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火系の魔法使い

【火系の魔法使い】


砂漠の国での生活を諦めたとはいえ、自分が撒いた目の前の惨状を放置して良い理由にはならない。


元の世界ではそうだったので、この世界でもそうなのだろうが、モンスターの死骸の放置は、他のモンスターを呼ぶ。


そのためきっちり燃やすか、埋める必要がある。

ちなみに砂漠に埋めても、砂の中を動けるモンスターが殆どなので意味が無い。


「このまま放置してたら、次から次へとモンスター来るよね」


既に次から次へと、地中をモンスターが押し寄せるのが感じられる。


仕方ないからと、強力な魔法を発動させる。


「アースバースト マキシム!」


自分の周囲の土を爆発させるかのように打ち上げる魔法を、最大出力で発動。

大抵のモンスターなら粉砕されるが、土の耐性が高いため多少のダメージだろう。


スキルの『魔法効果補正』と『魔法制御』を強めに設定し、相乗効果もあって、町ぐらいの範囲が、かなりの高さまで打ち上げられる。


「シューティングスター!」


流星を振らせる魔法を発動。


流星と入っても幾つもの石を、遥か上空に作り出し落とすだけである。


これもスキルの『魔法効果補正』と『魔法制御』の強めと、相乗効果もあって、かなりの大きさの、かなり数の岩が、かなりの速度で落下してくる。


どどどどどぉーん


物凄い破壊音と、衝撃が響き渡る。


周囲を見渡せば、クレータがそこかしこに出来上がって、モンスターの欠片も無い。


「これで問題ないかな? あっ、魔石はちょっと勿体なかったかな・・」


あれだけの衝撃である。魔石も吹き飛んでしまっているだろう。


すると視線の少し先に、きらりと輝く物を発見する。


「あれは・・、魔石かな?」


握りこぶし大ほどの、かなり質の良さそうな、まん丸の魔石らしきものを見つける。


「これが呂銀位になると良いんだけど・・」


魔石と思い込んでいた僕は、碌に『鑑定』もせず『空間倉庫』にしまって帰路に就く。






ギルドのスイングドアを開け、真っ直ぐに受付の女性の元へと向かう。


「土使いノバさん、こんにちは」

「どうも・・、職員さんにご報告がありまして」

「報告、ですか?」

「はい。僕の実力ではこの国でやっていくのは、難しいと思いまして、他の国に移ろうと思います」

「そうですか、それはそれは・・。(やっと気が付いたのですか?)」


先日の話から、内心は如何思っているのか分からないが、寂しげな表情を浮かべる。


「それで少しでも呂銀の足しにと、魔石の引き取りをお願いしたいのです」

「畏まりました。物はどれでしょうか?」


背負い袋から取り出す振りをして、『空間倉庫』から魔石を取り出す。


「へぇー、結構な大きさで、質も良さそうですね。しかもまん丸なんて見たことがありませんよ」


魔石は普通、角ばっていたり、楕円形だったりと、まん丸の物は見たことが無い。


「職員さんでも見たことが無いなんて、本当に珍しいんですね」

「世の中は広いと言う事ですね。きっと新しい、良い場所が見つかるって事だと思いますよ」


新しい門出にと、若干色を付けて買い取ってくれた。




職員からお金の入った袋を受け取り、冒険者ギルドを出る。


「結構高く買い取ってもらえたな。先ずは港町を目指そう」


『使徒の訪れ』を、お願いしておく事も忘れない。


土系の魔法使いにとって鬼門の、オアシスの町を後にする。




受付嬢は、ノバから買い取った魔石を、机の上にゴロッと置いておいた所、先輩職員が見咎める。


「ちょっと、あなた!」

「えっ!? どうしたんですか先輩」

「どうしてそんな貴重な物を机の上に放置して置くの! ッて言うか如何したの、それ!」

「・・貴重?」


自分の周りを見回すが、貴重な物は見当たらない。さしずめこの魔石ぐらいか。


「あなた寝ぼけているの? それ聖石でしょう」

「・・聖、・・石? ・・・えぇぇぇえぇぇぇー!?」


職員は素っ頓狂な声をあげて、ノバから買い取った魔石を見る。


聖石・・・。

最上級の魔石と言われながらも、全くの別物であり、別名は英雄の魔石とも、救国の魔石とも言われる。


魔石には、色々な使い方ができる。

例えば火の魔石でコンロになったり、水の魔石で好きな時に水を出せたり、火と水の性質を持つ魔石で、お風呂のお湯を創り出す事が出来る。


普通の魔石は大きさや質によって、性能や使用回数などが変わってくる。

魔石の質によって、複数個でバランスを取らなくてはならない上、不特定で壊れ、使用できなくなってしまう。


聖石は、高性能な上、無制限に使用できる。

この石が高性能な理由は、触れている魔石の性能を再現できる事である。

つまりお風呂を沸かすのに適した魔石のバランスをくっつけて置く事で、永久にお風呂のお湯が湧き続けるのである。


尤も、こんなちっぽけな使い方が、本来の使い方ではない。

癒しの魔石と水属性の魔石で、無限に回復薬が湧き出るのだ。

大量の強化の魔石と、たった一つのの火属性の魔石で、町一つ滅ぼす火を無限に放てる。

組み合わせの研究により、雷撃も冷気も生み出せる事が分かっている。


「そ、そんなぁ・・、どうしよう・・」

「一体何があったの?」


先輩職員に事の次第を説明する。


「不味いわね・・」

「知らなかったとは言え、一万分の一に満たない価格で引き取っちゃうなんて・・」

「違うわ。あなた肝心な事が分かっていないのね」

「えっ!? な、何が不味かったのですか?」


適正がモットーのギルドにあって、かなりの法外な金額で大問題のはずである。

信頼を失えばギルドとて成り立たない。それよりも大切な事などあるだろうか?


「お金もそうだけど。あなた、聖石がどうやって出来るか知ってる? 別名の由来を」

「聖石の別名? 英雄の魔石、救国の魔石ですか? ええ、当然・・・っ!? ああぁぁっ! そう言う事ですか!」

「理解出来た?」


職員は、もう半べそ状態である。


「聖石は、大量のモンスターを一瞬で殲滅すると、放出された魔素が一瞬で凝縮して生まれると言われているわ。殆どの場合、魔法使いしか生み出せず、最低でも最上級の魔法を使える事を意味する。」


魔法阻害領域で、最上級クラスの魔法を使える存在。


「大量のモンスターともなれば、天災であるスタンピードと呼ばれる大氾濫や大暴走の人々の危機が考えられ、それにたった一人で立ち向かった証が、英雄や救国と言う名の由来よ」


そんな事が、人の一生に一度あるかどうか。

ノバは、日常の中で生み出したのである。


「当然だけど、一生の内に何個生み出してもらえるかしらね」


そして一年に一個でも生み出してもらえば、それで当人もギルドも町も潤ってしまう。

多すぎるれば値崩れを起こすので、ギルドでしっかり管理し、オークションに掛ける。


不遇職と言う事で金の卵を、オアシスの町ギルドはみすみす手放したと言う事なのだ。


「お金に関しては、両者合意だから問題は少ないけどギルドマスターに報告を。全ギルドに謝罪通知をして、誠意のための差額を取りに来てくれる時がチャンスね」

「は、はい。すぐに取り掛かります!」


謝罪通知は、対象の人物が窓口に来たら、お詫びをして貰うお願いであり、ギルド職員としては自分の失敗を公にする、非常に恥ずかしい事である。


ギルドの信頼(金づる)を取り戻すべく、すぐにギルドマスターの元へと駆け込んで行く。






オアシスの町のギルドで、そんな事になっているとは知らない僕は、港町に付くと食堂で注文を待ちつつ、これからの事を考える。


「何よりも神様が来てくれないと・・、でも神様も忙しいだろうし・・」

「悩んでる? 悩んでるね少年」

「えっ!?」


視野が狭くなっていたのだろう、目の前に『使徒の訪れ』が来るまで気が付かなかった。


「あっ!? ミツカ様!」

「はぅっ!」


右手を胸に当て、目を固く目を瞑り、天を仰ぐ。

純粋に自分の来訪を喜んでもらえる事が、これ程までに喜びを感じるとは・・


「あのぉー、ミツカ・・様?」

「大丈夫、大丈夫よ!」


心配そうなノバの声にハッとして、向かいの椅子に腰かける。


「私を呼びだしたと言う事は、土系の魔法使いは上手くいかなかったのね?」

「す、すみません。偉そうなことを言ったのに」

「ノバ君。それはあなたはこの世界に来て日も経っていないし、仕方のない事なの。一発で決まればいいし、偽装の指輪で何回でもやり直しがきくわ」

「ありがとうございます」


一個人のちっぽけな人間のために、此処までしてくれる。神様は何と優しいのだろう。

そんな神様の事を蔑ろにしたあの国は、本当に何を考えているのか。


「で、悩みの原因は何かしら?」

「不遇職で暮らしていける程の稼ぎを得るには、かなり強い魔法が必要でした」

「ふむふむ。目立たない暮らしのために、目立ってしまうと言う訳ね」

「はい、そうなります」

「じゃあ、優遇職にする?」

「あの、まだパーティは組みたくないと言うか・・」


先の勇者パーティの一件は、根深く僕の心に棘として刺さっている。


「そうよね。となると不遇職で頑張るしかない訳だけど・・」

「はい。あまり良いアイデアがなくて・・」

「ふむ、ねぇノバ君。もう少し不遇職で頑張らない?」

「それは構いませんけど・・」


不遇職と聞いた途端、僕の顔が自分でも曇ったのが分かる。


「土系魔法って、些か攻撃手段が限定されるのよね。魔法と言いながらも物理系に近いし」

「はい、そうですね」

「じゃあ、攻撃系の魔法の不遇職だったらどうか試してみない?」

「あっ!? なる程。でも、そんな場所・・」

「ちゃんとあるから、こうやってお話ししてるんじゃない」

「それなら是非お願いします!」


確かに攻撃系の魔法の不遇職は試してみたい。

今の時点では、ソロで活動できる環境が望ましいから。


「この港町にも、就活神殿あるから転職してから移りましょう」

「はい。・・ミツカ様、神殿の名前違うみたいですけど?」

「・・ぇ? そうだったの!?」


神様も間違えて覚えているなら、僕が間違えていても仕方ないよね?と思う。




一旦、ギフト『無職の助け』で無職になり、就活神殿で火系の魔法使いになる。


ステータスは平均値のためか変化は無く、土系魔法(神級)が火系魔法(神級)になったぐらいである。


その町のギルドで、火使いBとして登録して、神様が紹介してくれた場所へと向かう。


無属性魔法での透明化した上で、飛行魔法で島をちょっと見てみる。


「・・・火山か。確かに火系魔法では厳しいよね」


火系魔法が攻撃に優れているからと言って、火属性の多い火山で通用するだろうか?

火山帯のモンスターの多くは、大抵の種が火系耐性を持っている。


一抹の不安を抱えながら、その島の港町から内陸にある町の傍へと降り立つ。




ギルドはこの扉で統一されているのか?と思わせるスイングドアを開けて受付に行く。


「はじめまして。今日この町に来た火使いノバと言います」

「冒険者ギルド、火山の国、登山口の町支部へようこそ」


冒険者ギルドの登録証を渡しながら話を切り出す。


「この町周辺に付いて教えていただけますか?」

「畏まりました、火使いノバさん。ご職業は・・、火系魔法使い? どの様なご用件でこの町に?」


怪訝そうな顔で、この町に立ち寄った用件を聞いて来る。


「師匠が、武者修行をと・・この国に来ました」

「正気ですか!?」


職員が叫びながら、受付台をバンバンと叩く。


「えっ!? 良く分かりませんが、どう言う意味でしょうか?」


砂漠の国でも聞いたと同じ事を言われるんだろうなぁ、と覚悟する。


「ご存じない様ですので。この島は魔法阻害領域に入っております」

「魔法阻害領域・・」


その後も、如何に魔法使いが不遇な土地でかるか切々と説明してくれる。


更に火山の国特有の問題というのを話してくれる。


「この島は、火系の魔法使いにはシビアな環境でしょう」

「・・火山と言うのが関係して・・ますよね?」

「その通りです。火山の外側のモンスターは、総じて火耐性を持っています」

「やっぱり・・」

「しかも火山の内側のモンスターに対しては、火系魔法はおやつでしかありません」

「・・えっ!? おやつ? ですか?」


火系の魔法がおやつとは、一体どう言う事だろうか。


「火山の内側のモンスターは、普通に餌を食べても成長しますが、火によって幼体から成体へと、また上位種へと著しく成長する種も居ます」

「・・えっ!? ま、まさか?」

「魔法阻害領域内での、弱々しい火系魔法は、モンスターの成長を助けてしまいます。結果、入口近くて強力なモンスターが現れると言う、た・い・へ・ん危険な事態が発生します」


不味い、不味すぎる。

自分の魔法で強力なモンスターを生み出した上、見も知らぬ人たちを襲うと言う被害を拡大させる可能性がある。


「あの・・、僕はどうしたら良いのでしょうか?」

「お師匠様との約束を、私たちがどうこう言うべき物ではありません。が、正直言って迷惑です」


痛烈な一言を浴びせられる。


「で、ですよねぇー」


神様・・。不遇職って、難易度が著しく高いんですけど?




とは言え、普通の町と同じ様に薬草採取の依頼はあるし、火山の外周であれば、耐性は高いが、火系の魔法で成長する事は無いらしいので、ちょっとの間頑張ってみる事にする。


火山の外側、登山口の町より海側は草木が生えていて、薬草の採取も可能である。

しかし薬草採取だけでは暮らしていけない。


火口までに居るモンスターの討伐や、珍しい薬草を採取しなければ生活する程は稼げない。


段階的にと考えて、先ずはセオリーの薬草採取から取り掛かる。

まあ当然と言うべきか、モンスターもちゃっかり現れる訳で・・


「ファイヤーボール!」


オーソドックスな魔法を、未調整でぶっ放す。


「・・やっぱり魔法の発動は遅いな」


無属性魔法(神級)による、物理および魔法防御の常時発動が無ければ、確実に死んでいただろう。


「射程も短いし、遅いから回避されるし、当たっても威力弱いし・・」


土系魔法で既に経験していただけに、驚きはかなり軽減されている。


「仕方ないか・・、スキルの『魔法効果補正』と『魔法制御』を使って、魔法阻害領域分と、火耐性分を調整してと・・」


その間はモンスターに好き勝手にさせておく。


「ファイヤーボール!」


振り向きざまの一発で、撃退に成功する。


「ふぅー、やれやれ。此処まで調整してやっとか・・。この先モンスターが強くなったり、火山の中のモンスターと戦うとなると・・」


魔法阻害領域の火山のモンスターを、火系魔法で倒すと言う噂が立つだろう。


「だめだ・・。呂銀を稼ぐついでに、どんな感じか見るだけに留めよう。それでオサラバという事で!」


即効の諦めモードで、次の町へ移る事に決めてしまうと、もう手加減なしと火山口へと向かい、立ち向かうモンスター達を焼き払う。


火山口に入ってモンスターを探す。


「どこかに丁度良いモンスターは・・、居た!」


『鑑定』でファイヤードック、火属性の犬系のモンスターと出る。


「ここは未調整のファイヤーボールで」


こちらに気付いていないファイヤードックに魔法をぶつける。


「あれ? 当たらなかった? いや、当たったよね?」


全く効果が得られない様で、こちらを向くとゆっくりと歩いて来る。


「ファイヤーボール! ファイヤーボール! ファイヤーボール! くっ!? 同一魔法複数発動技能発動! ファイヤーボール!」


魔法を連発し、終いには同一魔法複数発動技能間で使うが、モンスターは襲ってくる事無く、グルグルと僕の周りをまわっている。


「弄っているのか?」


何度目かの攻撃を受けた時、モンスターに異変が現れる。


「何だ? 苦しんでいる?」


急にもがき始めるかのように、全身を震わせるファイヤードック。


「ならば今のうちに止めを!」


追加の一撃が当たった途端、モンスターから炎が噴きあげ、二回りは大きくなっていた。


「な、何が・・? モンスターが変わった?」


登山口の町ギルドの職員の言っていた言葉を思い出す。


『火系魔法はおやつでしかありません』

『上位種へと著しく成長もします』

『弱々しい火系魔法は、モンスターの成長を助けてしまいます』


「も、もしかして?」


『鑑定』してみると、フレイムウルフとなっていた。


「や、やばい!? 確かに火系魔法は危険だ・・」


充分に成長できた事で満足した事で、一声吠えるとノバに襲いかかってくる。


「フレアカノン!」


ドン!


「ごぎゃぅ!?」


フレイムウルフの胴体に、大きな穴が空いている。

『魔法効果補正』と『魔法制御』を強めに設定し、且つかなり強力な一撃で仕留める。


やがて煙のように消えモンスターが居た所に、アイテムと魔石が残される。


「な、何でモンスターが消えて、アイテムが残されるんだ!?」


今までに見た事のない出来事に混乱する。


「ここじゃ誰にも聞けないし、今は勇気ある撤退だ!」


前向きな気持ちで、登山口の町へと退却する。







登山口の町ギルドで、初めて僕の対応をしてくれた職員は頷いている。


「この町を去るのですね、残念です」

「師匠に頭を下げて、戻る事にします」


再び僕の対応を受け持ち、この町でやって行く事を諦めた事を告げる。


迷惑な冒険者のせいで、他の優秀な冒険者に被害を与えるのは避けなければならない。

彼が善良且つ真っ当な常識を持っている事に、感謝の念を覚える。


「今までここで得られたアイテムを、呂銀に当てたいので引き取りをお願いします」

「分かりました」

「そう言えば、火山の内側のモンスターを倒すと、煙のように消えてアイテムのみ残したんですが、どうしてだかご存じですか?」

「ああ、ダンジョンに入った事がないのですね?」

「えっ!? ダンジョンですか? 入った事はありませんが・・」

「ダンジョンの中では、モンスターを倒すと煙のように消えて、アイテムを残します。これはどのダンジョンでも共通で、この火山も実はダンジョンなのです」

「そうだったのですか」


職員は得意げに話してくれるが、あまりにも大きな事を見落としていた。


僕は背負い袋から出す演技をしながら、『空間倉庫』から、どちゃっと魔石を出す。


「・・えっ!? な、何なんですか・・、この量は?」


明らかにおかしい。量もさる事ながら、一日程度という期間で?

魔法阻害領域で、火耐性のモンスターに、火系魔法で・・? あり得ない!?


そして唯一のアイテムを見る。


「炎狼の革? 火山の内側の中層階のフレイムウルフのドロップ品・・。そう言えば先程、火山の内側の特性を聞いていましたよね?」

「ファイヤードックに火系魔法で攻撃したら、成長してしまいまして・・」

「そんな馬鹿な!? あり得ない、あり得ない!」


大声をあげて、皆の注目を浴び、僕は若干引き気味となる。


低層階のモンスターを成長させるしか出来ない火力の魔法使いが、中層階のモンスターを逃げるのではなく倒すなんて・・


もし本当だとしたら、かなりの実力を持っている事になる。

それが残念で仕方がない。


「・・失礼しました。只今、換金してきますね」

「お願いします」


職員は考える。もし魔法阻害領域ではなく、火山の国ではない町で出会えていれば、と。


彼は間違いなく、超一流の火系の魔法使いとなっていたであろう。

そしてその才能を見つけた自分は、専属の職員となって・・


二人のあまりにも不幸な出来事と、脳内で悲劇のヒロインに浸っていた。




僕はそんな事などつゆ知らず、これからどうしようかなぁーと、登山口の町を後にする。





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