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第3章 生徒会と恋愛お約束条項⑤

「で、私の行動指針がなんなんですか?」


「……美月は俺と柑奈さんが交際するって可能性をゼロにしてしまわないために俺の生徒会執行部参加を勧めたんだよな?」


「はいです」


「それでなんでお前も参加するわけ?」


「それ聞く必要あります? いえ、敢えて私に言わせたいなら口にしますけど」


 そう言われるとなんだかすごく俺が性格悪いみたいじゃないか。


「……俺と一緒にいる時間を増やしたいから?」


 言ってみるとそれは予想以上に自分何様だよって感じのセリフだった。ぐう。


「恥ずかしがってるセンパイ可愛いです♡」


「あーね、すみませんね自意識過剰で」


「やや、正解なんで謝る必要ないですよー?」


 楽しげに、美月。


「俺をからかって楽しいか……?」


「控えめに言って最高ですね!」


 最高か。じゃあ仕方ないな……ってそんな訳あるか。


「矛盾してないか?」


「矛盾? 何がですか?」


「俺が執行部入りしたって、お前がセットなら俺と柑奈さんがくっつく可能性なんて皆無じゃないか?」


 俺がそう言うと、美月は嬉しそうに笑った。


「――それは既にかなーり私に傾いている発言なのでは?」


「――カリカノなんだろ? その前で浮気なんてできるかよ。それに柑奈さんは俺たちがオトモダチってことを知ってるんだぜ? 俺をどうこうしようとは思わないんじゃないか?」


「浮気しない宣言はめちゃめちゃ嬉しいですけど! でもその考えはお汁粉より甘いですねー」


「例えがシブ過ぎる……もっとJKっぽく例えられないのか」


「じ、十年後ではリバイバル的な感じでブームなので! お汁粉スイーツ!」


「ダウト。言いよどんだ時点で信じられねーよ」


「うう……ホントなのに……」


 そんな確認出来ない情報を出されてもな。


「で、甘いって何が?」


「センパイをどうこうしようとは思わないってくだりです。逆ですねー。アレで深町先輩は本気になったんだと思いますよ、センパイと接点を作るために動いたんだと思いますね」


「……どうしてそう思うんだ?」


 尋ねると美月は一つ頷いて、


「確認のしようがないので推測なんですけど」


「うん」


「私の世界線では深町先輩にライバルらしいライバルはいなかった。そこでセンパイのクラスメイトの柏先輩が転校することになって、生徒会役員に空きが出ました。そこで丁度いいからってことでセンパイに白羽の矢が立った――こんな流れなんじゃないかと」


「――まあ、そう仮定してみよう」


「でもこの世界では違います。センパイに生徒会の話をふる前にオトモダチの後輩女子――私の存在を知っています。その上で生徒会の話をセンパイに持ちかけた。自分にもチャンスがあるように自分のテリトリーに引き込もうとしたわけです」


「待て待て、それは柑奈さんが俺に気があるって前提の話じゃないか?」


「それはもう確定事項なので」


 え?


「それはもう確定事項なので」


「……柑奈さんが、俺に気があるってことが?」


「はいです。先週お会いしたときに確信しましたし、今日の態度でも丸わかりですねー。深町先輩も私に気付かれてないとは思ってないです。気付いていないのはセンパイくらいですよ」


 柏先輩にもからかわれていたじゃないですかー、と美月。


「それはそれでめちゃめちゃやりにくい状況なんだけど?」


「センパイは気にしなくていいです。深町先輩も今はそんなつもりはないでしょう。多分今は私とセンパイが上手く行かなかった時に備えていよう、ぐらいじゃないですかね?」


「……そんな備えとかするか?」


「……そんな備えのためにセンパイと同じ大学に進学した女がここに! センパイ優秀なんで受験大変だったんですよ……?」


「そ、そうか……」


「――しかもその備えたチャンスを逃すし! 大学時代だけで二度も!」


 頭を抱えて美月。


「お、おちつけ。な? でもそれじゃあどうして柏の提案に乗ったんだ? あのまま無理ですねとなれば俺は生徒会に入れなかっただろ」


「だからそれは最初の話に戻るわけですよ。センパイに可能性を持たせた上で私を選ばせて見せます。っていうかあの流れでセンパイが執行部入りしなかったら、私だけ有志メンバーとか意味不明な状況じゃないですか。それこそセンパイがいないなら入りませーんは柏先輩に申し訳なくて言えませんし。でしたら私が庶務になってでもセンパイを生徒会に引き込まないと、私が生徒会に入る意味が無いです」


「柏に申し訳ないって、柑奈さんはいいのか」


「そりゃあ恋敵ですからね。深町先輩に遠慮はしませんよ」


「美月がどう思うかは知らないけど――本当に柑奈さんが俺を気にしているっていうなら見せつけるみたいなのは嫌だな」


「見せつけるも何も、オトモダチがいると知った上で誘いに来たのは深町先輩の方ですから。おっと、こうなるとセンパイが私をオトモダチと紹介してくれたのはグッジョブでしたね! 私も遠慮せずにすみますので!」


 ナイスです、と美月が親指を立てる。なんでそんなおっさんみたいなリアクションするんだよ。横ピースでもしとけよ。


 ……いや、それもあれか。あれだな。うん。


「センパイは表向き私とオトモダチってことになってますけど、あくまで私はカリカノですから。生徒会に入っても好きなようにしてくれたらいいんですよ。その上できっと私を選んでもらいますから」


「前向きだな」


「……めちゃめちゃ大人でカッコイイ先輩に見えてた深町先輩が年相応に可愛く見えるんですよ。負ける気がしません。センパイが私を大人にしてくれたからですかね」


「人聞きが悪い! 何にもしてないぞ、俺は」


「私の気持ちに気付かずに違う女性を選び続けて十年……果ては別の女性と結婚……そりゃハートも強くなります。泣きましたけど」


「俺のせいじゃないじゃん……」


 それは違う世界の俺の所業だ。断じて俺じゃない。


「センパイは気軽にカリカノの私を楽しんでくれたらいいんです。センパイが望んでくれるのなら、私はいつだってビックウェルカムなんですよ?」


 美月はそう言って急に甘い空気を作り――


「――次に恋愛交渉禁止令に抵触したら今週の弁当はなしな」


「明後日、美味しいお弁当作ってきますね!」


 ぱっと俺から離れる。なるほど、こうやってコントロールすればいいのか。


「和風がいいですか? それとも洋風の方が? さすがにお弁当で中華は――できなくもないですけど」


「あんまり頑張んなくていいぜ」


「女心がわかってませんね―。頑張って、それを美味しいって言って食べてもらえるのが嬉しいんじゃないですかー。手を抜いたら喜びも減っちゃうんですよー」


「そ、そうか……そういうもんか」


「はいです。女の子も大変なんですよー? だからいっぱい頑張るんで、いっぱい愛してくださいね?」


「おっと。そろそろバイトの時間だ」


「――距離が中々詰められない! だがそれがいい!」


「頑張れよ」


「センパイがそれを言いますか……」


 美月の恨めしそうな声を聞き流し、


「並木道までは一緒に行くんだろ? 行くぞ」


「んもう! ちゃんとアメもくれるんだから! 好きっ!」


 美月は立ち上がった俺の腕に抱きついてきた。


 ……今は人目がないのでセーフにしといてやろう。






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