第百二十八話 巨大…ゴーレム?
「どうなってるんだ。」
俺は呆然とする。完全に閉じ切った扉を眺める。
「おい!ラーザ、無事か?」
デラニーの声が聞こえてくる。
「無事ですが…この扉、そちらから開けれませんか?」
現在俺が開けようとしているのだが、開く気配がない。
「…そうだな。こちらからもびくともしない。」
一応互いに押しあっている可能性を考慮したが、もう一度しても結果は同じだった。
「わかった。このまま偵察を続けてくれ。危なくなったら教えろよ。」
「はい、ピンチになったら空間魔法で逃げるので。」
「頼んだ。」
ひとまずハプニングがあったが、このまま続けていいらしい。ということで俺は慎重に暗闇を進んでいく。
「なんだか不気味だね。」
溺結が呟く。確かにそうだ。何も起こらな過ぎてすでに誰かに討伐され後かと思ってしまう。
「ん、なんかある。」
奥のほうに大きな塊が見える。何かしらの金属のようだ。
「ということは…金属ゴーレムか?」
さらに近づいてみる。すると突然
ギギギギ
ゴーレムらしきものが起動した。目に当たる機関だろうか、赤黒い点が輝いている。
ガガガ
起き上がるとそれはぎりぎり人型を保っているいるように見えた。特別な反応は感じられないが、構成している金属がよくわからない。ミスリルが70%ほどあるのは確認できるがそれ以外の物質はいろいろありすぎて判別不可能だ。
「それにしても珍しいな。」
普通このような場所に人工物が多いゴーレムはいないのだが。まあゴーレムが生まれないこともないので考えても仕方がない。と、考えを巡らせている時だった。
「אסאדו דוו」
ゴーレムから明らかに駆動音ではない何かが聞こえた。そしてその後一瞬の出来事だ。赤い結界のようなものが壁に張り巡らされた。
「っ【ジャンプ】!」
俺は何かあればまずいので、速攻で離脱する。俺の視界が水色に染まり…
「なに!?」
そのまま転移のタイミングで術式が何かに妨害された。俺の術式を妨害してくるやつなんてこの人間領にいるのか。自分のミスではなく明らかな妨害だった。
「ラーザ、前!」
溺結の警告で我に帰ると、目の前にゴーレムの右拳が飛んできていた。
「【プロテクト・シールド】」
俺は中位の結界術式を張る。ゴーレムは耐久は高いが、攻撃力の低いケースが多い。今回も単なるパンチくらいであればこれ位で十分のはずだ。
「דה סר」
またもや先ほどの音だ。今度は何かと警戒していると、
「は!?」
突然拳が炎で赤く染まった。聖力も魔力もひいては呪力すら感じなかったぞ。
バリバリバリ
俺の結界が悲鳴を上げる。俺は持たないと判断し、後ろに飛びのく。
ドガァァン
おいおい、威力おかしいだろ。いやそれ以上に今のはなんだ。そもそもあの赤い結界はいったい何なんだ。
「どうした、大丈夫か?」
とてつもなく大きい音に反応したのか、デラニーが問うてくる。これは正直に答えといたほうがいいな。
「正体不明のゴーレムと接敵中。構成物質の7割はミスリルですが、その他は不明。壁に沿うように赤い結界が張られおり、空間魔法が阻害されいます。」
俺は簡潔に話す。
「ああ、赤い結界はこちら側にも出ている。そしてこれ、空間魔法というよりすべての魔法を阻害しているらしい。この結界に触れた魔法が妨害される。」
それはまずいな。いざとなれば爆裂術式で壊す予定だったが、それも妨害されるのだろう。
「こちら側から解除を模索してみる。何とか生き残ってくれ。」
「はい!」
とりあえずこういうのは様子見が肝心だ。いったん大きく距離をとる。
「דאזוגירו」
距離をとって様子見を様子見をしていると、今度はあのデカブツ一気に加速してきやがた。
「うわっ。」
何とか反応してよけるが、マジで怖いな。
「ラーザ、あいつ…」
「見たことあるのか?」
溺結が何か言いたそうにしている。見たことあるのであれば、値千金の情報があるかもしれない。
「いや、そうじゃないんだけど…あとで話す。」
いやなんだよ、期待させやがって。
「もう仕方がない。アルケニー出てきていいぞ。」
「シャー!」
待ってましたと言わんばかりに元の大きさに戻るアルケニー、うん、でかいな。
「【プラズマ・アロー】」
紫電の矢があのゴーレムを襲う。結構聖力もつぎ込んだし、傷ぐらいはつくだろう。
「רוץ רוץ」
なんか鼻で笑われた気がしたぞ。でもよける気はなさそうなので、それでいい。
「シャアーー!」
アルケニーもそれに合わせて糸で攻撃してくれる。
バチィィ
命中したが…ダメージが入った形跡はない。硬すぎるだろ。
「קֶרֶן」
あいつは突然手をついたかと思うと、光っていた赤い目がさらに光りだす。
「ちょ、アルケニー、全力で回避!」
「シャー!」
なんと放たれたのはビームだ。しかし今回はこれまでとは違うところがある。それはこの攻撃が魔力に似た何かを利用しているということだ。だから俺は何が来るかを大体予想出来て回避できた。
「はぁ~、マジで何なんだあいつ。」
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