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-120- ふさわしい名とは

 今まで私が操縦してきたDMDの名前は『アイオロス・ゼロ』『アイオロス・ゼログラビティ』『アイオロス・ゼロリペア』の3機……というか同じ機体を改修しながら使い続けてきた。

 でも、そろそろゼロは卒業してもいいと思う。

 純粋に『アイオロス』の5文字に合う単語を探さなければ……!


 アイオロスMk-Ⅱ(マークツー)……スーパーアイオロス……ニューアイオロス……。

 うーんカッコいいけど何だか無難だ!

 こう……私だけの、私にしか名付けられない名前はないかな?

 思考は堂々巡りし、悩んでる間に新型機は首都第七マシンベースに運び込まれてしまった。


 ということで、私も久しぶりの首都第七マシンベースにやって来た。

 メインタワーの1階ロビーに入ると、そこには見知った顔が並んでいた。


「蘭! 葵さん! お久しぶりです!」


「あっ……! お、お久しぶりですわね蒔苗さん」


 蘭は暑いのか金髪ドリルのカツラを外した状態で待っていた。

 まあ、都会の夏は彼女本来のショートヘアーの方が間違いなく快適だもんね……。


「おっす! 新潟は涼しかったかい?」


 葵さんは一見元気に見えるけど、以前よりやせてるような。

 やはりこの暑さが悪いのか……!


「向こうも暑いは暑いですけど、ここよりはマシでしたね。あと私は旅館にいる時間が長かったですから、かなり快適な夏を味わってましたよ」


「いいな~! 私も自分専用の露天風呂がある旅館に泊まりたいなぁ~! でも、最近忙しいからなぁ……」


「まったくですわ! ここ最近どのダンジョンも活性化しているような気がしてなりませんの! おかげで私のような優秀なDMD操者は引っ張りだこですわ!」


「対迷宮部隊もフル稼働だよ。まあ、今日のところは結構暇だけどね」


 『黄金郷真球宮』を抹消した直後は全国のダンジョンの活動が低下したという話を聞いたけど、2週間もすれば元の状態に戻ってしまうか。

 でも、元に戻るを通り越して活性化まで始まっているのは、また新しいダンジョンでも出現するのか、既存のダンジョンでモンスターの大量発生でも起こるのか……。

 どちらにせよ、早く新型機の名前を決めて有事に備えないとね!


「ねえ、話は変わるんだけど……。私、新型機のネーミングでかなり迷ってるんだ。何かいいアイデアとかないかな?」


 百華さんに聞いて良いアイデアを得られたから、蘭と葵さんにも聞くべきよね。

 意見を求められた蘭と葵さんは腕を組んで考え込んでいる。

 最初に声を上げたのは……蘭の方だった。


「それはズバリ自分の名前を取り入れるべきですわ! 私のグラドランナちゃんのように!」


 自分の名前……か。

 つまり『マキナ』をどこかに取り入れろと……。

 確かにそれなら自分にしか名付けられない自分だけの名前になる。


 でも、自分の名前を入れるのはちょっと恥ずかしい気もする!

 それを口に出してしまうと蘭を恥ずかしい人扱いすることになるから、何か他の理由でやんわりとお断りして……。


「自分の名前は流石に恥ずかしいっしょ」


「なっ……なんですって!?」


 あ、葵さんが言ってしまった。

 私は助けられたけど、実質『恥ずかしい人』に認定された蘭が不満をあらわにする。


「そういう葵さんはどういう名前にすれば良いと思いますの? 誰に言っても恥ずかしくないネーミングというのをぜひお聞かせ願いたいものですわね!」


「そりゃ……アイオロス・ゼロの次なんだからアイオロス・ワンとかでいいんじゃない?」


「はんっ、無難すぎますわね」


「ぶ、無難で何が悪いんだよ……。ワンにはナンバーワンとかオンリーワンって意味もあるし、最強のDMDである新型機にも、最強の操者である蒔苗にもピッタリじゃん」


「込められた意味は立派ですけど、果たしてパッと見ただけで一般の方がそこまでの意味を汲み取ってくれるものでしょうか? 葵さんのような普通のDMD操者が扱う機体なら無難でも構いませんが、蒔苗さんの機体はこれからの時代の象徴になるような存在ですのよ? 名前の段階でハッタリの1つもかまさないと人々が不安になってしまいますわ!」


「くっ……! わからんでもないが……」


「それに葵さんも自分の専用機を手に入れたら、それはそれは派手な名前を付けたいんじゃありませんの? ほら、いつか私に話してくれたような……」


「そ、それは黙ってる約束でしょ!?」


「おーほっほっほ! では、蒔苗さんは新型機に自分の名前を付けるということでよろしくって?」


 えっ!? まったく私が絡まないところで決定されてる!?

 というか、蘭と葵さんすっごく仲良くなってない?

 私が新潟に行っている間、一緒に行動することが多かったのかな?

 ああ、知らない間に友達同士が急接近だなんて夏休みって感じね……!


 それはそれとして、アイオロス・ワンという名前どこかで聞いたような……。

 そうだ! お爺ちゃんのお葬式の後、遺言書の読み上げの時にアイオロス・ワンという名前が出ていた。

 でも、お爺ちゃんのDMDの名前は『アイオロス』であって、ワンは付いていないよね?

 なぜ遺言書にだけ『アイオロス・ワン』と書かれていたんだろう……?


 私もゼロの次にワンというのは安直で無難な選択だと思うけど、悪い名前とも思わない。

 操者が存在しないゆえにゼロの名を与えられたDMDに操者が生まれた。

 ならばゼロから1つ数字を進めるというのは王道だと思う。

 しかし、それがすでに使われている名前だとすると、選択肢から外さないといけない。


 あー、誰か事情を知ってそうな人はいないかなぁ~。

 遺言書を読み上げていた弁護士さんは読んでただけだろうし、育美さんもワンの名を出したことがない。

 萌葱一族から距離を取っていた紫苑さんが知っているとも思えないし、それ以外に私とかかわりのあるモエギの関係者といえば……私にお爺ちゃんの訃報を告げ、お葬式に来るように言ったあのクールなメガネの男性とか……。

 でも、あの人が一体誰なのか私まったく知らないのよね!


 本当に突然いろんなことが起こったかっら、当時の私は大層混乱していたなぁ……。

 もはや懐かしい。あれからまだ半年も経っていないというのに。

 あの時みたいにクールメガネの人が突然現れてくれれば、ワンの謎を聞くのも楽なのになぁ……。


「……あ」


 私は一瞬自分の目を疑う。

 いる……! ちょうど今思い浮かべていたクールなメガネの人だ……!

 ロビーをきょろきょろと見渡して誰かを探している。

 その誰かは……間違いなく私だ!

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