表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/199

第百二十五話 実力を見せる

「どうした?」


デラニーが問う。出てきたのはいかにも戦士ですといった風貌の大男だ。背中には斧を背負っている。


「デラニーさん、いくらエルヴィスのお墨付きだからと言ってこんな新参者を重要な偵察役につかせるのはどうなんだ。まだ実力もはっきりしていない。」


大男はそういって俺に難癖をつけてくる。まあ確かに俺の信頼はないだろうな。風のうわさでガキ二人が新人にしては目覚ましい活躍をしているとは聞いているだろうが。


「それはそうだが、エルヴィスがこうも実力を認めるやつもそうそういないのも確かだ。」


それから集まりの間でひそひそ話が聞こえてくる。俺に任せてもいいのかどうかという議論で、大体五分五分くらいだろうか。


「そもそも大事な攻略戦で足手まといを背負って戦いたくありませんよ。こいつらを連れて行くのもどうかと思いますけどね。特にそっちのほう。」


また一人声を上げる。片手剣と盾を持っている男だ。剣を向けてある先にいるのはシャラルである。


「やっぱり迷惑なのかな…。」


ここにいるほとんどがシャラルは足手まといだと判断しているらしい。もっともだという目でこちらを見つめる。


「はぁ。めんどくさいな。」


どうせ今後のためにこのような戦闘は避けられない。なるべく早く集団戦を経験してもらいたいのだが。


「シャラルさんをこの場から除いた場合、ラーザさんも抜けますよね。」


エルヴィスが問うてくる。俺はその表情から俺たちに助け舟を出してくれたことを悟る。


「ええ、そのつもりですが。」


「ふん、こんなガキ一人減ったところで何も変わりはしない。とっとと帰りな。」


「いくら王立学園に所属してたからって大人に勝てるともうなよ。」


ちなみにこいつらは俺たちの事情を結構知っている。そしてそれを踏まえたうえであくまでも俺はいらないという判断か。


「冒険者は実力がすべて、ですよね。」


俺はデラニーに質問する。


「ああ、世間的にはそういわれているな。」


「でしたら今ここで実力を証明すればよいですか。」


つまるところ誰かと決闘をして実力を見てもらおうという判断だ。


「……わかった。だれか、名乗り出る人はいるか。」


周りも察してくれたらしくまたひそひそ話が始まった。しかし一向に名乗り出ない。


「私が行きましょう。」


声を出したのはエルヴィスだ。


「な!?」


周りから驚嘆の声が出てくる。


「エルヴィス、本当にいいんだな。」


デラニー確認する。これで負けたら新米に負けたという恥をかいてしまうことは必至だろう。


「ええ、もとより勝てるとは思っていません。」


おいおい、ずいぶんと持ち上げてくれるじゃないか。これ逆に負けたらガチで俺が恥ずかしいやつだな。


「わかった。みんな中央付近を開けてくれ。近づくなよ。」


冒険者たちは中央から離れていくのでその中心部に歩みを進める。


「正式な決闘ではないのでルールは細かくは決めませんが、寸止めということで。」


「わかった。」


俺たちは距離をとる。辺りは静寂に包まれ、緊張感が高まる。


「それでは…始め!」


デラニーの音頭で俺たちは一斉に動き出す。


「「【エンハンス】」」


両者同じ術式を行使する。向こうが持っているのは大きな両手剣だ。前回の手刀に引っ張られるが元はこのような戦闘スタイルなのだろう。


「【プラズマ・ブレード】」


俺は紫電の刃を作り出す。


バチィ


相手の両手剣と俺の刃が交錯する。まあ当然のように聖剣だ。最高威力のブレード系の術式に対しても遜色ない威力を持っている。


「っち」


俺は一旦距離をとる。大丈夫だブレードは一旦出してしまえば破壊されるまで残り続ける。


「あの剣…めんどくさい能力を持っているな。」


込められている術式はおそらく単純な威力増大。しかもとてつもなく上げ幅が大きい。それとエルヴィス本来の身体能力でめちゃくちゃ強くなっている。


「しゃーない、これ維持が大変なんだけどな。」


俺はさらに工夫を凝らす必要が出てきたので、術式の準備に取り掛かる。


「させませんよ。」


さすがにそんな隙もない。しかし近接戦闘の荒波の中で複雑な術式を行使できないというのは俺には当てはまらない。なぜなら俺には【思考分割】があるからだ。


「【ヘル・エンチャント】」


紫電の刃の淵にうっすらと蒼い光が見えるようになる。


「!!」


エルヴィスは距離をとるが、それは逃がさない。


「おりゃあ!」


今度は逆に俺が距離を詰める番だ。


バチィ


先ほどよりも大きな音が鳴る。これは俺の攻撃に炎属性が加わったことを意味している。炎と雷はお互いの威力を高めあうという特性があることは認知されていて、手っ取り早く火力を出したければ炎と雷を使っておけというのはこのためだ。しかし、【ヘル・エンチャント】の聖力の消費量は通常の比ではない。俺が随時術式に供給しておかなければすぐに【ヘル・エンチャント】が終わってしまう。


「くっ」


エルヴィスはだいぶ辛そうだ。先ほどのでほとんど五分だったのでこちらの火力が上がればこちらが優位になる。


「まだ終わりません!」


エルヴィスの気配が強くなる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ