表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/22

盗賊をやってみる

【盗賊をやってみる】


物理職になるとは言っても、勇者だった頃に居た世界の左の島と、魔法職だった世界の右下の島々は、心情的に避けたい。


「ミツカ様。出来れば今まで行ってない場所が良いかと思うのですが?」

「分かったわ。ならば右上の九つの島から選びましょう」


そうミツカ(神)様に伝えると、あっさり了承してくれた。


ギフト『職業選択の自由』で一旦無職になり、偽装の指輪で転職する。



[ 名 前 ] ????(ノバ)

[ 職 業 ] 盗賊

[ レベル ] 1


[ 生命力 ] 50

[ 技 力 ] 40

[ 腕 力 ] 5

[ 耐久力 ] 5

[ 知 力 ] 5

[ 精神力 ] 5

[ 早 さ ] 20

[ 器用さ ] 20

[ 運   ] 20

[ スキル ] 短剣術(初級)、鍵開け(初級)、罠解除(初級)



偽装の指輪を外した実際のステータスは、こんな感じだ。



[ 名 前 ] ノバ(ノバ)

[ 職 業 ] 盗賊

[ レベル ] 1


[ 生命力 ] 50

[ 技 力 ] 40

[ 腕 力 ] 5

[ 耐久力 ] 5

[ 知 力 ] 10

[ 精神力 ] 10

[ 早 さ ] 999

[ 器用さ ] 999

[ 運   ] 999

[ スキル ] 短剣術(神級)、隠密(神級)、罠能力(神級)、気配察知(神級)、時間制御(神級)、クリティカル率アップ(神級)、生命力超回復(神級)、移動系能力群(神級)、経験値取得率(神級)、レベルアップ補正(神級)



同じスキルもあるけど、やはり魔法職とは違ったステータスや、スキル群に感心する。


ただ気になったのが、生命力や技力が今までより極端に少ない。

いや盗賊だから当然だろうけど、これじゃ一瞬で死んじゃうかもしれない。


「ん? どうかしたのノバ君?」


ステータスを見て落ち込んでいるのに気づいた、ミツカ(神)様が声をかけてくる。


「いいえ。無職以外の方が死に易いって本当だったんですね」

「えーっと・・、どれどれ? あー、本当だ」


ミツカ(神)様もステータスが見れるのだろう。


「気を付けないと危険ですね」

「そうね『気配察知』と『時間制御』があっても油断しちゃだめよ?」

「えっ? この二つがあると生存率が上がるのですか?」

「後でスキルはゆっくり『鑑定』してもらうとして、『気配察知』の神級は、自分への攻撃が分かるのよ」

「攻撃? どう言う事ですか?」

「暗殺のプロなんかは、気配なく攻撃できるから、不意打ちとか可能になるわ。でも『気配察知』の神級ともなると、自分へのダメージ量が分かるのよ」

「自分に向けられた気配では無く、自分を傷つける何かを察知できると?」

「そう言う事ね」


とんでもないスキルがあった物である。


「ダメージを察知できれば、あとは『時間制御』の神級で何とかなるわ」

「『時間制御』って言うのは?」

「詳細は省くけど、反射、反応、回避、加速などの、時間に関わる能力ね」

「・・・えっ!?」

「ぶっちゃけ言えば、ダメージを察知した時点で、その攻撃は当たらないって言う感じ」

「・・・はぁ!?」

「どちらのスキルも常に発動しているから、寝てても問題ないわね」


死に易いと思ったけど、生存率大幅アップではないだろうか。


「ただデメリットがあって・・」

「どの様な事でしょうか?」

「あなたの事を思っての、真摯な気持ちの平手打ちとかを、気付いたまま受けなくちゃいけないの」

「・・さ、避けられる物を、敢えて受けると言う勇気ですね」

「その通りよ」


とってもありがたい・・デメリット?である。




簡単なスキルの説明、生きるために必要な部分だけ聞いた後、冒険者ギルドに登録する。


「先ずはスキルをきちんと調べておこう」


今までの魔法職とは全くと言って良い程違うのだから、スキルを知る事は重要だ。



短剣術はその名の通り、短剣を使うためのスキルだ。

両利き、多連撃、刀身の鋭利化や硬化といった物が含まれている。


隠密は気配を消すスキルだが、音や匂い、気配だけでなく、完全に空間と同化したり、偽の気配で混乱させる事が出来る。


罠能力は、罠の探知や解除、設置が出来、鍵開けも含まれるスキルである。


クリティカル率アップに関しては注意が必要だった。

大ダメージを与える率がアップするのだが、即死または致命的ダメージでは無いと言う事。






一通り確認し終わると、ミツカ(神)様の指示の元、九つある島の一つへと向かう。


その島・・王国は、正直今までの国とは違い、大変のどかだった・・


本当に王都か?と思わせる王都の門番に身分証を見せる。


「盗賊職かあ。いやー、よくもまあこんな辺鄙な国へ来たもんだな」

「・・・はぁ」


盗賊と言う職業より、冒険者が来た事に驚いている様子だ。


「きっとすごい職業なんだろうな」

「うーん、どうでしょうか?」

「謙遜するなよ。何にもない国だがゆっくりして行ってくれ」

「はい、ありがとうございます」


ギルドを使うかどうか決めかねるので、お勧めの宿屋を聞いてみる。


「お勧めの宿屋? わっはっはっはぁ・・、一軒しかないんだな、これが」

「・・そうですか」


非常に素朴な疑問をしてみる。


「あのー失礼ですが、何でこんなにのどかなのでしょうか?」

「ん? 昔はこの島を取り合って戦争があったらしいんだが、なーんにもない土地なもんで、自治権を与えてたら独立されたけど、何時でも取り返せると放置さたらしい」

「・・・そうですか」


昔はどうだったか分からないが、何とものどかな話しである。


この島は酪農が主な産業であり、聞けば他の島との玄関口である港町と、島の中央にある名ばかりの王都と言う町の他は村しかないらしい。


その王都に宿屋が一つのみ・・、ある意味なんと素晴らしい国であろう。




一軒しかないお勧めの宿屋?に行って、ふと冒険者が居ない事に気づく。

何故、冒険者はいないのかと、宿屋の主人に尋ねてみる。


「ん? ギルドには寮があるからそっちに行くんだ」

「・・・りょ、寮?」


冒険者ギルドが、冒険者のために寮とは前代未聞の珍事である。


「どうして寮をギルドが用意するんですか?」

「冒険者に来てもらうためだろう」


なーんにもない国とは言え、モンスターは出るので自警団みたいな軍はあるらしい。

しかし戦闘のプロフェッショナルとして冒険者も必要であり、少ない依頼でも定着して欲しいから色々と優遇しているとの事だ。


何とものどかな話である・・


自分に割り当てられた部屋で独りごちる。


「ギルドに行ったら・・、即パーティに入れられないか?」


一抹の不安を抱えながら、これからの事を考える。

しかし初めての物理職・・ 悩みに悩んだ挙句、冒険者ギルドの門をたたく事にする。




冒険者ギルドは、共通した建物の仕様があるのだろうか?

そう思わせる様な、何処とも同じようなギルドのスイングドアを開いて中に入る。


良く言えばのんびりとした・・、悪く言えば暇そうなギルドの職員に声をかける。


「すみません。少しよろしいですか?」

「ようこそ草原の国、王都の冒険者ギルドへ」


笑顔で答えるギルドの職員に悪いが、この国は草原の国と言うのを初めて知った・・


「先日この国に就いたばかりなので、この国の事をお聞きしたいと思いまして」


冒険者ギルドの登録証を、職員に手渡す。


盗賊Fノバさんですね。しょくぎょう・・は・・、盗賊職?」


親しげな雰囲気が、一変する・・。久々と言うか、懐かしいと言うか・・


「あ、あのぉー、盗賊が何か?」


凍りついた職員に、意を決して声をかけてみる。


盗賊Fノバさん? この国のギルドは、冒険者を優遇していると言う噂を聞いてきたのですか?」

「いいえ、その話はこの島に着いて知りました」


魔法職の時の対応を思い出させる感じが、ひしひしと職員から伝わってくる。


「では、回れ右をしてとっとと別の島へ行きやがれです」

「ええぇぇっ!? ど、どう言う事でしょうか?」

「この国のギルドは、盗賊如きなんざお呼びじゃねぇって事です」

「ち、ちなみにですが、もし優遇を知って来たと言ったら?」

「縄でぐるぐる巻きの簀巻きにして、海まで蹴りながら運んで、そのまま別の島に流れてもらいますです」


危なかった・・。


「さ、参考までに、どうして盗賊がダメか教えていただけませんか?」

「・・良いでしょうです。懇切丁寧に教えてやるので、一度で理解するです」

「は、はい・・」


怖い・・、本当に久しぶりに不遇職さを感じさせてくれる。


「この国の主な産業は、酪農で、全大陸の殆どが草原です」

「その話は聞いています」

「そしてこの国には、ダンジョンはありませんです」

「そうですか・・・、えっ!?」


ダ、ダンジョンがない・・って、盗賊に取ってよろしくない感じがぷんぷんする。


「殆どの残りは、川や湖、沼、森などです。特に森からモンスターが現れますです」

「は、はい・・」」

「モンスターのタイプは大まかに二通りで、草をものすごい勢いで食い荒らすモンスターと、家畜を襲う足の速いモンスターです」

「なる程・・」

「草食系モンスターは、外皮が非常に固く、通常の武器でさえなかなかダメージが通りません。盗賊の短剣など論外です」

「・・・なっ!?」

「足の速いモンスターは、攻撃が当たらず、狩人職などによる罠で捉えてから倒しています。いくら盗賊の足が早くても、多分追いつけないでしょうねです」

「そ、それは・・」

「盗賊のスキルが輝くダンジョンは、この国には存在しませんです」

「先程、拝聴しました・・」

「国民はギルドに期待しておりますので、失敗は極力避けねばなりませんです」

「当然かと・・」

「役立たずの盗賊が、引っ掻き回してギルドの質を下げられては非常に迷惑です」

「で、ですよねー」


充分に理解できたか? 納得したか?と目で語ってくる。


「ご理解できたようですので・・」

「あのー、一つお願いがあるのですが」

「ああん?」


てめー、まだ分かってねぇのか?と言う雰囲気が滲み出る。


「せ、せめてこの島、国に来た記念にモンスターと、討伐している所を見せていただけませんか?」

「ふむ・・、そうですね・・」


ギルドの職員とて鬼では無い。

手を出さずに大人しく出てってもらえるなら、この程度の協力はすべきかと考える。


「分かりました。ちょっと行ってみましょうです」

「お、お願いします」


急なお願いだったにも拘らず、快く引き受けてもらえる。




ギルドの職員に付き添われて、草原へ出てしばらく進むと、モンスターとの戦闘が見えてくる。


・・あれ? サイズが何か変な気がする。


「職員さん・・、あれは?」

「グレートライノセラスです。犀のモンスターで、体高は大人の背丈の有に三倍ありますです」


物理職と魔法職の混合パーティが、ひたすら攻撃しているが決定的なダメージに至っていない様子だ。


「あのパーティでも、かなり長い時間かかります。あれだけダメージを与えると、暴走して周囲に甚大なダメージを与えるでしょうです」

「つまり逃がせないと?」

「はい、ギルドの信頼問題にもなりますです」


見る限り、確かに盗賊ではダメージは与えられず、ソロなんかではもっての外だろう。


「お分かりになりましたか? キッチリ仕事をこなせる人達が必要なんです」

「そうみたいですね・・」

「では、次の場所へ向かいましょうです」

「・・はい」




次は足の速いモンスターの対応についての見学である。


「ここで待っていて下さいです」

「大丈夫なんですか?」


目の前には、親子の家畜がのどかに草を食んでいる。


「既に罠は仕掛けられていますです」

「つまりこのまま待っていれば良いと?」

「いいえ・・。仕掛けられた罠に百%かかる事などあり得ませんです」

「ちなみに確率は?」

「酪農家の方々には、五分五分と。実際には二割程度でしょうねです」


そんな話の最中、砂煙をあげて猛スピードで突っ込んでくる何かを見つける。


「あれが?」

「そうです。ブースターライオンと言います」


あのスピードに対応できる人間は、ごく限られるだろう。


そう思った瞬間、罠が発動しブースターライオンの動きが取られる。

隠れていた冒険者たちが一斉に襲い掛かる。


「こうやってモンスターを討伐していますです」

「しかし効率が悪いですね・・」

「この国のモンスターの習性なのか、一度上手くいった所に再び現れますです」

「後手に回るしかないと・・?」

「その通りです。しかし他に方法がないのが現状です」

「森の方には?」

「定期的な討伐を仕掛けていますです」


定期的な討伐から漏れたモンスターが、問題となっているのだろう。


「もうよろしいですか?」

「ありがとうございます。お手数をおかけしました」


礼を言うと、二人で王都と言う名の町へと帰って行く。







ギルドでノバは職員と別れると、宿屋で今後について考える。


「流石はミツカ様・・。とんでもない場所に、盗賊職で送ってくれたなぁ」


盗賊職にダンジョンがないと言うのは、不遇以外の何物でもない。


「草食系のモンスターの多くが、グレートライノセラスばっかりだったら、ソロじゃなくても盗賊は難しいかな・・」


この島に暮らす人々の生活を脅かしてまで、冒険者をやろうとは思わない。


「となると・・、足の速いモンスター・・か」


短剣とスキル『短剣術』でダメージを与えられるだろう。

スキル『隠密』『気配察知』『時間制御』があれば取られられるだろう。

スキル『クリティカル率アップ』で大ダメージも可だろう。


ただしギルドは使えない。あくまでも自己責任である。


「まあパーティは避けたかったし、独自のルートを作った方が良いな」


そのまま町を回って、交渉を行う事にする。




宿屋が一件しかない王都に、武器屋に防具屋、道具屋がそんなにあるはずがない。

件数が少なければ、ギルドから卸される素材で十分になる。


単純な話であるが、この草原のモンスターからの素材では、大した収入にならない事が判明する。


欲しているのは鉄などの金属で、他の島から輸入しているらしい。

盗賊寄りのスキルや、ギフトの『移動系能力群』とギフトの『空間倉庫』で、商人をやった方が、遥かにもうかるだろう。


依頼を受けられず、依頼料が貰えない。

素材を引き取ってもらう事が出来ない。

寮に泊まる事が出来ない。


この国では冒険者ギルドが使えない事が、とても痛手と言う事が分かる。


「これはどうやって生計を立てればいいんだろう?」


手を付ける前から、ヤバい状況がひしひしと迫っていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ