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第百十八話 自由都市ルフト

「ようやくついたな。」


俺は呟く。塔の上にある魔法時計を見ると、夜7時頃だ。俺たちはようやく自由都市ルフトに到着したのだ。


「うわぁ、いっぱい人がいるね!」


その殆どが冒険の帰りだろう。各々が武器を持って歩いている。上機嫌なものもいれば辛そうな顔をして帰ってくるものもいる。ちなみにこれから出かけるといった者たちの姿も見受けられるな。


「シャラル、大きい声を出すな。目立つといけない。」


「う、うん。わかった。」


しかしもう遅いらしい。周りから目線が数多く向けられている。そりゃあこんなところに子供二人でいるのはおかしいだろうな。


「まあ行くぞ。ここに冒険者協会の本部があるはずだ。」


俺たちは街の中心部に向かって歩みを進める。それにしても本当に賑やかだな。勝手に男ばかりが冒険に出ているのかと思っていたが、女の冒険者も結構いる。うん、これならシャラルもやっていけるだろう。


「ここか。」


街の中心付近にそびえ立つ巨大な施設。でかでかと『冒険者協会本部』と書かれている。


「入るぞ。」


「う、うん。」


緊張した雰囲気のシャラル。そういえば言ってなかったな。


「これから冒険者になるための手続きをするけど、基本的に俺が喋るから何も余計なことを言うなよ。あと、俺の後ろにピッタリとついてくるように。」


それだけ言って、返事を待たず入る。1口で止まっていても悪目立ちするだけだ。


カランカラン


「ギャハハハ!」


「お前やっぱすげぇわ!」


ドアを開けるとすぐに男たちが飲んでいる声が聞こえてくる。うん、これは前訪れたところも同じだな。


「すみません。」


俺は一番端っこの受付の人に話しかける。中々の美人さんが受付嬢だということも変わらないな。


「はい、どのようなご要件でしょうか。」


「あの、冒険者になるための手続きをしたいんですけど。」


「……?」


ふむ、どういうことだ。反応がない。


「あの……」


「えっと、その…お一人様でしょうか?お連れの方は…」


なぜそんな質問をするのだ。自明じゃないか。


「二人で、ですけど…」


「その場合ですね…まずはお連れの方を取り戻すのが先かと。」


「はい?」


俺は恐る恐る後ろを向いてみる。


「どこ行きやがった。」


シャラルの姿がなかった。この数瞬の間に消えるとかどうなってるんだ。


「ん?どした。」


溺結がとある方向を指差す。その先には、


「まあいいじゃねえか。一口ぐらいな。」


「い、いえ。大丈夫なので。」


むさ苦しそうな男どもに捕まったシャラルが酒を飲まされそうになっている。まじで何やってんだ。


「はあ。すみません、ちょっと待っててください。」


俺は【プラズマ・ステップ】を展開する。これは移動速度が雷のように速くなるというものだが、速すぎて使い切れない者が多く使用率はめちゃくちゃ低い。それに雷属性の効果範囲も狭いため、使い勝手は悪いのだが、俺は好きなものだ。


バチィ


俺は超高速で移動し、そのままシャラルを抱きかかえ戻ってくる。よし、まだ飲まされてないな。


「あっ、えっと。ありがとう。」


「本当に…これから気をつけろよ。」


俺はシャラルをおろしてもう一度受付の人に向き合う。


「じゃあ、手続きお願いします。」


「す、すごいですね。」


感心した様子で作業を始めてくれる。すると、


「お前、すげぇな。どこ出身だ?」


「さっきのもう一回見せてくれない?」


周りから冒険者がよってきた。これだから目立ちたくなかったんだよな。


「おお、いい感じじゃの。」


二階から声が聞こえてくる。俺がそこに目を向けると、随分と年老いた男がひとり立っていた。髭は伸び切りまるで仙人のようだ。


「…?なんだ。」


周りにいた者たちが一気に静かになる。そして、


「今日はどのようなご要件でこちらに?」


受付の人が聞いた。


「いや、繁盛しとるかどうかの確認じゃ。それにしてもそこの若いの、いい動きじゃ。」


本当になんだこの爺さん。


「えっと、まあありがとうございます。」


「うんうん、反応もいいのう。さて、この子たちの対応は儂がしよう。さあ、ついてこい。」


えっ、まじで何なんだ。


「えっと、これは。」


「あの方がおっしゃっているのですから、そうしてください。」


じゃあついていくか。受付の人が言うのであれば正解だろう。


「ここは…」


爺さんについて言った先にあるのは応接室だった。しかも高級感あふれる。防音もしっかりしており、喧騒も聞こえてこない。


「まあ座れい。」


そう言われたのでソファに腰掛ける。ふかふかだ。


「あの…一体何が。」


「まあ話を聞けい。単刀直入に聞くが、主ら逃亡者じゃろう。」


空気が凍りつく。ここの会話次第で俺たちの行く末が変わるな。


「そうかしこまるな。王都からこの王な通知が来ておる。」


そう言って一枚の紙を見せられた。そこには俺とシャラルの指名手配の内容が書かれている。捕まえれば報奨もあるらしい。


「つまり俺たちを王都に送り返すと。」


「そんなわけがなかろう。ここは冒険者の街。人間の王族などには従わん。」


「ですが報奨がたんまりと出ますよ。それにバレれば人間政府とも仲が悪くなるでしょう。」


俺はあえて自分が不利になるような言葉選びをする。


「まあまあ小童よ、よく聞けい。」



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