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第百六話 帰還

「じゃあ、またいつかな。」


俺たちはシャーロットの家を名残惜しくも出る。今後いつ合うかは不明だが、今生の別れというわけではあるまい。


「うん、じゃあね。」


「またね、シャーロットちゃん。」


まあ寂しくないわけではないだろう。実際シャーロットの目には涙が浮かんでいる。だが、決して泣いているわけではない。


「明日の朝にはここを出るんだよな。」


「うん、そうだね。長いような短かったような。」


まあ今日は帰ってゆっくりするか。





「おおー!ラーザ、起きたのか。」


帰ってゆっくりできると誰が保証した?ずっと寝ていたのだからアンディあたりから騒がれるのは仕方がない。


「ああそうだな。まあいいから寝させてくれ。」


「ええー、ずっと寝てたんだからいいじゃねえかよ。」


いやずっと寝てたと言って疲れてないわけではないんだがな。それに睡眠っていうのはけっこう体力使うものなのだ。


「ちょっと待っててくれ。一回外の風に当たってくる。」


俺は外に出て少し歩く。活気のない路地裏まで行く。


「ええと、あれってどうやって出すんだっけ?」


溺結に聞く。


「あれは私から取り出す意志がないと取り出せない。」


そう言いながら俺の手に白い鞭が出現する。おお、なにもないところからノーモーションで出るのは便利だな。


「で、出してどうするの?」


「いやちょっと鞭なんてだいぶ触ってないからさ。練習しとこうかなと。」


鉄は熱いうちに打て、だ。


「あれ、逆に触ったことあるんだ。意外。」


うん、まあ随分と昔の話だ。それにあのときも1週間位で飽きたし。


「じゃあこの鞭の使い方を説明する。呪いもこもってるし。」


「おう、頼んだぜ。」


それから小一時間ほど練習した。





「あ!ようやく帰ってきた。」


帰ってみると、もうすでにみんなは夕食を食べている最中だった。


「ラーザも早く食えよー。なくなるぞ。」


「ごめん、ちょっと後で適当なもの食っとくわ。今ちょっと疲れてて。」


俺は寝るところに行く。


「お、おう。わかった。ゆっくり休めよ。」


「じゃ、おやすみー。」


俺は眠りについた。






「……朝か。」


気付いたら朝になっていた。起きてみるともうみんな飯食いに行ってるし、一番に寝て一番遅くまで起きないとかすごいな。


「あ、起きたー。ささ、食べて。」


俺はすでに準備されていた朝食に手を付ける。昨日の昼から何も食っていなかったからか身にしみるような思いだ。


「これ食い終わったらすぐに出るらしいからそのつもりでな。」


ふむ、これで鬼人領ともお別れか。


俺は一口一口を噛みしめるように食していった。





「ありがとうございましたー。」


俺たちは見送りを受けながら、鬼人領から帰路につく。


「そうじゃん。ここ、あの龍がいるところ。」


大きな部屋に龍が一体佇んでいる。あのときの氷は溶け切って乾いている。


「ありがとうございました。」


ルイス先生がお辞儀をする。


「用が終わったなら早く帰りなさい。」


つれない性格してるぜ。


「わかった。」


俺たちはそそくさと部屋をでる。


「あと、この洞窟に長居は禁止です。」


後ろから声が聞こえてくる。


「じゃあみんなはついてきてくれ。」


ルイス先生に続いて久しぶりに見たジェイクとイクリールが先に続く。この二人は何をしていたのだろうか。


「3人とも強えぇ。」


誰かがつぶやく。それはそうだ。前で起こっているのは襲ってくる魔獣の蹂躙だ。


「あ、出口。」


もう出口か。俺たちで行ったときよりもだいぶ早い。これが実力差か。


「この馬車に乗ってくれ。」


本当に準備がいい。すでに洞窟の外は馬車が待機していた。


「扉を締めてと……よし、じゃあ行こう。」


馬車が動き出した。





その後はなんの異常もなく王都についた。次の日は臨時で学園は休みだったから、ブライズにお見上げを渡したり、両親に送ったりして1日を潰した。


「溺結、シャーロットたちは今頃何してるのかな。」


「多分日常に戻ってるよ。」


「じゃあ俺たちはこれから何をすると思う?」


「さあ?」


「それはな……」


「何?」


「日常に戻るんだよ。」


遠く離れた王都と鬼人領で共に日常に戻ると考えると、感慨深いものがあるな。

これにて鬼人領編終了です。次章も楽しみにしておいてください。


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