サードデート
ウィンドーショッピングしたり、喫茶店でお茶を飲んだりする。
一貴と葉梳姫が正式に付き合うようになって、初めて隣接する懸吏駅前のショッピングモールでデートをした。頭にはベージュのキャスケット、トップスはサックスのやや緩めの薄手のスリーブセーター、ボトムは濃いグレーのいつもより細目(?)のワイドパンツ。下手したら、大学生ぐらいに見える。自分に合わせてくれたのは合わせてくれたのは嬉しいが、普段より体にフィットしたファッションのせいか、すれ違う男の視線を隣りで歩く一貴ですら感じた。特に人通りの多い懸吏駅前では人の目を惹いた。
一貴が帽子はベレー帽の方が似合うんじゃと聞いたら、キャスケットの方が鍔がある分表情が隠せると如何にも葉梳姫らしい答えが返ってきた。
今日は犬の散歩をそれぞれ母親や姉に任せていたので、心置きなく二人で居られる。
ウィンドーショッピングしたり、喫茶店でお茶を飲んだり、まったりと午後を過ごした。
「また、ペットショップ行きたい」
「そうだね」
ファーストデートの場所でもあり、犬の縁で付き合い始めた二人には格別の想いがあった。
結局、家路についたのは、日が暮れてからになった。
一貴は家まで葉梳姫を送った。
「それじゃあ」
「うん」
一貴と葉梳姫を軽くキスをした。
別れの挨拶は言いながら、二人は手を離せず、なかなか別れ難かった。ずっと午後一緒に居たにも拘らず。
その時、玄関のドアが開いた。二人は慌てて距離を置いた。
「葉梳姫ちゃん?」
女性の声が聞こえた。葉梳姫の母親らしい。葉梳姫の姿を認め、安心したような顔になるが、見知らぬ男を見て首を傾げた。表情も首の傾げ方も葉梳姫そっくりだった。
「あら・・お友達、かしら?」
何故か意地の悪い顔をされた。
「あ・・・白石一貴と申します」
一貴は頭を下げた。二人はばつが悪そうに視線を交わした。
「白石・・・ああ、三陽ちゃんの弟さんね」
元々、3月までは犬の散歩は葉梳姫の母親と三陽がメインでやっていたのだ。近所ならばお互いに見知っていても不思議はなかった。
「ああ、あなたがねえ」
葉梳姫の母親は含み笑いをした。
「お母さん、もういいから!」
焦れた葉梳姫が母親の背を押し、家の中に押しやった。一旦ドアが閉まりかけ、また開いた。
「じゃ、じゃあ明日ね」
葉梳姫がドアの隙間越しにちょこんと顔を出して笑った。一貴は応えるように軽く手を振った。




