犬の散歩(手繋ぎデート)
お互い都合がつかなかったり、大雨・大風でない限りは、犬の散歩は欠かさなかった。葉梳姫の自宅近くの十字路で落ち合い、手を繋ぎながら犬の散歩をするのがデフォになっていた。二人きりでデートすることもあるが、やっぱり二人で犬の散歩するのが一番しっくりした。
最近の葉梳姫はプリプリしている。クラスメートや男子に彼氏がいることが知れ渡った途端、コクられることが多くなったようだ。
「彼氏ができた途端、コクられるのが多くなるのって何の嫌がらせ!」
嘆くように葉梳姫は言った。一貴は苦笑するしかなかった。
(ま、イケメンでもない俺を見たら、中坊の中には『それなら、俺でも』って奮起する奴もいるんだろう)
一貴は冷静に分析した。勿論、気が気でない。
葉梳姫がチラッと一貴の様子を窺った。そして、素知らぬ振りで手を恋人繋ぎに変えた。
「ちゃ、ちゃんと、彼氏いますって断ってるから」
恥ずかしそうに言った。気持ちを読まれたらしい。一貴も修行が足りないなと思った。
最近、葉梳姫と別れ難い。葉梳姫を自宅まで送って行っても玄関の前で愚図愚図していて、葉梳姫の母親に見つかり、家に寄ってってと言われるが、犬を理由に退散していた。大学生である自分が中学生の娘の実家に上がるのは、一貴的にはまだ敷居が高いと言うか、倫理的に気が引けた。葉梳姫の全面的な了解を取っていると言っても、こればかりは簡単にはいかなかった。
自宅に帰り、風呂と食事を済ませ自室に戻ると、LINEが入っていた。葉梳姫からだった。
葉梳姫曰く、『菜乃が辻村に中学生は対象外と言われ、逆に奮起して辻村にアタックしている』そうだ。
『一応、彼女いるんだけど』
『それも知ってて、この状態』
(これだからイケメンは・・・)
一貴は苦笑した。




