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-07- テイク・オフ

燐光風穴(りんこうふうけつ)……レベル5?」


「順を追って説明するわ。まず燐光風穴は首都郊外の山の中腹にあるダンジョンで、その内部は特殊な鉱石が発する光によって淡く輝いているの。おかげで洞窟型ダンジョンにしては視認性が良く、出現するモンスターも比較的弱いものが多い。以上のことから初心者向けのダンジョンとして知られているわね」


「なるほど、簡単だからレベル5なんですね」


「近いようで少し違うわね。このレベルはダンジョンの深さを表していて、最奥部にたどり着くためには、ダンジョンのレベルと同等以上のブレイブ・レベルが必要とされるの」


「ブレイブ・レベル……。さっきも出撃の時にブレイブ・リンクとか言ってましたね。ブレイブって、一体どういう意味なんですか?」


「ブレイブは脳波って意味よ。ブレイン・ウェーブ……略してブレイブ。ブレイブ・リンクはそのままDMDと操者の脳波を繋ぐことで、ブレイブ・レベルは脳波の強さを表してるわ」


「つまり、脳波の強さが足りないと、高いレベルのダンジョンには入れないということですか?」


「うーん、入れないってことではないわね。レベルが表しているのは、あくまでも最も深い場所のことだから、レベルが足りてなくても脳波の届く範囲でダンジョンの探査は可能よ」


「うむむ、少し難しいですね……」


「とりあえず、ブレイブ・レベルは高いほどダンジョンの深いところまで脳波を飛ばせるってこと。そして、ダンジョンのレベルは最深部に行くために必要なブレイブ・レベルを表しているってこと。一応、この2つだけ覚えてくれればいいわ」


「わかりました。ところで、私のブレイブ・レベルはいくつなんですか?」


 正直、話の途中からこれが気になって仕方なかった。

 低すぎると、それだけ探査できる範囲が限られるということなのだから……!


「蒔苗ちゃんのブレイブ・レベルは……大体28ってところね」


「それは強いんですか!? 弱いんですか!? それと大体って何ですか!?」


「ハッキリ言って……強い! ルーキーでこれはなかなかないわ!」


「よ、よかった……」


「あと『大体』というのは、ブレイブ・レベルにブレがあるからよ。脳波は精神状態によって強くなったり、弱くなったりするから、28レベルというのは比較的落ち着いている、普段に近い状態でのレベルってことね」


「興奮すると、グワッとレベルが上がることもあるですね」


「うん、ありありよ。でも、深く長いダンジョンを探査するには、安定して高レベルを維持する必要があるわ。気分によってリンクが途切れ途切れになってたら仕事にならないから」


「ブレイブ・レベルは訓練で上げることは出来るんですか?」


「大丈夫。探査を積み重ねていけば、自然と上がっていくわ」


「なら、なおさら早くダンジョンに行かないといけませんね!」


「じゃあ、そろそろ準備しよっか!」


「その前にお手洗い行ってきます!」


「行ってらっしゃい!」



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「さて、蒔苗ちゃん。持っていく武器はどうする?」


『ネオアイアンソードを2つ持っていきたいです。銃はまだ実践で使える気がしないので……』


「わかったわ。左右の腰にくっつけておくね」


 ドック内のロボットアームによって、2つの剣が腰に装着される。


「あと、私からネオアイアン・ライトシールドを2つをプレゼントするわね。すごく軽い小型のシールドだから、動きを邪魔することはないと思うわ」


 2つの盾が両腕に装備される。

 少し重さを感じるが、確かに問題はないレベルだ。

 でも、小さい盾を2つも装備する意味はあるのかな?


「初戦闘だとパニックになって、体をかばうように両腕で攻撃を受けようとする子が結構いるのよ。それにアイオロス・ゼロには内蔵武器がないから、両腕が破壊されると逃げることしか出来なくなる。それらのリスクを回避するために、腕の防御を固めようと思ったの」


『流石、育美さん……すごい』


「まあ、腕全体を守れるわけじゃないし、肩をやられたら終わりなんだけど、気休めにはなると思うわ。あと、覚えておいてほしいんだけど、機体を破壊されても蒔苗ちゃんは傷つかないわ。アイオロス・ゼロは想いの詰まった大切なDMDだけど、壊されても蒔苗ちゃんが死ぬわけじゃないし、後で回収依頼を出してドックに戻せばいくらでも修理が出来るの」


『はい、わかってます』


「うん、蒔苗ちゃんは大丈夫だと私も思う。でも、DMDを破壊されたショックから立ち直れない人も……たまにいるの。だから、クールにいきましょう。熱くなりすぎて、自分を傷つけるようなことはしちゃダメよ」


『わかってるつもりです』


「そうね……。蒔苗ちゃんは大丈夫よね! よし、発進シークエンスに移行!」


 アイオロス・ゼロはドックから自動的に出撃ハッチに送られていく。

 なんだか、工場の流れ作業で作られているパーツになった気分。


「アイオロス・ゼロ、異常なし。ブレイブ・リンク、異常なし」


 リフトの上昇が止まる。

 さて、今度の決め台詞はなににしようか……。


「輸送用ドローンユニット装着」


 その時、背後から抱きしめられたような気がした。

 いや、気のせいじゃない!

 アイオロス・ゼロの背中になにかをくっつけられてる!


「各部チェック……輸送用ドローンユニット、異常なし。発進準備完了」


 頭上から光が差す。

 目の前のハッチじゃなくて、今回は天井が開いていく……!


「蒔苗ちゃん、ごめん。肝心なことを言い忘れてたわ。ダンジョンにはね……空路で向かうの。ちなみにドローンの制御は私がやるわ」


『それって……育美さんが決めたタイミングで飛ぶってことですか? ちょっと待ってください! 心の準備が……!』


「テイク・オフ!」


 アイオロス・ゼロが……空に舞った!

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