幕間 少女、魔帝と出会う
ああ、もうなんでこんなことに。私は正直苛立ちを隠せなかった。原因は目の前ですやすやと寝ている少年である。パパが言うにはこの少年は試験のと中から睡眠をとり、ずっと寝ていると言うことだった。こんな大事な試験で寝るなんて考えられない!しかも終わっても起きる気配がしないからパパに起きるまで見守ってあげなさい言われるし、災難だ。私だって早く帰って寝たいのに。
そう思いつつ、私は少年を観察する。髪は驚くほどの白、肌も羨ましいほどに真っ白である。そしてこれの寝顔が憎々しいほどに可愛いのである。安心し切った子供のようであり、うちに持って帰りたい。しかしまあ、こんなことをしてても無駄なため何度目かの声かけを行う。
「おーーい、起きてー。もうこんな時間だよー。」
そうすると今度は前回までとは反応が違う。何やらもぞもぞしてきたと思ったら、バッと顔を上げて
「そうだっ。試験、あの後どうなった?」
と言うのだ。何を言っているのだこの子は。もうとっくに終了して回収されている。
「試験?もうみんな帰っちゃたよー。君があんまりにも気持ち良さそうに寝てるからパパが起きるまで見ておいてって。本当に困ったわ。あっパパっていうのはあの試験官のことねー。」
そう言うとこの子はフニャッと顔を変形させたと思ったら今度は驚いた表情をしている。あらやだ、かわいい。そういえばこう言っておいて自己紹介をしていないことに気づく
「あっ私ったらまだ名前を言ってなかったよね。アテナ・メーティスです。ふふふ、それにしても君、本当に面白いね!あんなに大切な試験で眠っちゃうなんて。大丈夫なの?」
そう、そこなのだ。彼は試験中寝ていたのだし、試験ダメだったとしか思えない。そう思っていると、
「ああ、あの試験ね、ちょっと簡単すぎて眠くなっちゃったんだ。後12時間も耐えられなくて寝ちゃった。」
いい今、なんて言った?あの試験が簡単だった?私が20時間かけて7割を必死にといたあれが?しかも、
「え?後12時間ってことは8時間であの試験の問題全部解いたの?早過ぎない?」
思わず言ってしまった。それほどまでの衝撃が私にはあった。
「え?あの問題だからそんなに驚くことないと思うんだけど。」
「いやいや、私なんて20時間かけても7割しか解ききれなかったよ?」
「そんなことないでしょ。あんな問題…」
さらに言ってくる。正直私の心が抉られていく感じがある。何せ、
「そんなことあるの!でもなんだか悔しいな〜。自分の中では結構できてた感触だったのに、こんな人がいるなんて。あっあなたが起きたらすぐ帰るようにって言われてたんだった。それじゃ!」
正直まだこの人と話していたい。いろいろなこと聞きたい。でも話していると、どんどん心が削られていく気がする。だから私は帰ることにした。それでも最後にこれだけは聞いておきたい
「そういえばあなたの名前を聞いてなかったわ。なんていうの?」
「ん?ああ、ラーザだ。姓はない。また縁があれば会おう!」
彼の名前が知ることができた、それだけで今日はいい日だったと思える。
「わかった!それじゃあね、ラーザ君。」
「それでね、ラーザ君あの問題が簡単だったって。すごくない?」
夕食の時、ママのテテュスに報告をする。
「あらまぁ、あの試験の問題が簡単でしたって?私も解いてみたけれど、8割ぐらいしかわからなかったわ。嘘じゃないの?」
「嘘じゃないよ!わかるもん!」
少しムキになってしまう。
「ふふっ、でも面白いわね。アテナがそんなに必死なんて。」
ママとそんなことを会話していると、
「ただいま〜。いやぁ疲れたぜ。」
パパのヘリウスが帰ってきた。
「あらあらお帰りなさい。ご飯できてますよ。」
「パパー。試験の採点終わったの?」
確か今日は試験の採点があるから奥帰ってくると言う話だったが。
「まあそうだな。二千人分の採点は終わらせてきたぞ。」
「それにしても早いですね。」
ママが聞いてくる。
「いやぁ、そうなんだよ。俺的にはみんながもっと解答欄を埋めてくるものだと思ってたんだが、空欄がいっぱいあって、簡単に終わったぞ。」
「そうなんだ、そうだ!私の点数どうだった?」
とても気になる。ここで聞いておかないと合格発表の明日まで心配で夜も眠れなさそう。そんなことはないけど。
「ふふ、そうかそんなに気になるか。さーてどうだったかな。忘れちゃったな〜。」
なかなか教えてくれない。と言うことで最終手段にでた。
「えーー。ひどいよぉ。そんなことするパパなんて嫌い!」
「うわっちょっと待って。わかったから、教えるから嫌いにならないでぇ。」
全くの嘘である。パパは私が少しでも嫌いと言うとすぐに素直になる。
「えへへ〜。パパだーいすき。」
パパに抱きつく。そうするとパパは少し困った顔をして、
「合格だよ、アテナ。おめでとう。」
そう言うのであった。
「そういえばヘリウスさん、ラーザっていう子の点数とか知ってますか?」
ママが聞いてくる。そういえばそうだ。それも気になる。
「そうだ!!その子だよ。」
「どうしたの?急に、びっくりしちゃった。」
「そのラーザとかいう奴の点数はな……」
パパは少し溜めて、真剣な眼差しだ…まるで信じられないと言ったような。
「満点だったんだよ。」
家族全員が数秒の間行動不能になっていた。