戦士 盾職とは
【戦士 盾職とは】
彼は偽装の指輪を付けたり外したりしながら、港町の食堂で注文品が来るのを待ている。
「ちょっと、我慢が足りないんじゃないの・・。ノバ君?」
到着して開口一番そう告げる。
「そう・・、なんですかね、やっぱり?」
「ちょっとばっかりギルドマスターに、目を付けられたからって・・」
ギルドマスターの面会した後、そのまま姿を消して草原の国の港町に来ていた。
「裏の事情を知っているから、ギルドマスターだって、あなたをソロで使うわよ? 表立っては、盗賊職で薬草採取しか出来ない不遇のソロでやっていけたと思うんだけど?」
私もノバの扱い方が、だんだんと分かってくる。
下手に出れば、恐縮して中々こちらの意見を素直に聞いてくれない。
ちょっと上から目線で言えば、コロッと話を受け入れてくれる。
ちょっと此処で責めてみよう・・。そんな思いが湧いてしまった。
「こっちは呼んでおいて、酷い仕打ちをさせてしまったから養いたかったんだよ? でもヒモの暮らしをと言い、働きたいと言ったのはノバ君だよね?」
「・・はい」
「ソロが良いと言うから、不遇職を紹介しているんだよね?」
「・・その通りです」
「こっちは出来るだけ、ノバ君の要望に応えたいと思っているよ?」
「・・分かっています」
「でも君が選んだ道に関しては、君に頑張ってもらわないと・・」
「・・そうですね」
ちょっと苛めすぎたかなぁーと思いながら、今度はノバ君の立場を認めてあげる。
「ちなみに今回は、やっぱりあれが原因なのかな?」
「自分の言動で、人の人生を終わらせたと言うか、狂わせたと言うか・・」
「あれはギルド職員の責任であり、独断だった訳だからねぇ」
「僕が直接手を下す事もできたはずですし・・」
「まあそうなれば、結果として町を出る事になった・・か」
彼の性格からしてギルドマスターから話を聞いた時点で、この結末は決まっていたと言えるだろう。
「まあ、ノバ君の気持ちも分からなくはないから・・」
「すみません」
「一応、物理職の不遇候補はあと二つあるから、次行きましょう」
「はい、お願いします」
「戦士職と・・狩人職、どっちをやってみたい?」
ちょっとだけ、狩人と言った時のニュアンスに含みを持たせるような言い方をする。
「じゃあ・・、戦士職をお願いできますか?」
「分かったわ! じゃあ転職に行きましょう(おーほっほっほっ! どっち選んでも構わないのよ実は)」
今回は別の島に移ってからでも、転職して構わないので、先ず目的の島へと向かってもらう。
就活神殿で転職した後の、偽装の指輪を付けた時のステータスを確認する。
[ 名 前 ] ????(ノバ)
[ 職 業 ] 戦士、盾使い
[ レベル ] 1
[ 生命力 ] 300
[ 技 力 ] 40
[ 腕 力 ] 20
[ 耐久力 ] 20
[ 知 力 ] 5
[ 精神力 ] 10
[ 早 さ ] 10
[ 器用さ ] 5
[ 運 ] 5
[ スキル ] 盾術(初級)
ちなみに外した方がこちら。
[ 名 前 ] ノバ(ノバ)
[ 職 業 ] 戦士、盾使い
[ レベル ] 1
[ 生命力 ] 10090
[ 技 力 ] 40
[ 腕 力 ] 999
[ 耐久力 ] 999
[ 知 力 ] 5
[ 精神力 ] 10
[ 早 さ ] 10
[ 器用さ ] 5
[ 運 ] 5
[ スキル ] 盾術(神級)、物理防御(神級)、魔法防御(神級)装備強化(神級)身体強化(神級)、気配察知(神級)、生命力超回復(神級)、移動系能力群(神級)、経験値取得率(神級)、レベルアップ補正(神級)
何か色々とおかしい様な気がする。いや絶対におかしい。
「ミ、ミツカ様? 戦士職のステータスがおかしい気がするのですが? いや魔法職の時もそうだったんですが・・」
「うーん、そう? こんなもんじゃないの?」
どうやらギフトの『職業選択の自由』その物が、やり過ぎだと判明する。
「ま、まあ、ステータスは置いておいて、スキルの構成に偏りがあると思うのですが?」
「偏り?」
「ええ、武器のスキルが一つもありません」
「当然よ、盾使いなんだから」
「盾使い・・、ですか?」
戦士職なのに、盾使いとはどうい事なのだろうか?
「戦士職と言うは、非常に広い職業なのよ」
「そうなのですか?」
「武器や防具の全般を使える、物理職のオールラウンダーだけど、全てのスキルを持っている人なんかいないわ」
「当然ですね」
「となるとスキルを持っている武器を、得意武器とするのが普通よ」
「ふむふむ」
「そう前提で、槍使い、斧使い、剣士と言う呼び方が現れるのよ」
「それでスキル盾術があるから、盾使いと言う訳ですね」
盾使いと言う言葉に納得する。
「盾使いが不遇なのですか?」
「パーティの守りの要にして屋台骨ながら、決して目立つ事無く、傷つき倒れながらも、美味しい所は全てアタッカーに持って行かれる」
「そ、そう言えばそうですね」
「心ない人たちは、盾使いたちをアタッカーの金魚のフン的扱いをするわ」
「うわぁ・・」
「今まで体験してきた能力的な不遇でパーティを組めないのではなく、必要不可欠なのに、扱いは雑・・。キングオブ不遇の名に恥じない、王道の不遇職ね」
全てが全てそういう扱いをする事は無いし、普通のパーティのメンバーなら平等に扱う。
とは言え、常に先陣で怪我も多く、地味な仕事であり、ヒーローには成りきれない。
誇りを持って働いても、心をすり減らし辞めて行く者も多いと聞く。
「・・な、中々な不遇なんですね」
仕事はありそうだが、精神的にきつい仕事になりそうである。
しかもステータスの精神力も、ちょっと低めなのも気にかかる・・、大丈夫か?
一抹の・・、いやかなりの不安を抱えながら、冒険者ギルドへと向かう。
良くぞここまで統一したなぁと言う感じの、他の国と作りが殆ど同じの冒険者ギルドのスイングドアを開けて、受付へ向かい冒険者登録をする。
「ようこそ盾使いGさん。沢山のダンジョンの国へようこそ!」
「・・沢山のダンジョンの国?ですか?」
「その辺りも含めて、冒険者ギルドについてご説明しますね」
「お願いします」
何時も通り、一通りの説明を受けた後、先の質問に答えてくれる。
「この国、と言うか島にはダンジョンの数だけ町が存在します。逆に言えば、王都のみダンジョンがありません」
「ダンジョンが危険だからですか?」
「はい、昔はダンジョンからモンスターが溢れる事がありましたので。監視を含めて、軍や冒険者の集落が、町へと成長して行きました」
「なる程、それで沢山のダンジョンの国となったのですね」
当然と言えば当然の結果である。
「はい。なのでどの町でも冒険者は不足しがちです」
「冒険者登録の際に、スキルを書きましたが、盾術を持っています」
「ええ、覚えていますよ。それが何か?」
「盾使いになろうと思いますが、需要はあるかなぁと思いまして」
「勿論。それどころか引く手数多ですよ!」
職員さんの話を聞く限り、とうとうパーティを組まなくてはならなくなりそうである。
「ちなみに、どうやってパーティを組めば良いのでしょうか?」
「新人をいきなりダンジョンに連れて行くパーティはありません。しかし地上にも、薬草採取や食材や素材を得る依頼はありますので、その様な依頼を繰り返しながらパーティの候補をお互いが探すのです」
「なる程」
「それから・・」
壁に取り付けられた掲示板の一つを指さす。
「パーティと言うのは、赤の他人の集まりです。ダンジョンに入ってからウマが合わず解散する事もありますし、不幸な別れ方をする場合もあります」
「やむを得ないのでしょうね」
冒険者とは、常に危険と隣り合わせと言う事だ。
「そんな時に、自分がどの程度使えるのかアピールするのがあの掲示板です」
「へぇー、便利なシステムですね。ちなみにどの様な事がアピールポイントになりますか?」
「最も公正なのは、ダンジョンの階層移動アイテムですね」
「階層移動アイテム?」
「この島のダンジョンは、十階層毎にボスが居て、ボスを倒すと、その階層に転移出来るアイテムが必ずドロップします。正確には、ボスの部屋の先にある下に繋がる階段と地上に戻る魔方陣がある部屋に転移されます」
「なる程、その階層までは確実に行ける実力があるとの証明ですね」
「その通りです」
聞けばボスを倒さなければ手に入らないため、買って手に入れるにはかなりのお金が必要になり、誤魔化しは通用しないらしい。
必要な情報を職員からもらうと、礼を言ってギルドを後にする。
ギルドで聞いたお勧めの店を回りながら、最後に宿屋で今後の事を考える。
「先ずは盾術の練習が必要だから、地上で練習しながらパーティを探す。パーティを組んだら、ダンジョンに潜って、最低十階層のボスを倒す事を目指す・・か」
これからの計画をざっくりと立てる。
何はともあれ、装備を揃えるため防具屋へと向かう。
「盾職? ならば盾には財布が許す限りのとびっきり良い物にしなくちゃな。身体も出来ればフルプレート辺りにしておきたいが」
「やっぱり盾職としては、譲れない所ですか?」
「あのなぁー、盾使いが防具、しかも盾ケチってどうすんだよ・・。人に因っちゃ二個や三個も持って行く奴すらいるぐらいだぞ?」
「そうなんですか!?」
そして武器屋にも行くようにも勧められる。
「いいか? 一番接近しているのは盾使いだ。一撃を入れればパーティは楽になる。切る、突く、叩くの武器は用意すべきだ」
「なる程・・、だとしたら何を用意したら良いですかね?」
「基本は剣とメイスを持っておくべきだろう」
リブラ侯爵様からのお金と、自分で稼いだ分と、ミツカ(神)様からの就職祝いがあるから、目立たない程度の新人装備を買い揃えて置く。
真新しい装備で、ど新人ですと言う雰囲気を醸し出しながら、地上での依頼をこなしてみる事にする。
正直パーティについては、先延ばしにして棚上げ状態ではあるが。
「さて、盾術と言うのがどう言う物が試してみるか」
挑発でモンスターを呼び寄せる。
シールドガードで受け止めてみる。
シールドダージで、突進や攻撃をいなしてみる。
「流石に盾術の神級、全く問題がないなぁ」
十体近い大小様々なモンスターが、盾に向かってくるが、平然と押し返したり、受け流したりする。
「このままじゃ埒が明かないから、攻撃してみるか」
基本技の攻撃技の二種類を試してみる。
シールドバッシュ。盾で殴る
シールドチャージ。盾で体当たりする。
ステータスの基本値に加え、スキル『盾術』『装備強化』『身体強化』がそれぞれ神級だとどうなるか?
「うーん、これは良く分からないな」
モンスターは跡形もなく、きれいさっぱり吹き飛んでいた。
跡形も無くなってしまっては、依頼の達成が分からなくなる。
ダンジョンなら粉々になっても、アイテムはドロップするので、ダンジョンに入れないか、職員に相談してみる事にする。
「試しにダンジョンに入ってみたいんですが・・、ダメですよね?」
「ん? 誰でも入れますよ?」
「やはりそうですよね。入れる・・えっ!? ええぇぇぇえぇぇ!? そうなんですか? どうして?」
てっきりダンジョンには、パーティで入る物と思っていたのだ。
「いや盾使いGさん(ノバ)は、パーティの組み方をと仰っていましたので」
「・・・あっ!? そう言えば」
「実力だろうが見栄だろうが、自己責任です。ソロで入られている冒険者もいらっしゃいますよ」
「そうだったんですか・・」
確かに登録の際には、パーティの組み方しか聞いていなかった。
「一階、二階程度でしたら、逆に実力を測る意味でも一度は入ると良いですよ」
「なる程・・、ありがとうございます」
その足でダンジョンに入ってみる。
ダンジョンは十階層までは初心者向けで、地上では中級レベルと言われている。
地上では跡形もなかったが、討伐依頼のモンスターを見てみると、中級ぐらいのモンスターは潰していたようなので、サクサクと進んで見る。
終いには十階層のボスにも挑戦するが、あっさりと片づけられた。
しかもどんな倒し方しても、アイテムは必ず手に入るのは嬉しい限りだ。
一旦地上へと戻り、ギルドにドロップ品の買い取りを依頼する。
ダンジョンでは各階で出現するモンスターは決まっており、ドロップ品も同じである。
勿論、レアドロップやレアモンスターは存在するが。
そうなると需要の高いものは、ダンジョンであっても常時依頼が成立する。
「へぇー、盾使いGさんは、浅い階ならソロでやっていけるのですね」
パーティを組む際には、ギルドに報告する必要がある。
多くは依頼料の取り決めの公正さと、万が一の遺品の受取の約束である。
「いえ、そうでは無くてですね・・」
「何か理由でもあるのですか?」
「モンスターの解体が苦手な物で・・」
「ああ、納得しました」
生理的に受け付けないと言う甘っちょろい者は、当然冒険者なんかになれない。
ここでの解体の苦手とは、素材を分ける技術の事を指す。
折角倒したモンスターが、解体が下手なために、素材が買いたたかれる事がある。
それならば、どんな倒し方してもドロップ品として一定の質の物が手に入るダンジョンの方が良いとなるのだ。
その日からダンジョンを深く潜って行く事にする。




