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第百二十六話 偵察役ゲット

「はぁぁ!」


エルヴィスは大剣を大きく振りかぶりながらこちらに急接近してくる。気迫だけはいいものだが隙だらけだ。俺は引き付けてから一気に背後をとる。


「【ストーム・ヴィロウ】」


「なにっ!?」


エルヴィスが風属性術式を発動した。下から大きな風が吹く。


「ぐっ」


俺は攻撃態勢をとっていたため強く踏ん張れない。そのまま飛ばされる。


「なかなかやるな。」


空中から見る景色は結構きれいだった。下を見て目測すれば落下まで残り13秒といったところだ。絶え間ない【ヘル・エンチャント】により俺の聖力はほとんどなくなっている。【ジャンプ】で戻るというのも不可能だ。


「なんだ、あれ?」


エルヴィスは剣を背中に当てている。あれはいったい…


「斬!」


唐突にそのような声といっしょに剣を大きく振った。


「…!」


バチィィ


俺はとっさにブレードを構えると巨大な衝撃が加わる。今のはおそらくあの剣の力だ。単純な威力増大系と思っていたが、何か仕掛けがあるのか。


「ぐ、きりがないな。」


エルヴィスはその後も剣撃を飛ばしてくる。俺も何とか対応するが、何しろ空中だ。身動きがとりづらく、何発は俺の体に当たる。急所は避けているが、もらいたくなかったダメージだ。


「しゃーない。一気に行くか。」


俺は術式の行使の準備をする。


バチィィ


「【シールド】」


俺は空中に結界を作り出す。聖力を極限まで抑えてあるのでめちゃくちゃ脆いが、これでいい。


「はぁ!」


俺はその結果を空中で蹴ることで大きな推進力を得る。


「なっ!?」


エルヴィスもまさか予想だにしていなかっただろう。しかし戦闘というのは経験がものをいう。


「私の負けです。」


俺がエルヴィスの首にブレードを向けるとそうつぶやいた。一瞬の空白の後、


「勝者、ラーザ!」


デラニーの声が場を動かした。


「やはり、強いですね。」


エルヴィスが言う。


「いや、君も強いよ。事実空中に飛ばされた時にはどうしようかと。」


「はい、いわゆる初見殺し的なものでした。ラーザさんはこの剣の力を知っていたのですか?」


「いや、最初は単純な威力増大系の能力だと思いましたよ。」


恐らくこの剣の能力は剣を振った斬撃が遠くまで届くというものだ。遠くまで届かせる過程で威力が上がるものだが、聖力を多く消費すれば近距離でも高威力になるのだろう。そのためごく至近距離での発動というようなものにすれば強い威力増大系と同じように使えるということだろう。


「はい、その通りです。私のトリックまで見破られました。」


俺が説明すると認めた。しかし俺でも初見で見破れなかったこのトリックは至難の業だ。エルヴィスはそういう面でも強い。


「ラーザ!」


後ろから抱き着かれた。


「ん?どうした。」


「どうしたもこうしたもないでしょ。こんなに傷だらけになって。心配したんだよ?」


シャラルがそう言って最近覚えたばかりの治癒術式を使ってくれる。うん、良い調子だ。


「ありがとな。」


そういって俺は向こうにいる冒険者たちを見る。とても気まずそうだ。まあさっきまであんなに馬鹿にしてたのだ。仕方がない。


「まあみんな、そういうわけだから、今回の偵察はラーザに任せてもいいな?」


異論は出ない。まあ出ても切り伏せるだけだが。


「よかったね。」


溺結が言う。白い髪が少し伸びたように感じるのは俺だけだろうか。それとも本当に伸びていてこいつも成長しているとか?しかし今そんなことは聞けない。まあ後で聞こう。


「じゃあ、近くの野営地までのゲートをつなぐからついてきてくれ。」


デラニーが魔法具を起動する。このダンジョンは深すぎて普通に行き来がめんどくさいため、ゲート装置という魔法具を使う。この魔法具は対となるマーカーが置かれた地点とを結ぶゲートを発生させる。通常ダンジョンの中にマーカーを置いてもダンジョンに流れる魔力の影響ですぐに使い物にならなくなるが、これは超精巧な術式が施されており、このダンジョンのみ使えるらしい。その代わり別のダンジョンでは使えないとか。


「あれ、直接大部屋までつなぐんじゃないんだ。」


シャラルが呟く。


「そりゃあそうだろ。大部屋の前に置いたって近くを通る魔獣に壊されたらおしまいだ。だからあらかじめ術式で結界とかを張って作った大規模な野営地に飛ぶんだ。これなら安全だろ。」


野営地は大体二人組が交代制で守っていることが多い。危なくなればゲート装置で逃げればいい。


「よし、じゃあ皆行くぞ!」


「おおー!」


そうこうしているうちにゲートが開いたらしい。青色の渦が見える。そしてどんどん仲間たちが飛び込んでいく。


「シャラル、怖がらなくていい。」


「うん、わかってるけど。」


まあ確かに最初に通るのは怖いよな。俺は仕方なくシャラルの手をそっとつかむ。最初の一歩は彼女の意思が大切だ。


「じゃあ、行くよ。」


俺たちは最後に飛び込んだ。

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