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第百三十八話 出発の準備

その後の訓練は順調に進んだ。ビスケス以外の人にも協力してもらい様々な形態の呪いを学んだ。一応書籍などで少しは知識があったが、ここまで深く学ぶ機会がなかったので新鮮だった。


「今日はありがとうな。」


日が沈みかけ、空が赤くなったころに俺たちは街に戻った。


「はい。こちらも練習になりました。」


呪術師を代表してビスケスがお礼を言ってくれる。


「そうだと嬉しいんだけどな。」


「それでは、我々は一度冒険者協会に戻りますが…」


俺とシャラルは顔を見合わせる。シャラルは既にすごく眠たそうだ。


「じゃあ俺たちはこれで。帰るぞ、シャラル。」


「うん…今日はありがとうございました。」


俺たちは帰路につく。日は沈み、濃度の高い闇が辺りを覆っている。


「今日のご飯は何?」


シャラルが問うてくる。


「あー!家の食糧、昨日全部使いきったんだった。ごめん、市場によって帰ろうぜ。」


「もう、こういうところは抜けてるんだから。」


まあ魔帝時代は飯なんて魔法で生成してたし。ちなみにきちんとうまい飯を造るのはめっちゃムズイ。俺も満足のいくものができるようになるまで100年ほどかかった。






「ごちそうさまでした。やっぱりラーザのご飯はおいしいね。」


食器を持っていきながらシャラルが言う。こっちとしては塩気が強すぎる気がしたが、シャラルが喜んでくれるなら別にいいか。


「すぐに寝るか?こっちはまだすることがあるから、明かりがついたままだけど。」


シャラルは目をこすりながら答える。


「もう眠たいから寝るよ。おやすみ。」


そういって奥の部屋に消えていく。俺はその姿を見届けた後、机に向き直る。


【何をするのだ?】


「まあ見てればわかるぜ。」


俺は魂から魔力を目に送り込む。視界に魔法陣が浮かんでくる。


「今日の記憶を読み込んで…」


【これは…魔眼か。】


「魔眼?何それ。」


溺結がこちらを覗き込みながら問うてくる。俺は今作業に集中したいので説明したくない。


【魔眼というのは魂に刻む魔法のことだ。見かけだけは呪いに似ている。しかし安定したものを刻むのは実力と運、時間が必要になる。しかし刻み込めれば強力なものだぞ。実際過去の魔眼持ちは人々に英雄と称されるか、化け物と恐れられるかのどちらかだった。】


「ふーん、そんなに強いんだ。ラーザの魂、元から魔力量が多すぎるせいで魔法が埋もれてて気づかなかった。」


【しかし…これはいったい何をしているのだ。魔眼の修正か?そんなことが一朝一夕できるとは俺様は思わないが。】


「これで終わり!」


俺は声を上げる。今日の訓練の記憶がすべて読み込み終わった。


「で、ラーザは何をしてたの?」


「ああ、これな。お前らが話してた魔眼に学習させてたの。呪力についての。」


両者顔がポカーンとしている。いや、片方は顔はわからないが、多分そんな心境だろう。


【魔法に学習をさせるとはどういうことだ。】


「そのまんまの意味だよ。俺の魔眼…名称は(みかど)の魔眼っていうんだけど、これは学習をするように魔法陣が組まれてて、記憶を分析して魔法とか術式とかの予測を正確に行うってやつだな。過去の傾向とかを参照して。」


これが数年前、鬼人領でクラリスの動きをすべて『知って』いた理由だ。俺の魔眼がクラリスの動き、魔法の経路をほぼ完璧に予測し、俺の意識に上らせたのだ。隠蔽魔法ですらそれ自体に使われている魔力を感じ取ることでそれ自体を余裕で看破できる。


【いやまて。これまで様々な文明を見てきたが、学習する魔法など聞いたことがない。そもそもそれが魔方陣的にできたとして魂に刻み込むとなるとどのような代償を払ったというのだ。】


「そりゃあ失敗はたくさんしたぜ。でもまあ俺には【転生】があったから失敗しそうになったらその衝撃を体に逃がして転生してやり直しだ。たしか54回目で成功した気がするな。」


あの時はつらかった。しかし今になればその経験のおかげで大抵の痛みには耐えられるようになっている。実際ひどいときは頭が爆散した。あれに比べればまだまだである。


「まあそんなことはどうでもいいんだけど…じゃあラーザはもう呪いに対しても完璧なの?」


「そんな虫のいい話があると思うか?残念ながらデータ不足だ。実際魔法の分析自体、俺の2000年分の記憶があって初めて完璧な予測な成り立つんだ。でも、呪力がどこにどれくらいあって、それがどれくらいの威力の呪いになるかっていうのは大体がわかるくらいにはデータが集まったぞ。」


まあただ実際怨霊が使うものは人間のそれとはかけ離れているだろうし、有用なのは呪力があるかどうかと、その量くらいだろう。まあないよりましだ。


「明日にはもう出発するんだし。今日はゆっくり休むわ。」


そういって俺はシャラルが入っていった部屋に入る。ベッドの上に座り横を見てみると程よい大きさのアルケニーをシャラルが抱く形で寝ている。本当に仲がいいんだな。


「じゃあ、おやすみ。」


俺はそうつぶやいてベッドにもぐりこんだ。

本当に長らくお待たせしました!(待ってくださった方がいるかは不明ですが)新しい生活も安定してきましたので、投稿を再開したいと思います。決して失踪とかはしないので今後ともよろしくお願いします。

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