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第百二十三話 苦難の予感

しかしここからが長かった。そりゃあそうだ。戦闘経験なんて皆無なシャラルに突然こんなことを要求しても出来るわけがなかったのだ。合計であと7匹外に出ているが10分経過時点で残り5体も残っている。まあ確かにこいつらすばしっこさだけはあるし難しいか。


「はあ!」


シャラルはこの気持ちの悪い見た目に慣れてきたのか動きはよくなった。しかしこのまま時間をかけすぎてはこの後に残っているコボルドの掃討にかける時間が無くなる。


「おっけー。じゃあ残りは俺がやるわ。」


ずっと俺を追い続けているイノスビーどもも疲れただろう。


「【フリーズ・アロー】」


俺は氷属性中位術式を行使する。氷の矢はイノスビーにまっすぐ飛んでいき7匹全員に命中、その後イノスビーは地面に落ちる。


「すごい…」


「いや、これくらいだったらシャラルでも出来るようになるよ。」


俺はイノスビーの針を回収しながら言う。


「じゃあ後は中にいるやつらだな。【エクスプロード・ショット】」


俺は巣ごと破壊する。イノスビーの巣はめちゃくちゃ固いのでこれくらいならうまく爆風で針を壊さずにイノスビーだけ死ぬだろ。しらんけど。


「うわぁ。容赦ないね。」


俺は残骸の中にあるイノスビーの死体から針を抜きとる。


「よし、これで依頼完了だ。シャラル、よく頑張ったな。」


「うん…でもすごく時間がかかっちゃった。」


それはそうだ。いくら初心者といえどもここまでのものとは想像もしていない。飛び切りで才能がないのは確かだ。これは今後が大変だな。


「まあいつか伸びるでしょ。」


溺結が呟く。それだと嬉しいんだがな。


「じゃ、コボルドの群れのところに行きますか。」


俺は貰った地図を頼りに森を突き進んでいく。




 道中マンドレイクを踏み抜きそうになったり危険度4相当の魔獣が現れたりとハプニングはあったが、全部シャラルに気づかれる前に処理をした。ちなみにい危険度4の魔獣は今頃毒が全身に回って死んでいるだろう。


「ここだな。」


俺たちは少し開けた場所に出る。目の前にあるのはとてつもなく簡単な住居らしきものだ。うん、これがコボルトの住処だろう。周りには13体のコボルトが見える。


「あれを全部片づけるの?」


シャラルが心配そうにこちらに聞く。コボルト自体は危険度3とそこまでの強敵ではないが、確かにあの量は物怖じをしてしまうだろう。


「シャラル、一つ聞くのだが、人型魔獣を相手にするのは大丈夫か?」


コボルトは一応亜人形魔獣だ。姿形は人間に結構似てる。それゆえに人間を殺すのと同じように考えてしまう人が多く、最初のうちは苦労するのだ。これが一生克服できずに冒険者をあきらめる人もいるくらいだ。


「やっぱり少し怖い…」


そりゃあそうだ。まず戦闘で勝てるかどうかも怪しいのだ。


「わかった。アルケニー、シャラルをここで守っていてくれないか。」


「シャー!」


頼もしい声が聞こえてくる。俺はその場を後にしてコボルトに近づく。


「カルッガー」


向こうもこちらに気づいて棍棒を持っている。戦闘態勢だ。


「カル?カガー!」


俺の長年の経験に基づけば『誰だ?殺すぞ!』的な感じだろう。ただ魔族領にいるやつとは若干違うな。これが訛りという奴だろうか。


「まあ、すまんな。【プラズマ・スリット】」


紫電の糸がコボルトを襲う。数瞬後には全員が倒れてしまっている。まあこんなものだよな。


「よし、依頼完了。戻ろうぜ。」


「す、すごい!私もできるようになるかな。」


「ああ、よく訓練したらできるようになるさ。」


まあ術式の訓練は結構きついから頑張ってもらうしかないが、それはこれからに期待だ。




「依頼完了ですね。冒険者協会に記録します。」


俺たちは依頼を完了したことを告げる。適量の金と冒険者ポイント80をもらう。


「あれ?私は150もらったんだけど…。」


「初心者の方には多く冒険者経験値が入る仕様となっております。いずれもらいにくくなるのでご注意ください。」


手練れの冒険者が簡単な依頼で荒稼ぎをすることを防ぐのが目的らしい。実際あれくらいの依頼では2ポイントくらいしかもらえないという人も多いしな。


「そうなんだ。ありがとうございます。」


俺たちは協会の掲示板に行く。今日はもうそろそろ暗くなるので依頼は受けないが、明日の依頼の目星を付ける。


「ん?なんだこれ。」


依頼の掲示板の横にある情報の掲示板にある一枚のポスターが俺を引き付ける。


『人間領の王族からの重大発表が今夜行われる予定です。』


重大発表ね。なんとなく見当はついているが俺とはあまり関係はない。


「どうしたの?」


「いや。この発表の様子、ここで見ようぜ。気になるし。」


「うん、いいよ。いったい何だろうね。」


「そうだな。」


俺たちはその後、いくつか目星をつけた後外に出る。


「よし、じゃあ飯でも食うか。」




その夜、冒険者協会事務所は王族からの発表を見るために多くの人間が集まっていた。映像機という魔法具を使っているので、王都の様子もわかる。ちなみにこれめちゃくちゃな高級品だ。


「今日発表するのは、人間に備わっている新たな力…呪力です。」


おおむね俺の予想通りの内容であった。

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