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裏での暗躍

【裏での暗躍】


全ての能力について説明が終わると、世界の管理者である神様は別れを告げる。


「今ノバ君がいる場所は、神である私と人間が会える特別な場所です」

「は、はい。お招きありがとうございます!」

「それ故に本来は、そんなに長い時間いられる場所では無いのです」

「そ、そうですよね」


神様とそんなに長い時間話していられる事自体、大変な事なのだろう。


「もっとたくさんの時間を使って説明してあげたいのだけど・・」

「い、いえ。充分、充分ですから」

「この先、多くの困難が待ち受けているでしょう。乗り越えてくれることを期待します」

「ご期待に沿える様、最大限努力します!」

「貴方の新しい旅路に、祝福がある様に」


神様の、僕への祝福の言葉を聞きながら、意識が漆黒の中へと消える。




『イノバ』の管理者である私が祝福を告げると、彼は真っ白い空間から消える。


「本当に、心から、期待しているわ・・。ノバ君」


少し悲しそうな笑みを浮かべ、彼の居たであろう所をそっと撫でる。






二つの世界から成り立つ鏡面世界の、大小様々な島のある『イノバ』と呼ばれる世界・・


左半分を誇る最大の、大陸と呼ぶのが相応しい島には、幾つもの国が乱立していた。


モンスターが跋扈し、民は日々の平和を脅かされている。

にも拘らず、国と国は民を気にかけず、覇権を争って常に戦争に明け暮れていた。


世界の管理者たる天使は、何度も国の指導者たちに、啓示として警告を与える。


ある者たちは忠実に従おうとする。


「陛下! 神より、民に心向けるように言われています」


殆どの者は夢と決めつけ、無視したり、更に不遜な態度すら取る。


「そなたの夢物語に付き合う程の暇など無い」

「神ならば、我らが敵を滅ぼしてもらいたいものだ」


神に向かって、あまりにも自分勝手な望みを呟く。




神たる管理者は、魔王を誕生させることを決める。

繰り返し繰り返し、魔王の誕生を警戒する様に啓示を与え続ける。


「陛下! 魔王の誕生が警告されています」

「いい加減にせよ。何が魔王か・・」

「ふん! 易々と我が軍が魔王ごときに負けるはずがありますまい」


全く耳を傾ける事がないまま、魔王が誕生する。




その日その時を境に、神からの啓示がピタリと止まる。


魔王の圧倒的な力に、人間の力など役に立たない上に、周りの国からも狙われる。


国の主だった者たちは、その時になって神を呼び求める。


「何故、何故じゃ。神はわれらの呼び声に答えぬ」


神に忠実だった者たちは答える。


「何度も警告されていました。取るに足らない夢物語と、魔王には負けぬと、神の言葉を蔑にされた事を忘れたのですか?」

「その時は、そう思ったのだ」

「啓示が止んでから、掌を返した所で、答えていただけるはずもありますまい」

「国が滅びる時にその様な事を言っている場合ではあるまい! そなたも何とか神の許しを得られるように、取り成しをせよ」


何と我儘な、何と自分勝手な・・、神が見放されても当然だろう。




それでも国の危機ともなれば、文句も言えず、神に頼る他なかった。


神に忠実であった者たちの祈りは聞き届けられ、勇者召喚と言う方法が啓示される。


「陛下。神より啓示がありました」

「・・何ぃ? そなたたちに? 何故、余に啓示が無いのじゃ? そなたたちの方が優れているとでも言うのか!」

「優れている訳では無く、どの様に神を敬ったかどうかだと思われます」

「余が神を敬っていないと言うのか!」

「夢物語と言われ、耳を傾けなかったではありませんか」

「ふん! 何と懐の小さき神か」

「陛下・・」


神はこの世界の創造者、何故一国の王のご機嫌を取る必要があるのか・・


陛下は何故それを理解されないのか・・


この国の主だった者の不敬な態度は、何時滅ぼされてもおかしくないと言うのに・・


私たちは神の慈悲深さに、身の縮む思いをしているのに・・


「もう良い! で、その神は何と言っておるのか?」


国王の態度に、心の中で溜息を吐くと啓示を伝える。


「『勇者を召喚しなさい』と、仰られていました」

「勇者? 召喚? どう言う事か?」

「異世界と言う場所から、魔王を倒せる者を呼び寄せる事です」

「なる程。それは良いアイデアじゃ。さっそく取り掛かれ!」


神に忠実な者たちでは無く、国王に忠実な者たちに命じる。




それでも神に忠実な者たちは、神から与えられた知識を惜しみなく分け与える。


「あの者たちも偉そうなことを言って、結局できないから我らを頼るのですよ」

「我らで呼びつける事は出来るが、まあ手伝ってやるのも吝かでは無いな」


自分の保身のために、プライドのために、渋々やる振りをする。




勇者召喚の儀式の準備が整うと、国の主だった者が集まり儀式を開始する。


儀式を開始すると、集まった者たちに、雷鳴のような言葉が轟き渡る。


『何故、今まで神たる私を敬わなかったのか?』

「も、申し訳ありません。平にご容赦を!」

『神たる私を敬うか?』

「勿論でございます!」

『勇者は、神の代理人である。神たる私と同様に敬うか?』

「勿論でございます」


国の主だった者は、この場さえ乗り切ればと何とかなる、心にもない事を口にする。

勇者の召喚に成功すれさえすれば、後は駒の様に使えば良いと考えていた。


『勇者と祝福がある様に』


その言葉を最後に、部屋中に光が満ち溢れる。

光が収まると、一人の少年が立っていた。


「(・・普通の、何も出来成そうな下民ではないか!)」

「(この様な者に、頭を下げろと言うのか!)」


神に不敬な者たちは、心の中の思いは明らかに蔑む物であった。


神に忠実な者たちは、見た目に誤魔化されず、跪いて迎える。




国王は、娘である第一王女に目配せすると、既に話し合っていたのかすぐに動く。


「初めまして、勇者様」

「・・は、初めまして」

「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「あっ、はい。ノバと言います」

「ノバ様。どうか私たちの国をお救い下さい」


第一王女が跪く、仕方なく、いやいやと言った感じで同じ様に跪く。


「えっ、あっ・・、その・・、頑張ります」


召喚された勇者は、周りの人々の貼り付けられた笑みの意味に気付かない。




一人の男が何かの板を持ってくると、第一王女は受け取り説明をする。


「勇者ノバ様。この板は触れた者のステータスと呼ばれる能力を見る事が出来ます」

「えーっと、触ればいいんですか?」

「はい、お願いします」


ノバは第一王女に言われた通りに、掌を板の上に乗せる。


「ありがとうございます。確認いたしますね・・えっ!?」


板の内容を見た第一王女は、すぐに父である国王へ持って行く。

国王は、国の主だった者たちにも板の内容を見せる。



[ 名 前 ] ノバ

[ 職 業 ] 無職

[ レベル ] 1


[ 生命力 ] 5

[ 技 力 ] 5

[ 腕 力 ] 5

[ 耐久力 ] 5

[ 知 力 ] 5

[ 精神力 ] 5

[ 早 さ ] 5

[ 器用さ ] 5

[ 運   ] 5

[ スキル ] 無し



まさかと思いながら、近くに居た平均的な騎士の一人を呼び、板に触れさせる。



[ 名 前 ] アベレージ

[ 職 業 ] 騎士

[ レベル ] 15


[ 生命力 ] 650

[ 技 力 ] 50

[ 腕 力 ] 65

[ 耐久力 ] 65

[ 知 力 ] 25

[ 精神力 ] 25

[ 早 さ ] 20

[ 器用さ ] 15

[ 運   ] 15

[ スキル ] 剣術(中級)、槍術(中級)、盾術(中級)、回復魔法(初級)


どうやらステータスを調べる板は壊れている訳ではない。


つまり異世界から召喚された者は、勇者では無く無能な平民・・、失敗であろう。

もしくは偉そうなことを言った神は、この程度の存在と言う事。


彼らの心の中に去来する思いは、神や勇者、異世界人への侮蔑や嘲りであった。




神に忠実な者の中で、尤も地位の高いリブラ侯爵に向かって、国王が命じる。

彼にもステータスを調べる板を見せた上で・・


「リブラ侯爵。そなたに、異世界の勇者の事を一任する」

「陛下・・、貴方と言うお方は・・」


国王の考える事が手に取るように分かる。

召喚された勇者が、使えない者であるため、自分に厄介者を押し付けたいのだ。


国の周りの主だった者を見ると、誰も彼も下卑た笑みを浮かべている。


「拝命、承りました」


何と愚かなのだろう・・。神の怒りを買うかもしれないと言うのに。


「勇者ノバ様、私が貴方の身を預かります」

「はい、よろしくお願いいたします」


異世界からの来訪者、ノバを連れて召喚の間を出て行く。


扉が閉まると、大爆笑が響いて来る。






一通り国王、第一王女、国の主だった者の大爆笑が収まると、誰ともなく口火を切る。


「いやー、しかし笑わせていただきましたな」

「神、神、とは言っても・・、この程度の力しかない訳だ」

「いや異世界人が皆、この程度の能力と言う事ではありませぬか?」

「違いない」


再び大爆笑が起こる。


「まぁ厄介者は、侯爵に押し付けておいて・・」

「実際問題、魔王と隣国をどうにかしませんとな」

「確かに、無能な神に頼ってはおられん」


異世界人を召喚した事も、侯爵や神に忠実な者たちの事もきれいさっぱり忘れる。






王宮の中をしばらく進んで行くと、侯爵が声をかけてくる。


「勇者ノバ様」

「公爵様、その言い方はどうにかなりませんか? ノバで良いですから」

「その様な訳には参りません。神よりお預かりしておりますので」

「はぁー、分かりました」

「そんな事よりも、私などに様は必要ありません」

「誠意努力します・・」


勇者とか、様をつけるとか自分には合っていないと感じている。

一緒に歩いている侯爵の方が、間違いなく偉く、様を付けるなと言われても・・


「それで話は戻りますが」

「あっ、はい」

「失礼ながらステータスを拝見させていただきました。正直に申し上げて、かなりの努力をしませんと、魔王には届かないかと・・」


いや魔王どころか、尤も弱いモンスターにさえ勝つ事は難しいだろう。

ノバ様のステータスは職業の無職による影響が大きいのだろうが、平民のステータスを下回っている。


「そうなのですか・・」

「まずは神殿に行って、職業を変更いたしましょう」

「神殿・・? 職業・・? 転職? あっ!? しまった!」

「どうされたのですか、勇者ノバ様?」

「神様から、勇者に転職するように言われていたのです。自由に生きなさいと最初は無職で送り出されました!」

「なっ!? それは本当ですか?」


神は、私たちの心の内などお見通しだったのだ。

もしノバ様が、私たちを救う価値なしと決められれば、他の職業に就いていたに違いない。


「では、すぐに神殿に参りましょう」

「はい、お願いします!」


二人はその足で、大急ぎで神殿へと向かう。




侯爵様の貴族特権とか言うのを使って、割り込みをかけるなんて言っていた。

タイミング良く手隙の時間だったらしく、その様な事態にはならなかったが。


待っている人たちがいたら、とても申し訳ないと思う。


「神官殿、勇者ノバ様の転職をお願いしたい」

「分かりました。さあ、こちらへ」


幾つもの幾何学模様が描かれた、転職用儀式の部屋へと通される。


「こちらの大に手を置いて下さい」

「はい」


先程、ステータスを調べた板の大型版みたいなものが、台座に取りつけられている。


「この神器は、遥か昔、神が職業を定めてから、人間に下されたアイテムで、その人に会った職業、その人が望む職業に就く事が出来ます」

「凄い仕組みなんですね!」

「転職は二段階に分かれており、最初にその人の適性を調べ、続いてその人の望む職業に就かせます」

「えーっと、勇者にはなれますか?」

「勇者・・、聞いた事がありませんね。神が特別に与えられる職業があると聞いた事がありますが、それかもしれません」


勇者になって人々を助けなきゃと思い込んでいる僕に、侯爵様が助け船を出してくれる。


「何にせよ、勇者ノバ様の適性を確認してみましょう」

「そうですね」

「ではこちらに手を置いて下さい」


神官に導かれるまま、転職用の板に手を置く。


「そのままじっとしてお待ち下さい。大いなる神よ。この迷える子羊に道をお示し下さい」


自分の周りの幾何学模様が、光り輝きながら点滅を繰り返し、すぐに収まる。


「さあ、もう大丈夫です。手を除けて下さい」

「はい」


三人で転職用の板を仲良く覗いてみる。


『勇者一択。これ絶対!』

「ふぉあ!?」

「なっ!?」

「へぇー、こんな感じに出るんですね」


侯爵様と神官が驚き固まる中、感慨深く感想を述べる。


「いえいえいえ、普通はこんな事はありません。例えば剣、火、癒しなどと適性がある物が現れます。こんなの初めてです」

「つまり特殊職と言う事か・・」

「良かった。勇者に転職できるみたいで安心しました」


ノバ一人がその場の空気を読まず、安堵していた。


「で、では転職の儀に移ります。先程と同じ様に手を置いて下さい」

「はい」

「しばしそのままで。大いなる神よ、この迷える子羊に、新たなる道、勇者の職を」


先程と同じ様に、幾何学模様が、光り輝きながら点滅を繰り返す。


『ノバ君、ちょっと遅いですよ』

「あっ、神様。すみません」


すぐに収まる。


「えっ!? 今の女性の声は?」


どうやら神官にも聞こえた様だ。


「神様の声です」

「うぉあぁぁぁー!?」


あまりにも衝撃だったのか、頭を抱え込んでいる。


「神の声が聞こえるとは・・、ノバ様は勇者、正に選ばれし者と言う事だ・・」


侯爵様も神様から啓示をもらった事があると仰っていたが、驚きを隠せない様子だ。


「良し。ステータスもいくらか向上が見込まれる。その上で訓練を考えよう」

「お願いします」


再び三人で転職用の板を仲良く覗いてみる。



[ 名 前 ] ノバ

[ 職 業 ] 勇者

[ レベル ] 1


[ 生命力 ] 9999

[ 技 力 ] 9999

[ 腕 力 ] 999

[ 耐久力 ] 999

[ 知 力 ] 999

[ 精神力 ] 999

[ 早 さ ] 999

[ 器用さ ] 999

[ 運   ] 999

[ スキル ] 全戦闘技能神級、物理攻撃補正神級、命中補正神級、攻撃回避神級、全魔法技能神級、魔法攻撃補正神級、物理・魔法防御神級、生命力回復量・速度神級、技力回復量・速度神級、ステータス異常耐性神級、ステータス異常回復神級、索敵能力神級、レベル臨界突破、ステータス限界突破、経験値取得率神級、レベルアップ補正神級、移動系能力群神級、生産系能力群神級、敵対者ステータス加算神級、スキル自動追加神級。


「「・・・・・」」


何故か侯爵様と神官は無言で板を凝視し、その内に神官はパタリと倒れる。


「な、何なのだ・・、このステータスと、スキルの・・数もさることながら種類は・・」

「えーっと、ダメだったのでしょうか?」

「ダメとか、ダメじゃないとか、そう言う問題じゃなくてな・・。これが勇者か・・」


何やらブツブツと呟いて自己完結すると、ノバに向かって声をかける。


「ま、まあ、勇者になったばかりで、能力も上手く使えない事もあるだろう。先ずは訓練をしていこうか」

「はい! よろしくご指導下さい!」


倒れたままの神官を放置して、侯爵の住まいへと二人で向かう。




神官は目を覚ますと、おいてきぼりされた事は気にせず、すぐに国王へ報告へ向かう。


「な、何じゃと!? あの無能な異世界人に神の言葉!? しかも転職すると人あらざる能力じゃっただと!?」

「はい、その通りでございます」

「おのれぇ、侯爵・・、余を謀ったのじゃな!」

「すぐに勇者様を、こちらに取り返すべきかと」

「そうじゃな。すぐに使者を侯爵の元へと向かわせよ」

「はっ!」


侯爵は押し付けられた訳で、国王がノバのステータスを勝手に見限ったはず。


あまりにも勝手な国王の使者が訪れ、侯爵からノバを取り戻そうとする。




あれだけの事をしたと言うのに、侯爵の言葉をのらりくらりと言い逃れをする国王。


「神の代理人として敬うと約束していたのに、今更何を仰っているのですか?」

「転職によって、あれほどステータスが上がるとは思いもしなくてな・・」

「私は神を信じていたが故に、勇者が与えられたと考えております」

「そなた、それを知っておったからできたのであろう」

「陛下・・、私をお疑いですか・・。そもそも、最初から神の言葉はあったはずです」

「何にせよ、貴方は陛下の臣下に過ぎず、陛下の御命に従えば良い」


国王の命に従えと、声高らかに叫ぶ、国の主要な者たち。




侯爵はノバの前で頭を下げて、王宮であった事を告げる。


「国王の命故に、私はその命に従わなければならない」

「分かっています」

「出来る事ならば、君の成長を一緒に見たかったが、そうも言っていられない」

「ありがとうございます。ご恩は忘れません」

「陛下たちは、無職で無能と分かった途端、私にノバ様を押し付けたのだ。そして勇者としての能力を知って、更に手のひらを返したのだよ」

「えっ!? そうだったんですか・・」


僕は上に立つ者、民を守る立場の者として、仕方がないのではと思う。

しかしリブラ侯爵は、彼らの動向に注意するように忠告してくれる。


「国王や、国の主だった者たちは、嘆かわしい事に神を神と思っていない様だ・・」

「そんな事は無いと、思いますが?」

「ノバ君、君はまだ若い。きっと良い人たちに恵まれたのだろう。良く良く覚えておいてほしい、人の心の中にこそ魔王は住んでいるのだ」

「元の世界でも、それと似た話は聞いた事があります」

「きっとあやつ等は、何か良からぬ事を企んでいる。注意したまえ」


僕は侯爵の言葉をまさかと思いながらも、胸の奥に隠しておく。




王宮に閉じ込め、国王は確実にノバの取り込めるよう、あの手この手を画策する。


ノバの世話役には、常に第一王女とその侍女たちに相手をさせる。


「良いか、勇者を城から出してはならん。誰の目にも止めさせるな!」

「はい、お父様」

「そして勇者の目を、お前だけに向けさせるんだ」

「分かっております」


国王の選んだ見目麗しい女性たちとパーティを組ませ、訓練させると言う籠絡の策を使う。


「流石に訓練なしで、魔王と戦うのは無謀か・・」

「第一王女様には申し訳ありませんが、自分たちの手の者で縛りつけましょう」

「まあ娘も、異世界人何かと・・と言っておったし、文句も出まい」

「そこそこの能力を持つ、見た目重視の者たちを選りすぐりましょう」


そして最終的には、勇者の奴隷化と言う、神の代理人へ最悪の仕打ちを計画していた。






無数の透明な板が浮かぶ真っ白な空間に、ノバを召喚した姉の天使が呟く。


「と、思っていること位、お・み・と・お・し」


『イノバ』の管理者である双子の姉は、幾つかある透明の板に映し出された一つを指で突っつく。


「何のために、ノバ君を召喚させたと思っているのかしら?」


しかしあの純朴な少年を、自分に会えた事を全身で喜ぶ彼を、駒の如く使おうとする事には胸が痛む。


「ごめんなさいね。あの程度の祝福で許してもらえないだろうけど・・」


自分がやっている事と、透明な板に映る彼らと同じである事に溜息を吐く。





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