ったな。やはり呪力消費が激しい。】


しかしこれで呪層に繋がったわけだ。


「急ごう、いつ閉じるかわかんないから。」


「そうだな。じゃあ、これが閉じるまで見といてくれないか?だれか来たら危ないから。」


俺はシャラルとアルケニーにいう。両者とも首を縦に振る。


「よし、行こう!」


そういって俺は空間の亀裂に足を踏み入れた。




「ここが呪層か…」


俺は周囲を見渡す。もっと呪力に満ちているものかと思っていたが、全然感じられない。空は灰色で塗られている。そしてその灰色の空の下にある地面は完全にやせ細っているかの如く植物など生えていない。


「それにこれ…浮島か?」


少し進んでいくと地面の終着点だった。しかも海があるわけではなく、地面全体が空に浮かんでいるようだ。


「うん、これが呪層。現とは全然違うでしょ?」


まあ空に浮く島など聞いたことがない。と、思ったが四大魔族である魔導が人工的に魔法で浮かせた島ならあるな。


近くにも島がいくつか見える。さて、どこから行けばいいのやら。


【それにしてもずいぶん辺鄙な場所に出たな。もっと怨霊がわらわら出てくるものだと思ったが。】


骨喰が言う。たしかに、この狭い島には俺たち以外誰もいないようだ。


「うん、ここは呪力が薄いみたい。もっと大都市に近いところは呪力がたくさんあるんだけど、現と繋がってるからね。」


「じゃあ狙いの神級怨霊も大都市にいるのか?」


そうだとしたら結構めんどくさいな。現には大都市がいくつもある。俺たちの根城である自由都市ルフト、王都アトリテア、それに四大魔族が治めるそれぞれの領土の首都。それぞれが結構離れているので移動がめんどい。


「そうだけど…さっそくは行かないよ。まず行くべき場所がある。」


【ほう、どこに行くのだ?】


「まあいいからついてきて。」


まあ今の呪層は骨喰は知らないだろうしな。どうしても溺結頼りになってしまう。


「【エンハンス】」


近くの島伝いに行くつもりらしいので、身体を強化しておく。


「こっち。」


6,7個の島を渡ったところで大きな島に着いた。呪力が比較的多く感じれる。それにどこか既視感のある呪力も。


【この呪力は…溺結、貴様のものだな。どういうことだ?】


はあ、だから見覚えがあったのか。しかし溺結の呪力があるとはどういうことだ?それに…


「周りの怨霊が静かだと思ったでしょ?」


そうなのだ。ちらほら色んな姿をした怨霊がいるが、全員物陰に隠れて出てこのようとしない。


「ほら、ここが目的地。」


小高い丘の前でストップする。丘の上にはボロボロの家らしきものが一軒建っている。壁には穴がいてるし、天井は半分吹き飛んでいるが家だろう。


「これは私たちがルカの家をまねて建てたんだ。もうこんなになってるけど、建ってるってことはまだいるよ。この家の主。」


そういって丘を上っていく溺結。俺も続いて登っていく。


「なあ、さっき私たちって言ってたけど、お前の仲間のことか?いったい誰なんだ?」


「うん、悪い奴じゃないし、大丈夫。」


それだけ言って家の入口止まる溺結。俺も一時停止する。


「一応言っておくと、多分だけどすっごく弱ってるから下手に攻撃したら死んじゃうから。よろしく。じゃあ、入って。私はサプライズとしてもうちょっと遅れて入るから。」


そういわれたので家に入る。


「お邪魔しまーす。」


家の中はいたってシンプルだ。内装と呼べるものはほとんどない。まあ怨霊しか使わないのであれば必要ないのだろう。そしてその奥のほうに2,3mほどの白蛇が一匹眠っていた。


「あ、あのー。」


恐らくこの白蛇がこの家の主なのだろう。そしてその目がうっすらと開かれ、


【ラーザ、斬れ!】


骨喰が叫ぶ。その直後、俺の方向に飛んでくる呪いが確認された。


「怨霊斬」


俺は骨喰の能力で呪いを切る。俺は後ろに一歩引き白蛇を観察するが、こちらを赤色の瞳でじっと見つめてくるだけで何もしてこない。


「いきなり手厚いもてなしですね。何か気に障ることでもしたかな。」


「その雰囲気、現の者ですか。それにその刀は…どのようにそれを見つけてきたのかは知りませんが、早急に現に戻ることをお勧めします。今は状況が悪いので。その刀の能力を使えば早いでしょう。」


少し声の低い女性のような声でしゃべる。前に鬼人領で会ったあの犬っころよりも流暢だ。


「そんなこと言われもこっちも目的をもってここに来てるわけだしなぁ。」


「そうですか…では実力行使ですね。」


そういって白蛇はもう一度こちらを睨む。先ほどよりも強い呪力が感じられる。と、その瞬間、


「ちょっと待ったー!」


溺結が入ってきた。

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