中年おやじは死んで戦わされる⑤
「おーい!終わったから起きていいぞ!!」
「やっとか~、この態勢疲れるんだよな」
「久々に空の民と話せて良かったな。」
「いいなー。俺なんか隅っこで1人、矢が刺さったふりしてて寂しかったよ」
「お母さん、僕の演技見た?すごいでしょ!」
死んだはずの兵士や村人が次々と起き上がっていく。服は血まみれ、頭や胸には矢が刺さったままだ。
(ん?、ん?んんんん?ちょっと待て。死んだはずだよな、お前ら。ゾンビ?)
まさか生き返るはずがない、あんなに悲惨に死んでいったんだ。のろのろと近寄っていけばこちらに気づき話しかけてくる。
「おっ、テッラ様の獣だ!なんだ心配してくれるのか??」
「大丈夫だ、俺らも空の兵も誰も死んじゃいないぜ。いつもこんな感じだ、大抵本気になるのはシェル様とテッラ様だけだな!」
「お前、怪我してるじゃないか大丈夫か?」
(い、いぎでてよがっだぁぁあ!!)
「なんだ、なんだ。痛いから噛むなって!!」
◇
とりあえず誰も怪我もなければ死んでいなかった。モンスター共の喧嘩はしょっちゅうあるようで、そんなことで死んでたまるかと戦っているふりをしているらしい。強いて言えば被害があったのは俺だけだった。
その俺は今、角モンスターと戦っている。
「おい、怪我の手当てをしてやる。隠れていないで出てこい」
(バカ野郎!!手当てと称して傷口に塩を塗る気だな!!手に持ってるのって完全に塩だよね?というか、さっき塩って言ってたからね!)
「これを塗ればすぐに治る。遥か昔、人間の世界があったときこの塩というものを塗っていたらしいぞ。傷口に塩と書物に記してあったからな。」
(いやいや、バカなの?えっバカなのかな?それはことわざって言うんですよ、書物に記してなかったの?)
「民も兵もみなこれを塗っているのだぞ。神であるこの私もな。」
(わーお、みんな傷口に塩を塗ってるんだ。そりゃ強くなるわけだ、でもな俺にとっては拷問でしかないからやめてくれ!!まてまて、神って言いました?このモンスター神なの!?)
攻防の末、甲羅を剥がれそうになりやむ無く塩の拷問をうけた。この時俺はまだ気づいていなかった、俺の体が光り輝いていることを。
「む、お前。薬のお陰で以前より輝いているな」
(この自称神様は何を言ってるんだ。甲羅だろ、光が反射してんだよ。って、えええ!!!!俺すごい光ってるけど、死ぬの?死ぬときが来たの?)
俺の体は輝きを増し、目の前が眩しくて何も見えなくなった。うっすらと目を開ければ、俺はカメではなくなっていた。
いや、正確に言えばカメだ、緑の全身タイツに甲羅を背負ったキモいおっさんに変わった。
「きもっ!!気持ちわるっ!!全身タイツだろこれー!!!!」
田中まもる 中年サラリーマン(亀)
全身タイツ亀人間 進化 Lv,100