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「あっ、もちろん外見だけじゃないぞ? 一度言い出したら聴かないところとか、結構ワガママなところとか、腹黒いところも最高だよな!」
…それには激しく反撃したい。
けれど何を言っても無駄なことを、わたしは知っていた。
何度も反撃しても言い方は直らないので、すでに放置&悟りに入ってしまっている。
「さっ、できた。相変わらずキレイな長い髪だよな」
さっき兄が言った通り、わたしの髪は天然で茶色い。
色素が薄いせいもあり、光に当てると透明感があるのがちょっとした自慢だった。
しかしわたしの背後にもう一人、同じ髪を持つ人間が存在している。
「魅桜の長い髪ってホント綺麗だよな~」
うっとりと背後で囁かれると、ぞわっ!と背筋に寒気が走った。
「なっなら櫻美お兄様も、伸ばしたら?」
「アッハハ。オレにロングヘアは似合わないよ」
軽く笑い飛ばし、わたしの両肩をポンッと叩いて兄は離れた。
「よし、じゃあ学校へ行こうか」
「ええ」
兄は当然のように、わたしの分のカバンも持って部屋を出た。
…こういうことは普通、執事かメイドにやらせるのに。
「どうした? 来いよ」
「はいはい」
扉を開けて待ってくれている兄の元に、わたしは向かった。
学校へは車で行く。
これは校則で決まっていることだった。
「なぁなぁ、帰りに買い物に行かないか? お前に似合いそうな服、この前見つけたんだ」
「放課後は麗華さんと出掛けるんじゃないの?」
「んっ? 何でアイツと?」
思いっきり不思議そうな顔で首を傾げられても、こっちが困る。
「何でって、麗華さんとお兄様は恋人でしょう?」