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第97話 番外編:憧れるのをやめましょう

「なーんか最近、ジロジロ見られてる気がするんだよねー」

「へー」


 とうとう女神先輩の自意識過剰もここまで極まってしまったか。

 今日も懲りずに非常階段で「私って人気でしょ?」アピールをしてくるマウント女こと、女神先輩だが、生憎と下界には女神に付ける薬はない。


 残念に思いながら、プチッと鼻毛を抜いた。イタタ……。

 でも、こういったエチケットは大切だ。雪兎君、身だしなみにも気を使っております。姉教育の賜物である。


「雑な反応しないでよ! 主に君の所為なんだからねっ!」

「そういう他責思考は嫌われますよ。自省なくして成長なし」

「純度100%君の所為以外の何ものでもないけど!?」


 二年生において、ゴッデス悠璃神と人気を二分する女神先輩だが、最近になって女神先輩の株は急騰している。S高連発だ。実際、よく声を掛けられているのを目撃する。以前は男子が多かったが、この頃は女子の方が積極的かもしれない。


「いいことじゃないですか。いったい何が不満なんですか?」

「うー。だってだって、なんだか落ち着かないっていうかさ、悪い気はしないけど、慕われるのもあんまり慣れてないし、それに悩み事を相談されたって、私には答えられないもん」

「ぼっちあるあるですね」

「ぼっちじゃないっつってんだろぉぉぉぉおおお?」


 大層、柄の悪い女神先輩に睨め付けられる。女神の自覚があるのだろうか。

 

 とはいえ、女神先輩の言いたいことも分からなくはない。確かに、いきなりチヤホヤされると、我々ぼっち一同は、どうしていいか分からずアタフタしてしまう。


 釈迦堂だって、しょっちゅう自分を見失っている。そんなときは、腐葉土に匂いを嗅いで心を落ち着けるらしい。カブトムシの幼虫……か?


「そりゃあ、女の子の友達も増えたし? 下級生の子達から頼られたら何とかしてあげたいって思うけど、でもでも恋愛相談なんて、むしろ私がしたいくらいだし……」


 人差し指で髪をクルクルしながら、市販のマフィン(デスじゃない)を食べている女神先輩。オーガニックにはそれほど興味がないようだ。


「でもさ、それにしたってなんだか急に視線が増えた気がするの。嫌な視線ってわけじゃないからいいんだけど、ソワソワしちゃって。ねぇ、雪兎君。何か知らない?」

「知ってますよ」

「知ってるの!?」

「はい」


 女神先輩が愕然としていた。そりゃあ、知ってるに決まっている。かけていた増税眼鏡を外し、女神先輩をチョイチョイと手招きする。


「ちょっとこっちに来てください」

「ん? なにかあるの?」


 非常階段から立ち上がり、クルリと裏手に回る。階段下のスペースは、カラーコーンなどゴチャゴチャと物置になっていたが、その中にひっそりと設置されている目的の物を指差す。


「あれが原因だと思われます」

「……あの祭壇みたいなの? ま、まさか!……ひょっとしてここって本当に何か祀ってたりする? やだやだ、ちょっと怖くなってきちゃった!」


 女神先輩がプルプル震えていた。仲間になりたそうだ。確かに、この場の守護霊こと女神先輩としては管轄地のバッティングが気になるところだろう。なぁに、心配は要らない。


「安心してください。あれは俺が設置したんです」


 簡易的な祭壇の前には、ミニお賽銭箱も設置されている。振ってみるとジャラジャラと音がした。密かに盛況のようだ。ちゃんとミニ本坪錫もついており、紐を揺らして鳴らすこともできる。ご神体も飾ってあるんだよ。


「霊場ですからね。ちゃんと祀っておかないと」

「私じゃん!」


 ご神体を見て女神先輩が地団駄を踏んでいた。ま、マズい。女神先輩を怒らせたら祟りが起こるかもしれない。


「すみません! 次はもっと完成度を高めたご神体を作るので、どうか今日のところはこれで勘弁してください!」

「そういう問題じゃなーい!」


 ん? じゃあ、どういう問題?

 祭壇を破壊しようとする暴挙と止めつつ、女神先輩を宥め続けた。


「もー! ほんとにもー! 君って子は! 君って子は!」

「よく言われます」

「言われちゃダメでしょ!」


 非常階段に戻り、木彫りのご神体をしげしげと観察しながら、俺を叱ってくる女神先輩。ありがたやありがたや。


「それにしても、いつの間にこんなの作ってたの? 妙に精巧だし」

「やっぱり、女神というからには箔も必要かなって。名前倒れになりますし。なので、ここで願掛けすると、女神の御力によって願いが叶うかもしれないという噂をこっそり流しておいたんです」

「申し開きできないほど君が悪の元凶じゃない!」


 女神の祭壇は、逍遥高校七不思議の一つに数えられている。七不思議のうち、3つは俺が開発したものだ。残り4つもそのうち開発予定なのでもう少し待って欲しい。


「それにしても、木彫りだからいいけどさ、着色したらフィギュアみたいだね」

「最初はそれも考えたんです。ほらこれ。ガレージキット女神先輩」


 ガサゴソと鞄からガレージキット女神先輩(未塗装)を取り出す。


「よくよく考えたら、これに色を塗ってしまうと、下着とかもあって不敬かなって」

「不敬の段階が遅すぎるの! どうしてもっと早くそう思わないかな!?」


 悠璃さんフィギュアを作るのとは訳が違う。悠璃さんフィギュアは悠璃さん公認だが、女神先輩は女神先輩版権許諾を受けなければならない。木彫りが限界だった。


「まぁまぁ。貯まったお賽銭あげますから。ほら、こんなに。女神先輩が稼いだんですよ。これでピロシキでも買ってください」

「え、こ、これ。もらっていいの?」

「他に誰がいるんですか。女神先輩がこの祭壇の主神ですよ」

「でも、こんなのおかしいよ。だって、お金を稼ぐって、もっとストレスが溜まってイライラして不快で、楽をして稼ぐと品性下劣な港区――」

「ちょっと黙りましょうか」


 不当な偏見をバラまくのはNG!

 だいたい港区を名乗ってる女子は港区に住んでないし……。


「これが不労所得です。いや、待てよ? 女神だから歳を取らない? なら、不老所得?」


 こういうものは、本当に願いが叶うかどうかは問題じゃない。願掛けすることで、悩みを打ち明けたり、背中を押したり、或いは、決意を固めたり。寄り添うことで、メンタルにポジティブな影響を与えることが目的だ。


 女神の祭壇は、そんな憩いの場になって欲しいと作ったものだ。

 神頼みというが、一人で抱えきれないなら限界を迎える前に吐き出すことも必要だ。


 なにせこの学校は妙に悩んでいる生徒が多いからな。女神でもないのに、しょっちゅう俺のところにお悩み相談が持ち込まれるのが、その事実を証明している。


 女神の祭壇があることで、生徒たちは気持ちが軽くなり、俺は面倒事が減り、女神先輩の人気は飛躍的に高まり、更に女神先輩は労働報酬を得る。まさに誰も損をしない一石四鳥のアイデアなのだった。


「不労所得ってしゅごい……。はぁ、将来、働きたくないなぁ」

「日本のジェンダーギャップが低いのは、そういう労働意欲の低い女性が多いからでもあるんですよ! 若いのに将来の夢は専業主婦みたいな舐めたこと言わないでください!」

「なんで私が怒られてるの!?」



 女神先輩はみっちりお説教しておいたので安心してほしい。

挿絵(By みてみん)


11/25にトラ女子4巻発売します!

〓謎の妖怪や陰陽師が跋扈する地獄の宴が開幕!


浴衣姿の氷見山さんと灯凪ちゃんが目印です★★★

胸囲的な格差社会が広がっていますが、灯凪ちゃんもまだまだ成長期なので今後にご期待ください。


皆様のおかげで4巻まで来ました。

ありがとうの歌を唄っておきます。ボエー♪


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


特典SSの紹介をしていきます!

メロンブックスさんとゲーマーズさんでは有償特典もあるんだって!(๑•﹏•)


✅メロンブックスさん


『夏祭りはエンゲージリングと共に』

・氷見山さんと夏祭りに行くことになった雪兎君だが、また不用意にフラグを立ててしまう


✅アニメイトさん


『ゆきとくんがころんだ』

・突如始まる闇のバトル。響き渡る悲鳴と絶叫。だるまさんがころんだを模した地獄の遊戯が幕開ける!


✅とらのあなさん


『釈迦堂の使用武器:斧』

・斧使いと化した釈迦堂。鬱憤を爆発させるべく無双する?……するかな?


✅公式通販さん


『ワキが甘い女・神代汐里』

・何かと脇が甘いことに定評のある神代。本当にワキが甘いのか疑問を持つ雪兎君。


✅ブックウォーカーさん


『特典で消化される女神先生の悲しき水着回』

・イケてる残念美人女神先生。うっかり特典送りになってしまう。


✅ゲーマーズさん


『藤色の決意』

・ゲーミング幼馴染こと灯凪ちゃんが浴衣に込めた決意とは……?


✅特約店さん


『イケメンの考え休むに似たり』

・恋に悩むレオンさんに相談される雪兎君。事態は斜め上の方向に進みWデートへ発展する



挿絵(By みてみん)


【次にくるライトノベル大賞2023】にノミネートされました!


いつも応援ありがとうございます。

3作品まで投票できるので、よろしければ是非投票お願いします!

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