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蘭は悪びれもなく笑う。
だから怒りを感じない。
こういう付き合いやすさが、心地よかったりするからだ。
「でもさぁ、実を言うと、麗華さんもいつまで持つか、心配なんだよね」
わたしは周囲に声が聞こえないように、呟いた。
「兄上の最高記録は?」
「確か…四か月。一季節持っただけでも、奇跡だと思ったわ」
兄は出会いと別れを激しく繰り返す人だった。
それこそ恋人の影は、兄が中学に入った頃からあった。
しかし現れては消え、消えたと思ったらまた新しいのが現れ…。
その桁数、おそらく2ケタになる。
けれど別れ方は良いらしく、恨まれてはいないのがスゴイと思う。
もっとも真似したくはないが…。
「今はどのぐらいになった?」
「えっと、一か月いったかな?」
麗華さんの方が告白をしてきたらしい。
忙しい生徒会を終えて、恋愛に打ち込みたくなったんだろうな。
その時、兄はちょうどフリーだったものだから、すぐにOKしたらしい。
まっ、あの人は来る者拒まず去る者追わず主義だし。
「未だに学校一の美人と言われる彼女だ。もしかしたら婚約までいくかもしれないな」
「どうだろう? でも兄は未だにシスコンが改善されていないし、また終わるかも」
「兄上のシスコンはすでに病気だな」
「治す薬はないのかしら」
「兄上を夢中にさせる女性が現れれば治るかもしれないが…それは魅桜だから、意味ないな」
「簡単に言ってくれる」
蘭とは小学生の頃からの付き合いで、兄のシスコンぶりもよく知っていた。
「あ~あ。こんなんじゃ、いつまで経っても彼氏なんかできない」
「今は無理だと思え。ただでさえ忙しい生徒会の仕事があるんだからな」