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そのことがありがたい。
「ふう…」
2年の校舎に入ると、ようやく気が抜ける。
「あっ、生徒会長、おはよう」
「会長、おはようさん」
「はい、おはよう」
3年がいる所ではネコを被っているが、流石に同学年だと緊張しなくて済む。
同級生達も兄がいないと気軽に声をかけてくれるから、良いのよね。
…あの人、何気に礼儀にうるさいから。
教室に入り、窓際の一番後ろの席に座る。
「おはようさん、魅桜」
「おはよう、蘭」
黒髪のショートカットヘア、そして長身の欄は一番の親友だ。
宝塚の男役が似合いそうな彼女だが、意外に家庭的。
時々手作りのお菓子をくれたりする。
「今朝も兄上と麗華さんとの登校か。気が休まらなかっただろう?」
「ええ、おかげさまで。笑顔が張り付く」
自分の顔を両手で揉みながら、眉を潜める。
「別に兄のことも麗華さんのことも嫌いじゃないんだけどさぁ。苦手なんだよね」
「それ、麗華さんはともかく、兄上は悲しむぞ~」
前の席に座る蘭は、とても楽しそうに言う。
「悲しんだって一瞬よ。放課後、出掛ける予定あるし」
「相変わらず妹愛が強い兄上だな。麗華さんが嫉妬するぞ?」
「あ~…。あるかも」
麗華さんは1年の時、この学校のミスコンで優勝した人だ。
それなりにプライドも高いだろう。
わたしの前では笑顔を絶やしたことはないが、それも裏ではどうだか…。
「まっ、お前に何かしようものなら、兄上に嫌われるだろうからな。何もしてこないだろうが、それはそれで恐ろしいものだ」
「蘭…アンタ、おもしろがっているでしょう?」
「バレたか」