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「じゃあオレが結婚しなきゃ、お前も結婚しないってことだよな?」
「はあ?」
「よしっ! ならできるだけ、結婚しないようにしよう!」
…言っていることが無茶苦茶です。
我が兄ながら、バカだと思う。
この妹バカを抜かせば、割と完璧な人なんだけどな~。
妹のわたしから見ても容姿端麗、成績も優秀で、カリスマもある。
両親は出来た兄を心から愛した。
もちろん、わたしのことも大事にしてくれる。
だけど兄のは…少し、重い気がする。
両親の仕事が多忙で、近くにいないせいだとも言えるんだけど。
せっかく彼女がいるんだから、もうちょっと向こうへ行ってほしい。
「なあ、じゃあ映画とかにするか?」
「はあ…。もう買い物で良いわよ」
「よしっ。それじゃあ授業が終わったら、教室で待っててくれ」
「はいはい」
うんざりしながら、会話を続けること数十分後。
学校に到着。
わたしは運転手に開けてもらったドアから、とっとと脱出した。
この密閉空間は、結構キツイものがある。
しかし兄は険しい表情をして、なかなか出てこない。
「あ~あ。魅桜と離れたくないなぁ」
「学校にいる間ぐらい、ガマンしてよ。放課後は一緒に買い物に行くんだから」
「はいはい。じゃあそれを糧に、頑張りますか」
渋々といった様子で、車から降りて歩き出す。
…ったく。手間のかかるシスコンめ。
「ねぇ、一応聞いておくけど、麗華さんとはうまくいっているのよね?」
「まあな。アイツ、オレにベタ惚れだし」
そう言って得意げに笑う兄。
しかし自意識過剰とは言えない。
何故なら、本当に彼女は兄にベタ惚れだからだ。