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勇者奴隷

【勇者奴隷】


魔王の居城の最深部から生還し、最寄りの軍の駐屯地を目指す。


勇者一向の姿を見つけた見張りは、急いで司令官に報告する。


「あぁー、勇者ノバ様・・、魔王は如何なりましたか?」


慌てて五人を出迎えた司令官は、恐る恐る成果を問う。


「魔王は無事・・」

「ノバ様に失敗がある訳ありません」

「と言うか、私が付いていて失敗はあり得ないし」

「私の助言に従えば問題なかったろう? ノバっち?」

「まあまあ皆さん、リーダーが何も言えませんよ?」


四人の女性陣がノバの言葉に被せて、思い思いに発言して答えになっていない。


「えーっと、結局?」

「はい、無事に倒しました」

「「「おぉおぉぉぉー・・!」」」


司令官と後ろで聞いていた兵士たちが、喜びの雄たけびを上げる。


揉みくちゃにされながら、駐屯地へと連れ去られ、そのまま祝賀会に突入、正に浴びる様に酒を飲まされたり、掛けられたりする。


残りのパーティは女性のため、程々且つ女性兵士がお相手をする。




魔王討伐の知らせは、直ちに王宮へと伝えられる。


まず国王は王都とすべての町村に、国王が魔王を討伐したと触れを出させる。

そして勇者一向は馬車に閉じ込め、他の町村に立ち寄らせず直行させる。


国王や第一王女、国の主だった者たちと謁見し報告する。

その後、連日連夜の祝賀会や晩餐会に出席させられる。


僕自身、あまりの大騒ぎに腰が引ける。


「あんまり大した事していないのに・・」

「ノバ様。魔王討伐と言う偉業はこんな物では表せません」

「と言うか、あんたじゃなくて、私を褒めたたえてるのよ? 勘違いしないの」

「あんたが楽しまなくちゃ、国民も羽目を外せないって」

「そうですよリーダー。今までの鬱憤を晴らさせてあげましょう」


こう言われてしまえば、中々に断りにくい。


「そうだけど、何か無駄が多い様な気がするんだよなぁ」

「ノバ様の偉業を、国民が挙って祝っているのです」

「と言うか、私の祝賀会に参加させてあげてるのよ」

「ぶっちゃけ、余った料理は次の日に持ち越しじゃないかなぁ?」

「まあまあリーダー。少しは目を瞑りましょう」


確かに期間限定のお祝いムードに、水を差すのは躊躇われた。


今まで魔王が日々の暮らしに影を落としていたのだ、多少のお祝いムードは仕方あるまい。

この馬鹿騒ぎが、民草の明日へ活力になるのであれば尚更だ。




もっともこれらのお祭り騒ぎは仕組まれた物で、僕を有頂天にさせて、王国に縛り付けると言う目的があったらしい。


ましてや第一王女や、死地を一緒に彷徨った美しい女性たちにちやほやされれば、簡単に骨抜きにできると考えたと言う話だ。






そんな間隙をぬって、自分の非凡の才を引き出してくれた恩人のリブラ侯爵も会いに来てくれる。


「魔王討伐おめでとう。ノバ君ならきっとできると信じていた」

「ありがとうございますリブラ侯爵様。今の自分があるのは侯爵様のお陰です」

「君は神の代理人なのだ、様などいらないと何度も言っているだろう」


苦笑いを浮かべるが、それでも魔王討伐を達成した喜びはひとしおの様だ。


「神殿で勇者と言う職業に転職したのを皮切りに、この周辺のモンスターでは完全にオーバーキル、それなのにレベルはどんどん上がり、ステータスも異常なほどだ。ましてや最終決戦ではほとんど弊害も無く、短期間で完遂するとはいやはや・・」

「それは自分でも驚いています」


今度は僕自身が苦笑いし、自分の両の手を握ったり開いたりするのを見る。


「おっと救国の英雄、勇者ノバの一人占めはいかんな」

「英雄なんて・・、本当に大したことはしていません」

「ふむ・・、魔王はノーライフキングであったよな?」

「はい、その通りです」


一瞬眉間にしわを寄せ、溜息を吐きながら呟く。


「やはり国としての限界か・・」

「・・えっ!? 今何と?」


侯爵の言った言葉の意味が分からず、思わず聞き返してしまう。


ギュッと目と瞑り歯を食いしばった後、ノバの両肩を掴み目を覗き込むように語る。


「君は勇者という兵器として、国に何かあれば真っ先に戦わされる。戦争の道具に使われるだろう。それで良いと言うならば構わないが、自由を求めるならば気を付けたまえ」

「そんなに悪い国では無いと思いますが・・?」

「この馬鹿騒ぎもそうだが、これから君をこの国に縛りつけるために、あの手この手を仕掛けてくるに違いない」


自分や神様を信じている侯爵・・

国の裏表を見知っている侯爵・・


侯爵の気迫に、思わず唾を飲み込む。




そんな二人の団欒を、国王に逆らう侯爵と僕が一緒に居る事を気に食わない連中が、第一王女を使って引き離しにかかる。


「勇者ノバ様、こんな所にいらしたのですか?」

「ちょ、ちょっと姫様、今侯爵様とお話しを・・」

「皆さま、勇者ノバの活躍をお聞きしたいとお待ちですよ」


それ以降、第一王女たちのガードのせいもあり、侯爵と話す機会が取れなかった。






祝賀会や晩餐会などのお祝いムードが一段落すると、報奨の授与が行われる。


本来は一番功績のあったノバから与えられるのだが、救国の英雄には望む物すべてと言う理由から最後となったのである。


「聖騎士には、男爵の地位を与え、新設される女性聖騎士団の初代団長に任命する」

「はっ。ありがたき幸せ」


「僧兵には、男爵の地位を与える。尚この度、教会で新設される女性僧兵団の初代団長への推薦があり承認した」

「はっ。ありがたき幸せ」


「退魔師には、男爵の地位を与える。尚この度、教会で新設される女性退魔師団の初代団長の推薦があり承認した」

「はっ。ありがたき幸せ」


「治療師には、男爵の地位を与える。尚この度、教会より聖女の称号を与える様に推薦があり承認した」

「はっ。ありがたき幸せ」


もっともこの理由は建前で、実際は勇者パーティの面々は、パーティに参加する条件が事前に提示されており、あくまでも確認である。




この国に在籍する者たちの全ての報奨の授与が終わると、最後に残されたノバの番となる。


「さて最後となった勇者ノバ殿。そなたの働きに対して支払える物がない」


僕も侯爵も、この言葉に裏側があるとは思いもしなかった。言葉通りだと思った。


しかし本当は、対価を支払うに値しない働きであると言う意味だった・・


「そなたの欲しい物は何でも与えよう、望む物を言うが良い」


単なる空手形・・


「恐れながら、一つだけ頂きたい物がございます」

「うむ、なんなりと申してみよ」

「自由をいただきたく」

「・・・自由?」


侯爵は、国王と国の主だった者たちの雰囲気が変わったのを感じる。


「それはどう言う事か?」

「折角、異世界に来たのですから、大陸中を旅してみたいと思います」

「ふむ、なる程・・のぉ」


国王は目を瞑り、何やら考える素振りをする。


「勇者ノバ殿。我が国の隣国や、更に遠くの諸外国と常に緊張状態にある。余がそなたの身の安全を約束できるのは、この国の中のみとなるが構わぬか?」

「それで構いません」

「相分かった。そなたの身分を保障する物を用意し、後日渡す事にする」

「ありがとうございます」


報奨の授与式が恙無く終了する。






国王の執務室で、名立たる者たちが話し合いを持つ。


「異世界人の分際で、自由を求めてきおったわ」

「予想通り、と言う結果ですな」

「他国にあの強大な力が渡る可能性が出てきた」

「素直に我らに従っていれば良いと思わせましょう」


彼らはノバの力を分かっていながら、自分たちがどうこう出来ると思っていた。


「第一王女やパーティの面々に適当にあしらわれておれば良いものを。少しは役に立ったのだ、飼い殺しで済ませてやろうと思ったが」

「準備はできております」


国王の前に出した物・・、首輪であった。


「特注品にございます」

「身分を保証するのには適しておろう」


執務室に響き渡る下卑た笑いが、その首輪の意味を物語っていた。






数日後、僕に割り当てられた部屋でまったりしていると、身分証の授与式を執り行う旨の連絡が入る。


「やっと、待ちに待った自由が手に入るー」


背伸びをして、ここ数日の出来事を思い返す。




連日のように第一王女や、魔王討伐のパーティがやって来て、少々辟易していた。


「勇者ノバ様。何故、我が国から、私を置いて行かれるのですか?」


涙ながらに引きとめようとする第一王女。


「ノバ様、王宮に残られたらどうですか?」

「と言うかさ、うちらへの感謝忘れている訳?」

「きちんと最後まで務めを果たすべきじゃん? 呼ばれた者としてさ、ノバっち?」

「元リーダーに申し上げますが、考え直した方が良いと思いますよ?」


パーティの四人が、代わる代わる、または揃って部屋に押し掛けてくるのだ。


「待ってくれ。皆だってこれから役割があって忙しくなるのでしょう? 僕なんかに構っていて良いのですか?」

「それとこれとは別の問題です。だいたい・・」


彼女達の言葉を、右の耳から左の耳へと拝聴した後、丁寧にお断りする。






僕の報奨授賞式には、パーティの四人と、侯爵も参列していた。


国王は式の直前に、第一王女たちから、僕の心変わりのない事が伝わっているはず。

それでも敢えて僕に確認してくる。


「勇者ノバ殿。そなたを我が国から出すのは非常におしい人材だ。この国のために働いて欲しいと思っているが、考えは変わらぬか?」

「ありがたいお言葉ですが、自分の考えは変わりません」

「そうか・・、ならば仕方あるまい」


仕方あるもないも関係ない。既に勇者ノバの行き先は決まっているのだから・・


宰相がトレーを持ち、第一王女がノバに渡す役を担う。


「勇者ノバ様、あなた様がこの国のモノである証にございます。お受け取りを・・」


そう言うが早いか、サッと首輪をノバに着ける。


「とってもお似合いですよ、勇者ノバ様」

「これが・・、身分証?」


その言葉を聞いた、誰もが大笑いをする、


国王も、第一王女も、国の主だった者も、パーティの四人も・・


あまりの出来事に呆然としていた、侯爵が笑い声を消すかのように吠える。


「陛下! 一体何をお考えですか!」

「騒がしいぞ、侯爵。相応しい身分をくれてやったのだ、感謝して欲しいぐらいだ」


再び授与式の場が笑いの渦で包まれる。


「勇者ノバ様に奴隷をするというのが、正しい身分だとおっしゃるのですか、陛下!」

「奴隷? ・・これって奴隷の首輪ですか?」


見えない首輪を手で触れて確認するノバ。


「そうだ。良い悪いを別にして、奴隷を管理するための首輪だ」


侯爵が見えないノバに、間違いない事を告げる。


「どうして・・?」

「頭が高いわ!」


国王が叫ぶと、ノバは跪き頭を下げる、いや実際は従った振りだけど。

首輪が身体に、そうするように働きかけてくるらしい。


「どうして、じゃと? 奴隷如きに答えるつもりはないが、気分が良いので許そう。先程も言ったが、相応しい身分をくれてやったと言ったであろうが」

「奴隷が・・相応しい身分と・・?」

「誰が口を聞いて言いと言ったか!」


僕の問いかけを、国王が命じて封じようとする。


「勇者ノバ様、異世界人如き下賤の物にはとってもお似合いですよ」


第一王女が者では無く、物と言い切る。


「ノバ様、いやノバ。やっと役目が終わる。貴様の様な奴に従わねばならなかった我が身の辛さが分かるか!」


聖騎士が叫ぶ。


「と言うか、本当に気付かない間抜け野郎だった訳ですよ。貴方は」


僧兵が冷たい言葉を投げかける。


「一度たりとも仲間だと思った事は無いけどね、くそノバ」


退魔師が唾を吐く様に言う。


「何時襲われるかヒヤヒヤしましたよ。異世界人は下賤ですからね」


治療師が侮蔑する。


「皆・・、何で・・」

「口を慎みなさい! 奴隷が!」


第一王女の命にも、あえて僕は従う振りをする。


「先ずは頭を冷やすが良い。この奴隷を連れて行け」

「お待ち下さい、陛下!」


ノバの前に侯爵が立ちふさがる。


「勇者ノバ様は救国の英雄、ましてや神の代理人。完全に神を敵に回す事になりますぞ! それを承知の上での所業か!」

「侯爵・・、神とは誰か? 神の代理人? そこに居るのは奴隷であろう?」

「・・陛下、正気ですか?」

「正気? 余からすれば、そなたの正気を疑うぞ? もう良いから下がれ! それからその奴隷も地下牢へ連れて行け!」

「陛下!」


衛兵にノバも侯爵も連れ出されてしまう。






普通であれば、地下牢に閉じ込められるのは一か所に付き一人である。


しかしノバの閉じ込められた牢には、ノバの他に絶世の美女が正座して謝っている。


「申し訳ありませんでした、ノバ君」

「い、いえ、御使い様。どうか頭を上げて下さい」


地下牢に閉じ込められ茫然としていると、一人の女性が現れて驚いたのだ。


『使徒の訪れ』・・、ノバに与えられたギフトの一つ、困った事があれば、神様の使徒が訪れて相談できると言うとんでもないギフトである。


「神の代理人とあれだけ言っておいた勇者を、この様な目に合わすとは・・」

「僕も国の偉い人が、神様の事を蔑にするなんて・・」


二人して溜息を吐く。


「先ずここから出ていただくのは決定として、どんな罰を与えて欲しいですか?」

「いや、罰と言うのはあまり、その、ちょっと・・」

「分かりました、罰に関してはこちらで引き受けましょう」

「お願いします」

「それで此処からの脱出の手順ですが・・」


脱出の前に、奴隷の状態をどうかしなくてはならないのではないか?とお考えではないだろうか?


勇者職に与えられたスキルを覚えているだろうか?


『ステータス異常耐性神級』は毒や麻痺、石化は元より、呪いへの耐性もある。

ましてや神級、奴隷の首輪をつけられてからずっと


『奴隷状態を解除しますか はい/十秒保留』


を聞いてきて、いいえ がない事は当然なのかもしれないが、十秒と言うのがちょっと煩い。


これが国王や第一王女の言葉に、従った振りをした理由である。


しかも『移動系能力群神級』があれば、どこからでも脱出できる。

いや、そもそもそんな能力を使わなくても、基本ステータスで十分脱出が可能である。


この話し合いは、如何に効果的に脱出するかの相談なのである。






しばらくすると、僕の鉄格子の前にリブラ侯爵が現れ頭を下げる。


「勇者ノバ様、この度は何と申し開きをすれば・・」

「頭を上げて下さい侯爵様、あなたのせいではありませんから」


何とか頭を上げてもらって、これからの事を話し合う。


「何度も国王に掛けあって、奴隷からの解放、地下牢からの解放を訴えているが、全く話を聞いて下されない。最近では、会ってさえいただけない状況なのだ」

「そうですか・・。僕も地下牢で冷静に考えたのですが、やはりどうしてこんな事をしたのかさっぱり分からないのです」


侯爵は、僕があまりの突然の事に、理解が追いついていないのだろうと感じたようだ。


「ノバ様。勇者としての力。これを国外に出せばどうなるか・・。国を治める元のとして、国王の行った事は許される事ではないが理解は出来る、出来てしまうのです」


ただ神と神の代理人に対する態度としては最悪であるとも言う。


「侯爵様、お願いがあるのですが?」

「私にできる事であれば、何でも取り図ろう」

「もう一度、国王様に本当の気持ちをお聞きしたいのですが、可能ですか」

「勇者ノバ様・・」


侯爵は、事ここに及んでも、まだ信頼したいと言う気持ちがあると思ってくれたようだ?

国王の仕出かした事のあまりの恥ずかしさに、死んでしまいたいとさえ感じているだろうか?


何の罪も無いリブラ侯爵を追い詰めてしまい申し訳なく思う。

それでも、今頼れる人は彼しかいない。


「分かった、出来る限りやってみよう」




侯爵は何度も国王に直談判し、僕の望みである国王の気持ちを問う機会を取り着ける。


謁見の間には、再び国王や第一王女、元パーティの四人、国の主だった者たち、そして侯爵が並ぶ。


そこへ僕が引っ立てられてくる。


「侯爵がうるさいので、もう一度だけそなたの言葉を聞く場を設けた。発言を許す」

「国王陛下、何故この様な事をされたのですか?」


僕の言葉に、一瞬その場が静まり、大爆笑の渦が湧きおこる。


「やはり異世界人は無能か。何度言っても分からぬようだ」


侯爵ただ一人、この結果を分かっていたのか、恥ずかしさと怒りに顔を歪ませている。


「神様の言う事に、何故耳を傾けないのですか?」

「神などおらん。異世界人など、我が国のために尽くす奴隷なのだ」

「たかが異世界人の分際で、口を聞くだけでも死罪に値します」


国王と第一王女が告げる。


「ノバ、神は居ない、異世界人はこの世界の奴隷、理解しろ」

「と言うか、理解できないから異世界人は奴隷が最適だ」

「何でお前如きに、呼び出しを受けなくちゃいけないんだ? くそノバ」

「元リーダーは、私たちに媚び諂えばいいんですよ」


元パーティの四人も嘲る。


「何故、こんな事をしたのですか?」


僕の言葉に、再び大爆笑が起こる。


ブチッ


僕は奴隷の首輪に指をかけ、そのまま引きちぎる。


「「「「・・・・・」」」」


その場で笑っていた者たちが、笑顔のまま固まる。


「僕のステータスを見なかったのですか? 知らなかったのですか? 僕のスキルは僕の物ではなく、神様から与えられたものです。万物の創造主の力の前に、こんな物が効果あると思ったのですか?」


ヒュン・・ポトッ


指で首輪をクルクルっと回し、切れ目からすっぽ抜け国王の前に落ちる。


誰も彼も凍りついたかのように、何も出来ずただその場に動けずに居る。


「神からの言葉を伝えます」


僕の口からは、明らかに別人の美しい女性の声が紡がれる。

その場に居たすべての人の骨の髄まで響き渡る。


『神を蔑にした者たちに罰を下す。

神の代理人に仇なす者たちに罰を下す。


汝らの周りから恵みを取り去る。

大地は食べ物を生まず、好ましい物は得られない。泥をすするが良い。

大地は財宝を生まない。美しい細工は得られない。ボロを舞うが良い。



民は呪われ活力を失う。怒りと憎しみは活力となり王家に向けられるだろう。


神な慈悲深い。必要な物は、民と分かち合う時のみ与えられる。


国王と王女、国の主だった者たちが、心より悔い改めるまで、この誓約は取り去られる事はない。


心よりの悔い改めとは言葉に在らず、思いと行いによってのみ示される。



聖騎士と、僧兵と、退魔師と、治療師がこの国に居る限り、光と聖の魔法は取り去られる。

光と聖の魔法は、四人が居る限り蘇る事は無い。


聖騎士と、僧兵と、退魔師と、治療師から光と聖の魔法は残される。

四人はこの国を出る時、四人より光と聖の魔法は奪われる。



我は真の改心を求める。真に改心をせよ! 言葉ではなく行いで示せ! 我への賛美は国の繁栄が、我への侮りは、国に更なる呪いと穢れが訪れるだろう。



我が言葉の証を、この城に印を刻む』


ノバが床に手を付くと、そこから城全体、庭園、城壁に至るまでヒビが入る。


「「「「・・・・・・」」」」


声の美しさと反面して、細胞の一つ一つが恐怖する、逆らってはいけないと。

あまりの出来事に、その場は沈黙が支配していた。


僕は立ち上がり、そのまま扉へと向かい開く。


もう一度振り返り、その場の人一人ずつ目で追って行く。

その視線を受けた者たちは、目を逸らす事ができず黙って受け止めるしか出来ない。


「何故、こんな事をしたのですか?」


全員に、誰に言うでもなくもう一度問いかける。




静かに扉が閉まると、その後をリブラ侯爵だけがすぐに追いかける。





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