中年おやじは死んで戦わされる④
(お前の相手は俺だ!俺だけをねらえ、他人を傷つけるんじゃねぇー!!)
羽モンスターは背中に付いた大きな羽で空中へ飛ぶと一瞬で俺との間合いをつめた。
瞬発力で敵うはずもなく、ヤバいと感じ殻に閉じ籠った俺は意図も簡単に壁に叩きつけられた。
(ひぃ、なんとかギリ間に合った。もう少し引っ込むのが遅かったら完全に頭ぺしゃんこだった!!)
ふわりとした浮遊感に甲羅の外をちらりとみれば、角モンスターか俺を抱えていた。どうやら助けてくれるらしい。
「邪魔をしないでください。私はそれを殺しにきたのですから、それさえ殺せれば帰ります!」
「これは殺させない。俺の物だ」
(なに!?この乙女ゲーム的展開!!おっさんときめいちゃうだろ?なんてバカなこと言ってる場合じゃなかった!)
なんとか勝つ方法がないかと周囲をみれば、柱に支えられているものの天井が崩れかかっていた。
角モンスターの腕からゴトリとでると、床を滑りながら柱に体を勢いよくぶつけた。俺が腕から出たことに驚いていたが、羽モンスターの攻撃を止めるのに精一杯で引き留める余裕はなさそうだった。
「ふっ、あの獣はどこを攻撃しているのです?自ら死ぬようですね。」
「よそ見をしている暇はないぞ。」
ガラガラガラッ
「なにっ!!」
俺に気をとられたあいつは、攻撃をもろにくらい体制を崩した。運良くアイツの倒れたところに天井が崩れ羽モンスターは瓦礫に埋もれた。
「くっ、私としたことが。不意を突かれましたね。しかしあまり痛くないのは、、」
(いやー、焦った焦った!柱を倒したら俺ごと吹っ飛ばされて気づけば羽モンスターの上にいるとはな。勝つどころか何か助けてない?)
「どうして助けたのですか?私はあなたを殺しに来たと言うのに」
何故か俺は埋もれた羽モンスターと一緒に瓦礫に埋もれていた。しかもアイツの上で庇うように。
「あなたも、テッラ同様にお人好しと言うことですか。」
瓦礫から這い出ると、角生え人間もどきが焦ったように駆け寄ってきた。
「おい、大丈夫か!?俺の獣を返せ!!」
「ええ、返しますとも。不本意ながらこの醜い獣者に救われてしまいましたからね」
「血が出ている、すぐに手当てせねば。」
「わたくしはもう帰ります、興ざめしました。さぁ、みなさん帰りますよ」
戦いは終わった。多くの者が傷つき死んだ、俺のせいで。結局アイツを倒せなかったし、罪悪感で胸が傷んだ。