姉のからかい
「あんた、同じ2丁目の永嶺さんの娘さんと付き合ってるんだって?」
大学から帰るなり、母親にいきなり言われた。一貴は思わずこけそうになった。
「三陽から聞いたわよ。全く、付き合ってる娘がいるなら、ちゃんと紹介しなさい。3日前に永嶺さんとそんなことも知らないで普通に話しちゃったのよ。恥ずかしいったらありゃしない」
(三陽の奴、バラしやがって)
一貴の姉は意外と口が軽いのだ。ちゃんと口止めしてばよかったと後悔した。
「でも、確か永嶺さんの娘さんって、中学・・・」
「こむぎの散歩行ってくる」
鞄を放り投げ、こむぎを抱えるように外に出た。母親が何か喚いていた気がしたが黙殺した。
葉梳姫と合流した一貴は母親に付き合っていることがバレたことを話した。
「・・・・・」
葉梳姫は微妙な笑いを浮かべていた。
その下で、こむぎとそらが体をぶつけ合いながら、主導権争い(?)を繰り広げていた。
「いずれバレるんだから、早いに越したことないじゃない」
いきなり背後から声がしたので一貴はびっくりしたように振り帰った。
「三陽姉」
姉の三陽がいつの間にか背後に居た。一貴の隣りにいた葉梳姫が身構えた。
「この間振り、葉梳姫ちゃん。大丈夫だって、一貴取ったりしないから」
三陽の言葉に葉梳姫は明らかに狼狽え、一貴の後ろに隠れるようにTシャツの袖を握った。
(くーっ!お仲がよろしいようで)
頃合いを見図って、一貴が葉梳姫に向き直った。
「ええと、まだちゃんと紹介してなかったね。これ、俺の姉貴の白石三陽。彼女は・・・知ってるかと思うけど、同じ2丁目に住んでる永嶺葉梳姫さん」
「姉の三陽です。この前はごめんね」
三陽は頭を掻きながら謝った。
「お姉さん、こんばんは」
葉梳姫はたどたどしく頭を下げた。
「お義姉さん!?」
どう変換されたのか、三陽の思考は予想の斜め上を逝っていた。
「な、なに!この可愛い生き物!!!」
あろうことか、いきなり葉梳姫に抱きつく。
「え?え!え!?」
葉梳姫はいきなりのことにフリーズした。
(好きになるツボが同じなんて、やっぱり姉弟なんだな)
一貴はとほっこりとした。
葉梳姫と別れ、自宅に戻ると、先に帰っていた三陽がごくごくとビールを飲んでいた。
「送り狼にならず、ちゃんと帰ってきたようね」
一貴はバカバカし過ぎて相手にせず、こむぎを抱き上げて風呂場に向かった
「一貴」
「ん?」
「この前の埋め合わせじゃないけど、ちゃんとフォローしておいたから感謝しなさいよ。これで、この前の『借り』はなしよ」
三陽が謎めいた言葉を吐いた。




