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第百三十一話 伝説の呪刀

その後地上に戻った俺に待っていたのは、すでに準備されていた大宴会だった。ミトウワ村でも思ったが、大人たちは酒が好きすぎないか。俺はともかく、目を離したすきにシャラルにまで飲ませようとするのはいけない。どれも俺が未遂に終わらせたが。


「もうそろそろ帰るぞ、シャラル。」


まだ冒険者の大人たちと話し込んでいるシャラルを呼ぶ。こちらを向くと明らかにいやそうな顔をする。


「え~まだいたい!」


さっきもう子供じゃないとか言っていたやつとは思えないな。まあいい。一人でしたいこともあったし、先に帰るか。


「じゃ先に帰るから、ちゃんと帰って来いよ。酒は飲まないように。」


「はーい。」


まあ飲ませようとした奴は俺が鉄拳制裁を下しているため、誰も飲ませようとは思わないだろう。


「アルケニーはシャラルと一緒にいてやってくれ。」


「シャー!」


元気に飛び出していく。


「じゃあ行くか。」


俺は懐かしくも感じる帰路についた。





「それにしてもあれすごかったね。」


ログハウスに入った後溺結が話を始める。


「ああ、そうだな。結構実用段階まで達してたしな。」


俺たちが話しているのは、あのゴーレムに致命傷を与えたあの術式だ。


「崩壊属性…よくこんなの見つけたね。」


そう、崩壊属性。これが俺は王都にいたころからずっと研究していたものだ。といっても存在自体はすでに魔族領では600年ほど前に確認されていたし、特に魔王はほかの属性に引けを取らないくらいに成熟していた。


「最初は創造属性があるなら何かを壊すものもあるはずだっていう思考から始まったんだ。」


創造と崩壊は表裏一体だ。そこからまあ色々あって俺、魔王、魔導の3人で属性の理論体系を作り上げた。残念ながら実際に発動できたのは俺と魔王のみで、魔導は魂が作り出す魔力的に効率が非常に悪く発動さえできなかった。


「それを術式に直しただけだ。ただめっちゃ複雑だから時間はかかったがな。」


「でも、それでもきちんと発動できたじゃん。つまりラーザは最強ってこと?」


「そううまい話じゃないんだよな。まず第一に過去の俺でさえ魔力を大量に消費した。現実的に実用可能なのは魔王くらいだ。」


魔王の魂は逆に崩壊に対して適正がありすぎる感はあるがな。


「それにあれくらいの質量のゴーレムだったから完全崩壊しなかったが、普通の人に撃ったら跡形もなく消え失せる。加減は難しすぎてできないし。」


「そう、じゃあまだ温存なんだ。」


「ああそうだな。さてと、この話はこれまでにしよう。次はこれだ。」


俺はあの刀を取り出した。ちなみに刀とあの箱は持って帰ってきたが大量のミスリルは放置だ。一応盗難防止で術式で印だけは刻んだが。


「いったいこれは何なんだ?何を恐れる?」


これに対する溺結の態度は明らかにおかしいものだった。まるで何かを恐れているかのように。


「ラーザ、まずはこれを見てほしい。」


すると刀から禍々しいオーラが立ち込める。これは…呪いか。


「これは今私は見えているものを簡単に表したもの。まずこれだけで相当な呪いってわかる。」


「ああそうだな。でも触っても何もなかったぞ。何か別の発動条件があるのか?」


どこを触っても何もなかった。まだ抜いてはいないが。


「うん、これがいつ頃施された呪いかはわからないけど、これは抗呪の呪いだよ。簡単に言うと呪詛返し。」


は?この強さの呪いが呪詛返しだと。いったいどんな強力な呪い用のものだよ。


「そしてこれが施されてるのは…」


俺は溺結の言わんとすることをようやく理解する。


「鞘か。つまりこの鞘が返しているのはこの中身、刀の呪いだと。」


溺結は静かにうなずく。


「そして多分これは呪層に遠い昔から伝わっている伝説の刀。」


「伝説の刀?なんだそれ。」


「あると言い伝えられてきた刀。消息は不明だけど。」


伝承上の武器ってことか。ということはまるで”あれ”じゃないか。


「名前は怨霊斬(おんりょうざん)骨喰(ほねばみ)。呪いを切ることができる呪刀。」


呪いを切るから怨霊斬か。しかしまあそれだけなら俺には無害そうだが。


「そして伝承によるとこの刀の呪力の源は使用者。使用者は強靭な意思がないとこの刀に飲み込まれる…らしい。」


刀に飲み込まれるね。ますます”あれ”に似てきたな。無意識のうちに汗が出てくる。


「これをどうするかの判断はラーザに任せる。私は抜かないほうがいいと思うけど。」


「やてみなきゃわからいだろ。それにまあ、意志の強さには自信がるんだ。」


はぁと溺結とため息をつく音がした。


「まあこうなることはわかってたけど。本当に気を付けてね。」


「ああ。」


俺は鞘を持つ。本当にシンプルなデザインだが、柄は素晴らしい意匠が施されている。そして柄に触れる。その瞬間だった。


『俺様に…触れたな』


脳内に声が消えてくる。周りを見れども誰もいない。魂に住まう溺結にも聞こえたのか緊張が走っている。


『どうした?抜かないのか。抜けないのか?抜く勇気もなくして俺様に触れたのか。』


こいつ結構煽ってくるタイプだ。ムカつくが、抜くしかない。


「おらぁ!」


俺の掛け声が部屋に響くが、それ以外の音は一切しない。それに何も起きない。拍子抜けだ。


「おい溺結、これはいっ…」


俺は声を出せなくなる。何が起こったのかわからない。ただ出せなくなるのだ。なぜかすらも考えられない。ただ何も考えられなくなって…

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