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S3

世界は変わるダケ

作者: 六藤椰子〃

 突然にしてーいや、もしかしたらずっと前から侵食は始まっていたのかもしれない。()()は行き場を無くした菌が世界各地の森の方に避難するかのように大量発生し、とあるものは肥大化し、またあるものは大量に増殖した。

『人々の住処を清潔にし過ぎたかもしれん』ある学者は言った。

またある学者は、「これは人類に対する警告かもしれない」と熱弁した。

 問題は深刻化した。ーと言うのも、キノコが森林を侵食し尽くしたからだ。そう、あのキノコだ。こうなるとは誰が予想しただろうか。

かといって悪い事ばかりではなかった。深刻な食料不足になりつつあった人類は、全体的にキノコを見直す事にして、ある国々ではキノコ料理が盛んとなり、その国では主食でさえもキノコに変貌しつつあった。

海の生物は今や消えたも当然であり、代わりにと言ってもなんだが、日本では独特の製法を編み出して生で食すキノコ寿司なるものが世界中でブームとなったのだ。

 いわゆる私はキノコ職人なのである。キノコの握り寿司、通称『握り茸』を作って販売するのも資格が必要にもなるほどだった。

理由として挙げるならば、キノコには毒を含むものもあり、お客さんに安全かつ安心に食べてもらうには必要でもあったからであり、消毒する方法もキノコによってはその処方が変わってしまうからだ。

世界中に繁殖したキノコは、国によって大きさや味が違いがあったり、形も色合いも全然違うものが多く、今ではキノコは立派な食文化のひとつなのである。大きなキノコは、大きければ大きいほど魚類や豚などの動物のように、()()のようにとろける部分があったり、逆に全部位が変わらない食感だったりして、キノコにも様々な部位が世に認められるようになり、この事も世界中で広まる事となった。

 キノコは幾ら採っても菌さえあれば増え続けるため無くならず、ある意味食料危機の下にいた人類にとっては救世主のようにも感じられた。

日本人はどの国よりも先駆けて全身がとろ部分のキノコに栽培する事に成功した。世界各国も真似ようと、各地でオリジナルの栽培方法を編み出すようになり、ブランドもののキノコでさえも市場に出回るようになった。

また、毒キノコは大変危険なものから腹痛で棲むような程度のレベルのものまでと様々な種類があり、裏社会では麻薬として、また表の世界では下剤などの薬として、広く出回るようにもなった。

強い毒性のキノコには幻覚作用があったり、依存性になりやすくもなる事から、それら毒性の強いキノコは各国で全面的に禁止となり、麻薬のように所持しているだけで捕まる国もあれば、国自体が認められていて、他国のマフィアなどに高値で売買する事もある。

食料危機に対する救世主のようでもあり、その反面は悪魔のようでもあった。ー牧師が言うには、神からの贈り物であり、または悪魔からの贈り物なのだ。ーそういった事などを考慮して、自国では一切栽培及び製造せず他国から輸入しているだけの国々さえある。

 人々の食文化は大きく変わった。今や豚や牛など、肉類は高価なものになりつつある。

私は握り茸の職人ではあるが、以上の事は学生時代に歴史の教科書などでしか読んだ事はないのだが、言える事があるとすれば、キノコは私達にとっては欠かせない大切な食材であり、これから栄養サプリメントなどが主流になろうとも、ずっと変わらない神からの贈り物である、と考えたいものだ。

生物は絶滅する傾向になりつつある、私はこれからも握り茸の職人として、一生懸命生きていくつもりだ。

ニュースでキノコの特集が放送されていて、構成してみた作品です。

もし、こうなったら…と言うのは尽きない妄想ばかりです。

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