中年おやじは死んでリクガメになる①
50代独身。中年のサラリーマン、ちなみに課長
「あ、新商品が入ってる。これ買ってみるか」
仕事終わり、いつものようにコンビニで弁当とビールを買い、腹減ったーなんて思いながら横断歩道を渡る
思えば今日は朝からついてなかった。
玄関を出れば上から鳥の糞をくらい、休憩中はコーヒーを溢され、使っていたPCは故障。あと、今まさに車にひかれた。
あーいてぇ、これ死んだな。。俺
享年56歳 田中まもる 死亡
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大地の神『テッラ』空の神『シェル』がこの世を納める時代。
別段平和なこの世界でわざわざ戦争する必要はないが、二人の神はとにかく仲が悪い。お互い何かと張り合い文句をつけては戦争だ!と騒ぎたてていた。
毎度それに付き合わされる兵と民は、ほとほと疲れはて、適当に戦っているふりでもしておこう!ということになった。
今日も朝から宮殿が騒がしい。
「さぁ見なさい、私の獣者を!!なんと凛々しく立派なことか!ねぇ、テッラ」
「ほざけ、ただの小鳥ではないか。よくそんなもので自慢できたな。」
「な、なんですって!?大きな美しい翼に鋭い爪、そして高貴なこの瞳!!これがわからないなんて、あなた神として終わってますよ!そういうあなたの獣者はどこに?」
「ぐっ、獣者は、今ここにはいない。だが!!お前が次に来た時は必ず会わせてやろう。きっとお前の小鳥が虚しく思えるぞ。」
「そうですか、それは楽しみですねぇ。では今日のところは、お暇します。」
テッラは獣が嫌いだ。獣の匂いも毛も、何もかもが気にくわない。しかしシェルにああ言ってしまった手前、獣者を用意しなければならなかった。
「おい!そこのお前、獣者を連れてこい。毛も牙もなく、匂いのしない獣だ。」
「承知いたしました!!」
多くの獣には体毛や牙があるが、ないものも探せば見つかるやも。しかし、匂いもとなると話しは別だ。どうしたら良いものか困り果てる。
◇
(体が重い。全然うごかね、、行くなら天国にしてくれ)
やっと視界が広がる、辺りは何もなく地面が延々と続いている。
視界の低さから、どうやら俺は地に這いつくばってるみたいだ。
(あー、地獄だ。これ完全に地獄だわ。)
(体もうごかねぇし。。ん?前から人っぽい影が、、おーーい!!そこの人、ちょっと助けてくれ~!!)
兵士のような格好の男はズカズカ近寄ると俺を持ち上げた。
(えっ、ちょっとちょっと!!起こしてくれるだけでいいんですけど!というか、どんな持ち方してるの!?ほふく前進みたいに地面すれすれで進んでますけど!!)
虚しくも声は届かず俺はどこかへ連れていかれた。