表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/22

水系の魔法使い 後編

【水系の魔法使い 後編】


魔石とは、モンスター化した動植物の中に存在する。

良く分かってはいないのだが、動植物に魔石が出来るとモンスター化するとも言われる。


どちらが先か、どちらも正しいのかは分からないが、この世界の常識とされている。


そしてこの魔石は、色々なアイテムとして使用できる。

更に属性を持つモンスターの魔石は、その属性が魔石に宿る。




動物の中には身を守る手段として、獲物を狩る手段として、不思議な能力を秘めた物が存在する。


発電器官


体内に電気を作り出す臓器や器官を持っている物がそれに当たる。


モンスター化すると、雷系属性と言う非常にレアな属性の魔石が出来るのだ。




このモンスターは、二階層から下でしか現れず、一攫千金を狙う冒険者はこの魔石を求め、この種のモンスターを倒そうとする。




その日も日銭を稼ぐため、二階層に来ていた。


少し先から戦闘音が聞こえてくる。


「(やっぱりこの先で、誰かが戦っているみたいだけど・・、変な音がするな)」


邪魔にならない様に、コッソリと覗きこむ。


五人組のパーティが、電気エイがモンスター化した、トロピダーと戦っている。


「(へぇー! 変な音がすると思ったら、あれが雷系魔法か・・)」


ただ傍から見ると、かなり無理な戦いをしている様であった。


雷系魔法に何の対応も手段もしていない様子で、腰までの水で動きが鈍い上に、もろに雷系魔法を喰らって、満身創痍の状況である。


遅かれ早かれ、パーティは全滅して、モンスターの餌になるのは間違いないだろう。


荒地との場合とは違い、近くのモンスターは一体のみ。

気付かれても問題ないと判断して、パーティに声をかける。


「助けが必要ですか?」

「えっ!? た、頼む!」


了承を取り付けると、横やりや横取りでは無い事を、お互いに認めて参戦する。


「ドレナージ!」


モンスターや冒険者たちの周辺の水を、一気に排出する。


「「なっ!?」」


いきなり水が無くなり、地面が現れ、モンスターはもがくだけの状況。


「よっしゃあ!」


思わぬ幸運に冒険者たちが襲いかかるが、雷系攻撃の餌食になる。


「(・・・少しは学習しましょうよ)」


自分たちが負ける原因は、水だけでは無い事を忘れているかのようだった。


「アクアレーザー!」


内心溜息を吐きつつ、トロピダーに止めを刺せば、アイテムをドロップする。


「へぇー、これが雷の魔石ですか。初めて・・」


アイテムを取ろうとすると、直前で転がりながらアイテムをかっさらう姿。


「へっへぇー! やったぜ! 俺たちが倒したんだ!」

「先程、ヘルプを確認して、了承・・」

「お前、横やりするんじゃねぇよ!」


ノバの言葉に被せつつ、パーティが殺気立つ。


「もう一度言います・・」

「ギルドでも、横やりや横取りはご法度・・」


ノバの言葉を遮って、あくまでも自分たちの正当性を一方的に突き付けるので、ドレナージを黙って解除する。


先程の戦闘のダメージから回復して居ないパーティの面々は、まだ立ち上がれず、腰の深さでも溺れてしまう。


「もう一度聞きます。先程ヘルプの了承がありましたか? 横やりや横取りは倒れる寸前で止めを刺して、自分たちが倒したと主張する事です。トラブルが起きない様に、助けに入らなければ、全滅したと考えて、アイテムはヘルプした人たちの物と決まっています」

「わ、分かった! 悪かった、俺たちが悪かった!」


ドロップ品を全部差し出され受け取ると、ドレナージを使い回復を待つ。


「次は、あなた達を助けない。信頼も信用もしない」


きっぱりと言い切ると、元来た道を戻りながら考える。


「(はぁー、パーティって言うのは、僕にとって良くないみたいだ・・)」


首を振りながら、自分のための狩り場を探す。






宿屋でその日の夕食を突っつきながら、今日の出来事を考えていると、目の前に人影が出来る。


「・・えっ!?」


思わず顔を上げると、見知らぬ女性が立っていた。


「冒険者ギルドです。あなたにお聞きしたい事があります。ご同行願います」

「えっ?」


訳が分からず戸惑っていると、職員が理由を告げる。


「あなたに獲物を横取りされたと、あるパーティから訴えがあります」

「横やり・・ですか? 分かりました、すぐに」


そう言うと、ギルドの職員に先導され、ギルドの一室に案内される。


思った通り、つい先ほど助けたパーティが居た。


「こ、こいつだ! こいつに間違いねぇ! 横やりした上に、アイテムを横取りしたんだ!」


話し合いの開始の合図の前に、勝手に我鳴り始める。

これにはギルド職員も、もう一人いた男性も顔を顰める。


「だまれ! 好き勝手に話を始めるな!」


もう一人の男の方が、パーティを一喝すれば黙りこむ。


「おれはこの町の冒険者ギルドのギルドマスターをやっている者だ」

「初めましてギルドマスター。僕は水使いEと言います」


冒険者ギルドの登録証を差し出す。


「こいつらの騒ぎで、大体の話は分かると思うが・・」


ノバは黙って、雷の魔石とそれと一緒に出たアイテムを出す。


それを見たパーティが色めきだす。


「お聞きしたいのですが?」

「ん? 何だ?」

「彼らのランク、装備で、トロピダーに勝てたと思いますか?」

「それは・・」


一目見て無理と判断するが、戦闘に常と言う言葉が無い以上、ギルドマスターも口籠る。


「一つ提案がありのですが?」

「提案? どんな?」

「皆で一緒にトロピダーを狩りに行きませんか?」

「「えぇっ!?」」


その場に居た誰もが、僕の提案に驚く。


「当然、僕も切り札を見せる訳ですから、それ相応の条件を付けさせて欲しいのですが」

「どんな条件だ?」

「今後、ギルドから僕に一切、協力の要請をしないと」

「何だと!?」


ギルドマスターや職員の前で、強力な力を見せれば、ギルドは僕の力を当てにする。

そう思っての牽制であった。


「切り札と言うのは、そう言う物ですからね」

「・・なる程」


ギルドマスターは、目の前の水使いノバの実力は測りかねる。

が、たかが冒険者一人である。


「良いだろう。後はお前たち次第だ」


今まで沈黙していたパーティに水を向ける。


「そんな事言われてもな・・、本当にギリッぎりの戦いで、もう一度やれと言われても・・」

「何なら少しぐらいは手伝ってやるぞ?」


ギルドマスターの言葉に、お互い顔を見合わせるが、自分たちの実力は自分たちが良く知っている。


「じゃあ、お話が纏まりましたらご連絡下さい。もっとも信頼できない冒険者が居る町には長く居ませんけどね」


僕はこれ以上の話し合いは時間の無駄と思い、さっさと帰ってしまう。






宿への帰る道で、誰かが殺意を持って後を付け感じ取っていた。


彼らは再びトロピダーと戦う意欲は無いだろう・・

ギルドマスターも、彼らの実力に疑いの目を向けていた・・


しかし彼ら自身は、僕の実力を見ている・・


しかし僕の提案に乗らなければ、自分たちの立場が悪くなる事も知っている。


彼らが選ぶであろう最悪の結末を。


予想通り、人気のない通りで、顔を隠した五人組が囲んでくる。


「あなた達はどなたですか? 何の御用ですか?」


闇打ち・・


そんな言葉が脳裏に浮かぶと同時に、彼らは武器を抜いて襲い掛かってくる。


ガキッン!


「「なっ!?」」


不審者たちは、思いがけない手応えに驚き、跳び離れる。


「ほぉ、対物理障壁か・・。魔法阻害領域でしかも無詠唱ときた」


別の方角から声がする。

姿を見せるは先程別れたばかりの、衛兵を引き連れたギルドマスターであった。


「な、何で・・」


不審者たちから驚きの声が漏れる。


「ああん? 下種の考える事なんざ、割と決まっているもんなんだよ」


五人組はあっという間に、衛兵たちに縛り上げられる。

顔の覆いを剥がせば、やはり先程のパーティの顔が現れる。


「あいつらじゃあ、手も足も出なかったんだろうな」

「・・囮にした、と言う事ですか?」

「ん? そんな顔するな。実力差は分かっているつもりだったがな」

「この国で魔法使いに対して、持つべき感想では無いと思いますがね」


魔法阻害領域で魔法使いが、囮にされたらどうなるかも考えられないのか?

何にしても、囮にされた方は気持ちのいいものではない。


「まあ、そう言うな。明日、ギルドの方に顔を出してくれ」

「・・気が向いたら」


その場ではその様に応えて置く。


既に僕の中では、このギルドに顔を出すつもりは無かったが。




二日、三日した後で、ギルドマスターは執務室で愚痴る。


「おいおい。本当に来ないつもりかよ・・。何て器の小さい野郎だ!」


ギルドマスターの言葉を、誰もが聞くと思っていただけに、苦々しげな顔をする。






宿の自分に割り当てられた部屋に戻ると、ベッドに『使徒の訪れ』が寝ていた。


「・・えっ!? ミツカ様!? 何で・・寝てる?、ええっ!?」


普通に待って居てくれれば、此処まで慌てなかったかもしれない。


「驚いた? 吃驚した?」

「お、驚きましたよ、まさか寝て居るなんて・・」


ガバッと起き上がると、茶目っ気にも両手でピースサイン。


そんなのどかな雰囲気を壊しながら、ミツカ(神)様が切り出してくる。


「お気に召さなかったのかしら?」

「・・えっ!? ええ、まあ・・」


最初何を言われたのか分からなかったが、ここでの生活の終止符を確認してくる。


「実力差? 魔法阻害領域の魔法使いが、どれほど不遇か理解して居ないんですかね」

「上に立つ物としては、時には非情になる必要はあるけれど・・。彼らの攻撃の前に、止める事はできたはずよね・・」


僕の溜息に、ミツカ(神)様も同意する。


あの場は、僕自身の実力を測るために用意されたと思われても仕方が無い。

並みの冒険者なら仕方ないと割り切るかもしれないが、実力者に同じ事をすれば反感を買うのは当たり前だ。


それが分からないギルドマスターに付いて行くのに、危険を感じるのである。


「じゃあ、転職ね!」

「はい・・、ご迷惑をおかけしますが・・」

「何時も言っているけど、こちらの責任なのよ?」


転職の度に謝る僕に、ミツカ(神)様は言葉を遮る。


「いいえ、そうではなくて。パーティを組む事に・・ちょっと」

「ああ、そう言う事ね」


ミツカ(神)様は、こっちに呼ばれて、酷い王に仕えさせた責任と勘違いしたみたいだ。


でもその後の生活は、僕自身が乗り越えなくてはならない部分が大きい。

乗り越えなくても良い、ヒモと言う生活も用意されているのに、僕は拒否している。


「パーティに人助け、有名なる・・、ここはあなたに乗り越えてもらいたい」

「分かっています」

「そのために機会と場は、出来る限りも受けるわ」

「・・ありがとうございます」


ミツカ(神)様は、これから先の支援を約束してくれる。


「ゆっくりと考えなさい。心の傷を癒せる方法を」

「・・はい」


しかし心の問題は自分の問題・・。ミツカ(神)様でも何ともできない。






二人の沈黙を破るかのように、ミツカ(神)様が口を開く。


「差し当たり、次の職業をどうするかだけど・・」

「そうですね・・、どうしましょうか」

「魔法を使う基本職は、全て終わったから・・」

「はい・・」


身分証明書を作るため、各職業で冒険者登録してしまっている。

そして多かれ少なかれ有名になってしまっているのだ。


「別の場所は良いとしても、同じ職業に戻るとなると、優れた魔法使いが居る可能性というのを示してしまっているから・・」

「あちらこちらから、色々な手が回ってきますよね?」


すぐにあの王国が、自分と結び付ける事は無いだろうが、他の所から何かしらアプローチがある事は予想できる。


「となると・・、魔法職をすっぱり諦めて・・」

「物理職か生産職となりますかね・・」

「そうなるわね・・」

「物理職って、あまり不遇職を聞かないんですけど、あるんですか?」

「勿論あるわよ?」


物理系の基本職を説明してくれる。


「物理職は、戦士、盗賊、狩人が基本なんだけど、パーティには生産職の薬師も含まれるわ」

「薬師? 生産職が戦闘に加わるのですか?」

「回復の出来る僧侶が少ないから。聖系魔法使いなんて殆ど見ないしね」

「なる程、回復役としてですね」


薬師は意外になり易い職業の一つである。

村で暮らすには、最低限の薬草や、薬の知識は必要とされるためだ。


逆に僧侶は教会に勤めているが故に、教会の外に出る事はあまりない。


僧侶を仲間にするには、稀に教会の外に出てきた者をパーティに入れるか、教会関係者とコネを持って、紹介してもらうぐらいしか方法が無い。


得にくい僧侶よりも、なり易い薬師をパーティにとなるのだ。

尤も他の物理職だって薬の知識はあるが、本職にはやはり叶わない。


「話が脱線したけど、物理職の不遇はザラにあるから選り取り見取りよ?」

「そ、そうなんですか・・」


今までの魔法職の不遇を考えれば、かなり不安を覚える。

不遇と言うよりは、嫌われ者と言う感じであったから・・




物理職の不遇は、魔法職と違って、「ああ、そうか」と人にはなかなか理解してもらえない不遇である事を知らされる。


「但し・・」

「何でしょう?」

「物理職は不遇と言っても、人に理解されない不遇だから・・、ソロは少数派よ」

「それは、つまり・・?」


パーティについて考えなくてはいけないと言う事だ。


「多分、パーティに誘われる機会が多くなると思うわよ?」

「そ、そうですね・・」

「さっきも言ったけど、物理職の不遇は、人に理解されない不遇と言う王道なの」

「不遇の王道ってすごいですね・・」


あまりの言葉に、唖然としてしまう。


「良い? 魔法阻害領域と言う特別な環境でなければ、魔法職は総じて花形職よ」

「そうですね」

「物理職だって、そんなに不遇と言う話を聞いた事がないでしょう?」

「はい、不遇と聞いて驚いたぐらいですから」

「しかし不遇が存在するのは何故か?」

「どうしてでしょうか?」

「そ・れ・は、百聞は一見にしかず。基本職の三つで体験してもらいましょう」

「そ、そうですか・・」


この場では教えてもらえない様だ。


「つまり、いきなり実地で不遇の王道について学ぶと?」

「そうなりまーす! じゃあ、レッツ転職!」


妙にテンションが高いけど・・、何か裏があるんじゃないだろうか?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ