二人のあり方
放課後、わたしは立ち上がった蘭に謝った。
「今日は悪いわね」
「いや、書類の確認だけだからな。会長のお前がいなくても大丈夫だ。それを分かっているからこそ、兄上も誘ったんだろう」
しょっちゅう生徒会室に顔を出しているからな、あの人。
「じゃあゆっくり楽しんで来いよ」
「分かった。ありがとうね」
蘭を見送り、わたしは背伸びをした。
ぼんやりと窓の外を見ると、委員会や部活のない生徒達は帰宅する様子が眼に映る。
友達と帰ったり、一人で帰ったりする中で、ちらほらと恋人らしき2組の男女がいる。
楽しそうに、嬉しそうに二人より添っている。
「良いな…」
あんな輝く笑顔、わたしは浮かべているんだろうか?
「おっまたせー、魅桜」
…少なくともこの人の前では、浮かべていないだろう。
「そんなに待っていないわよ」
と言うが、すでに教室にはわたししかいない。
「ん? 何見てるんだ?」
兄はわたしがぼ~っと外を見ていたことに、興味を示したらしい。
わたしの元まで来ると、窓の外に視線を向けた。
「別に何かを見てたってワケじゃないけど…青春って眩しいなぁって思って」
「アハハ。まあいろいろ大変だけど、楽しいよな、青春」
輝く兄の笑顔のせいで、わたしには暗く冷たい影ができる。
「あっそ…。じゃあ行きましょうか」
「だな」
あっさり興味をわたしに戻し、兄は微笑んだ。
車に乗り込み、兄が移動場所を告げた後、わたしは疑問を聞いてみた。
「今日、麗華さんから放課後デートに誘われなかった?」
「あれ? よく知っているな」
当たったよ…。
自分で聞いておいてなんだけど、当たるとは思わなかった。
兄も心底びっくりしている。