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第百十六話 指名手配

「【サンダー・ネット】」


俺はそれと同時に術式を行使する。【サンダー・ネット】は雷属性の中位のもので、相手を電気の網で拘束する。


「な、なんだ。」


きちんと声がしていた方向に向けて撃ったため、まずは近くにいたあの男どもを捕獲した。周囲を見渡せばこいつらの頭と思われる女が一人立っている。毒々しい赤色の髪だ。


「お、お前。眠っているはずでは。」


男が信じられないと声を上げる。


「ふん、あんな見え見えの罠にかかるほど衰えてはいない。」


そう言って前に進む。ちなみに馬車の中ではシャラルが熟睡中だ。


「あんた達ねえ、きちんと眠ってるか確認しろっていっつも言ってるでしょ。」


しかし、女の方には焦りの様子はなく部下を叱咤している。


「は、はい。すみません。」


男たちもこの後に来るお仕置き的なものの方に怯えている様子だ。


「はあ、まあいい。で、あんたはこれからどうするつもりだ?」


女が向き直ってこちらに聞いてくる。ふむ、どうすると言ってもこれと言った計画はない。馬車の中では先制攻撃を仕掛けて後は流れに身を任せるとしか考えてなかった。


「ここから連れを連れて出る、ですかね。」


そう思い立って俺は振り返り馬車の中に入ろうとするが、


「そこを動くな。」


後ろから声がかけられる。もう、何か用があるなら先に言ってくれよ。


「あんたねえ、この状況で逃げられると思ってるの?」


不敵な笑みを浮かべる女。逃げられるもなにもないと思うが。


「っち、無視かよ。手荒な真似したら商品に傷が入っちまうんだがな……お前たちやっちまいな!」


茂みから3人ほどの武装した男たちが出てきた。おそらくこれまででの戦利品だろう。結構上質そうな剣を持っている。流石に魔法具ではないが。


「はあ、荒唐無稽とはこのことだな。まあいい。俺の名前はラーザだ。手合わせがしたいなら3人まとめて来てくれ。少し面倒だ。」


そう言って俺は術式の準備体制に入る。すると、


「ラーザ……」


男の一人が俺に反応した。なんだ、俺の知り合いか?


「あ、姉貴。こいつ、あの指名手配犯の……」


「白眼白髪、ラーザ……間違えねえ。」


男どもがざわざわしだす。


「な、お前。どこかで見たことあると思ったら。」


俺が縛り上げた男がそう叫ぶ。ふむ、指名手配の内容は予想つくが、一応聞いてみるか。


「それってどういう罪で指名手配なんですか?」


「な、何をとぼけたことを。ラーザといえば王城の地下牢から脱獄して衛兵約30人を殺害、王国魔術団一隊に重傷を与え逃亡した大犯罪者だ。」


いやぁ、俺がしたことそのまんま脚色無しで伝えられてるな。別にどうでもいいが。


「お、お前たち。何ビビってんだ。相手は子供一人だろう。それにここまでの大物なら少し傷つけたぐらいじゃ価値は下がらねえ。やっちまいな。」


「そ、そうだよな。お前ら、いくぞー。」


そう言って3人は同時に襲いかかってくる。ふむ、なかなか筋のいい動きだ。そこそこの仕事には就けただろうに。


「ほい、ほおい、ほーーーい。」


俺はリズムに乗りながら華麗にステップを刻む。


「何やってんだい!早くしな!」


頭が急かすが、攻撃は一向に当たらない。


「ど、どうしてだ。」


あいつらも相当に息が上がっている。俺もだんだん避けるのに飽きてきた。


「ああ、もういいよ。【ヘル・ボール】」


俺は炎属性上位術式を展開する。


「な、なんだ。これ……」


目の前の光景が信じられないといった表情を浮かべる女。今俺の周りを3つの蒼炎の弾がくるくると回っている。結構操作難易度が高いものだが、まあこれくらいなら少し練習すればできるようになる。


「じゃあ、まずは一人目。」


俺は弾を打ち出す。


「うぎゃああ!」


それに運悪く当たってしまった男が一人火達磨になり燃えてしまった。


「ひっ」


完全に怖気づいてしまったか。すでに戦う気力を失っている。


「反撃もなしか…じゃあ二人目。」


俺は追加でもう一弾打ち出す。それは男の周りをぐるぐると回りながら近づいていき、


「う、うわーー。」


最後は恐怖で跪いたところにヒットだ。同じく火達磨になる。まあ前のやつはもう燃え尽きているが。


「じゃあ最後に三人目だ。」


俺は直線上に打ち出す。その瞬間、


「な、舐めんじゃねえ!」


女がこちらに接近してきた。このタイミングを狙っていたのだろう。最後の弾は既に最後の一人に向かって打ち出されたあとで、反撃はないと踏んでの行動。


「はあ、まあ惜しいな。」


「な……」


女の動きが止まる。なぜならば俺は弾を分裂させて片方を女の方に向けたからだ。そう、つまり実際には弾は4つ出していたが、それを重ねることで3つに見せていたのだ。


「あ、あ」


女は声も出ないと言った様子だ。ちなみにもうひとりの方は既に燃えている。


「わ、わかった。私が悪かった。なんでもする。だから…命だけは…」


この期に及んで命乞いか。情けないな。


「そ、そうだ。一緒に手を組まないか?あんたがいれば私はもっといろんなことが……」


そしてクズ発言。本当にどうしようもないな。


「はあ、もういい。」


俺は蒼炎の弾を消す。


「た、助けてくれるのか……」


「あのなぁ、お前は俺を誰だと心得ているんだ?」


と、言ったところでそういえば最初に網にかけた奴らがいたことを思い出す。


「ん、失神してんのか。」


恐怖のあまり…ということだろうか。まあ都合がいい。人生の最後を意識しないで済むのは逆に幸せかもな。


「【プラズマ・ウェーブ】」


俺は雷属性の術式でコイツラを葬り去る。


「でだ、俺がこれから何をするかわかるか?」


「わ、わかるわけが…」


「答えは簡単だ。悪い事したやつには同じ苦しみを与えないとな。」


俺は術式を展開する。初めてのものだから慎重に。


「【ドミネート】」


俺は術式を発動する。

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