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第百八話 最後の1人

「はぁ。」


俺は諦めて一気にジャンプする。


「すみません、1753の者です。」


俺は一応名乗る。まあ分からないわけはないと思うが。


「ラーザさんですね。お待ちしておりました。」


奥から係員が出てきて俺の普段学校で使っている戦闘服が手渡される。やはりか。おそらく学校と連携して、誰も名乗り出なかった場合アレス・アカデミアの生徒が出るように仕向けられていたわけだ。


「ありがとうございます。」


俺は【シラニルト】で着替える。元々着ていた服は係員さんに預ける。


「武器は……」


「あっ、いえ大丈夫です。」


俺は普段は何も持たずに戦っているから大丈夫だ。


「それでは頑張ってください。」


係員さんが退場した後、俺は対戦相手の観察に入った。まず目が行くのは握られている聖剣だ。相当に強い効果を持っている。そして場慣れしている出立。


「は、はっはっは!」


すると突然笑い出した。なんだあいつ。


「なんだお前って目だなぁ。でも、俺から言わせてもらうとなんだこのガキはって感じだぜ?」


え、本当になんだこいつ。しかも同年代なんだが。


「そんなにひょろひょろで何も持ってないなんて負けに行くようなもんだ。」


ふむ、つまりこいつは俺のことを舐めているということか。


「両者位置についてください。」


実況が鳴る。俺たちは互いに距離をとる。


「よーい、」


「【エンハンス】」


「スタート!」


開始の合図と同時に両者が互いに距離を詰める。


あいつは剣を持っている分リーチに分がある。つまり中近距離で戦いたいはずだ。そしてあの剣はどちらかといえば杖剣の類。つまり剣でありながら術式補助の効果を持っている。術式の撃ち合いも不利だろう。実際剣は既に聖力を貯めつつある。


「つまり俺の勝機は……」


俺は【エンハンス】を一段階強める。これにより俺は加速する。


「っち」


一気に距離を詰め、反応されないうちに拳に力を込める。初撃が大切だ。


ギィィン


ギリギリのところで剣に防がれた。しかし、これはチャンスだ。俺の【エンハンス】と指輪の効果でとんでもない威力になった拳は【エンハンス】で強化しただけのあいつの肉体を大きくのけぞらせた。


俺が二撃で蹴りを加えようと脚に力を込める。しかし、さすが初代王者。黙ってはいない。


「【ウィンド・ブラスト】」


相手の剣に込められていた聖力が風属性になる。


「くっ」


生み出された風は俺を大きく吹き飛ばす。中位のものでもこの威力はあいつの技量と剣の力だろう。俺は咄嗟に受け身の体勢を取る。風属性は威力自体は小さいが使い勝手が良いのだ。


「【シールド】」


俺はあえて低位結界をさらに柔らかくして俺の落下地点に置く。こうすることで落下の衝撃を最小限にとどめることができるのだ。


「はあ、休めねえな。」


俺の目の前には既に完成し迫ってきている蒼炎の矢がある。急いで組み立てのだろう。蒼炎と言っても少し赤みがかっているが。


【エンハンス】を少し強めて一気にジャンプする。【プトテクト・シールド】を準備して俺は矢を避ける。


「【サンダー・チェイン】」


俺は雷属性の中位術式で応戦する。俺から雷の鎖が出てきてあいつを拘束しに行く。


しかし、雷の鎖はあいつの剣に弾かれる。その片手間にもあいつは次なる術式を詠唱している。


「【ジャンプ】」


俺は仕方がないので聖力を多少消費しようとも転移して一気に決めに行く。クラリスにも使ったこの手は防戦一方な状況を覆すいい手段だ。


「【ヘル・キック】」


俺は足に蒼炎を纏い一気に繰り出す。


ドガァァァン


あいつは一気に吹き飛び壁に衝突する。声も出す暇も無かっただろう。


「決まったかー!?」


実況も大盛り上がりだ。


「はあ、まあこれくらいか。」


もうあいつは立ち上がれないだろう。まあ鬼ほどの肉体を有していないからな。


「しょ、勝者、ラーザ!」


ウオオオオ!!


実況も観客も興奮している。


「これからどうしたらいいんだ?」


これからの動きは何も言われてないのだが。まあいいか。


「【ジャンプ】」


もう聖力を使う予定もないので、自席まで戻る。


「あんた、すげえな。誰なんだ?」


俺の横の人に話しかけられる。そのほかにも見物客が大勢こちらにきている。


「ちょ、やめ。」


俺はなんとか逃げようとするが、難しい。


「ああもう!【ジャンプ】!」


俺の視界が一気に変わり、馴染みのある部屋になる。いやぁ、聖力ほとんど使い切っちゃった。


「大丈夫だった?」


「ああ、まあな。」


溺結もついてきた。


「それにしても結構圧勝だったね。あんなに煽ってたのに。」


「いや、あいつは強いよ。相手が俺じゃなきゃ多分負けてない。」


「へえ、ラーザでも強いって感じるんだ。」


なんか意外そうな顔をしている。俺でも強いと感じる時はあるんだけどな。


「まあな。あいつはおそらく最後の1人だよ。」


「最後の1人?」


「ああ、まだ荒削りなところがあるが、おそらくは黄金の世代の最後の1人ってことだ。」


俺自身も久しぶりに聞いたな。


「それはラーザじゃないの?」


「そんなわけないだろ。俺は魔族であって人間じゃない。」


でも実際どうなのだろうか。魔族の魂と人間の肉体。どちらが俺の本質だろうか。


「まあいいか。」


今日はもう疲れた。寝よう。盛り上がったし。


「じゃあおやすみ。」


「シャア!」


そういっていると、窓からアルケニーが入ってきた。そういえば付いてきてなかったな。

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