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聖系の魔法使い

【聖系の魔法使い】


僧侶そして、聖系魔法使いの不遇の土地。


魔法阻害領域のため、聖系の魔法使いから見捨てられ・・

薬草を食みながら、生き延びてきた冒険者たち・・

薬やポーションを作って売る事で生活してきた人々・・


今更何の用だと、嫌われる聖系魔法使いに与えられた仕事。


それが・・墓守。


「うーん、おかしいな・・。アンデッドなんか出て来ないぞ?」


最初は冒険者を弔った墓地から、アンデッドが生まれ町を襲うと言う事件。

そしてアンデッド退治に冒険者が向かうが、誰ひとり帰って来ないと言う事件。


「多分、最初のアンデッドの事件が切欠なんだろうけど・・」


深夜の墓場で、ただ一人で状況を整理する。


一応体力の続く限りと、三日から四日連続で深夜番をする。

休養日をとっって、その後は一日おきに見張りを続けるが、アンデッドが現れない。


「アンデッドが解決していないなら、まだアンデッドは出るはず。もしアンデッドが倒されているなら、別の理由で冒険者が戻って来ない」


その理由が分からない。


「行方不明の冒険者は、全員が物理職で精神を病んだか、魔法攻撃を受けているのではないかと言うのが、ギルドマスターの見解か・・」


この森の国には、木のモンスター化した物が居ると聞いている。

木のモンスターには、花や実の匂いで誘って捕まえ、養分にする種があるのは有名だ。


「でも基本動けないから、匂いで引き寄せるんだよな。周りを調べた限りでは居ないと思うけど、木だから正直分からないのも確かだし」


見分ける簡単な方法は、火を押し付ける事である。

木のモンスターは総じて、火と苦手とする。


「でもそれは禁じ手なんだよなぁ」


最悪は『鑑定』で一本一本調べるしかないと考える。


「まあ木だけじゃないからな。蝙蝠系だってあるし」


蝙蝠系のモンスターには、催眠や魅了、感覚を狂わせる能力を持っている物が居る。


深夜に空を運ばれたら、全く追跡のしようがない。


「明日、ギルドに寄ってこれからの事を相談しよう」


その日の深夜番をしっかりとこなしながら、明日の予定を考える。




冒険者ギルドで、最初にあった職員に現時点までの報告をする。


「それは変ですね。ギルドマスターに確認してみましょう」

「お願いします」


するとギルドマスターが出て来て、一緒に相談に乗ってくれる。


「もしかすると、既に墓守の問題は解決しているのかもしれんな」

「どう言う事でしょう?」

「聖使いノバ君が言った様に、先ずアンデッドの件は、既に最初もしくは、その他の冒険者の手によって倒されている」

「ふむふむ」

「行方不明の件は他のモンスターが原因であるが、そのモンスター自体は、他の冒険者によって、既に討伐されてしまっていると言う可能性だ」

「ああ、なる程」


冒険者ギルド、森の国中央の町支部の多くの依頼は大きく分けて三つ。


一つ。貴重希少な薬草を食い荒らすモンスターの討伐

二つ。薬師の身を守る護衛

三つ。薬師が採取し易くするためにモンスターの駆逐


と言うのがメインとなってくる。


何処かで変なモンスターが居れば、討伐されてしまったかもしれない。


「どうしましょうか?」

「うむー。ギルドとしては、無駄な出費は避けたいが・・」


確かに解決した事件に、判断が付かないからと何時までも金が払うのは無駄である。


「良し。ギルドの方で、その様なモンスターの討伐がないか履歴を調べる。時間がかかるだろうから、その間は継続して深夜番を頼む」


完全に網羅は出来ないだろうが、大体の目星を付ける事は可能だろう。

含まれていれば依頼は終了になるし、居なければ・・別途相談かな。


少し前の事件だから、確認にも時間がかかるのは予想される。


「分かりました」


結果が分かるまで、深夜番を続ける事となる。


しかしその日から、町の雰囲気が変わった。






居心地の悪さが更に増したので、ギルドで相談してみる。


「最近、町の雰囲気変わった気がするんですが? 僕の事も含めて?」

「うーん、そう言えば・・」


職員も長く暮らしている訳では無いが、何となくは感じ取っているみたいだ。


「ああ、それはだなぁ・・」


ギルドマスターが、指でチョイチョイと耳を貸せという合図をする。


「超が幾つも付く、大事な薬の素材が見つかった」

「なる程・・」


いくら薬草の宝庫と言っても、中々手に入らない物があるのだろう。


採取する条件一つ取っても、シビアなポーションはいくらでも存在する。

事前に準備を完了させてから、且つ薬草がベストな状態で採取となる。


些細な事が黄金になるはずの薬を、ただのクズにする可能性があるのだ、緊張もする。


「それから、誰かさんも居るしな」

「・・納得しちゃいました」


そして聖系魔法使いの居る手前、絶対に失敗できない。

成功すれば、今までに増して邪魔と証明する絶好の機会。


町の人たちの視線の意味を、十二分に理解する。




居心地の悪さは、薬が出来るまでの時間と思い、深夜番に精を出す事で切り替える。


灯りすら無い・・


火をつけられない事による、周囲が漆黒と静けさに包まれた状況。


「ん? 足音? 町の方角から?」


あまりの静けさ故に、僅かな足音も聞こえる。


「(この深夜の時間に、誰が墓地に? しかも複数? 町から?)」


今までなかった事に戸惑うが、動かずに向こうから来るのを待つ。


町の方角を見ていると、灯りをともした人影が現れる。


「(どうやって灯りを!? 火系の魔法を使っても大丈夫なの?)」


揃いのローブをすっぽりと被った十名が、ノバの前に立ち並ぶ。


「こんばんは、聖使いノバ君」

「その声は、ギルドマスター? 一体どうしたのですか? それにその灯りは?」

「ん? これか? 火系魔法だと思ったのかな? これは生活魔法にある『灯り』と言う魔法だ」

「生活・・魔法?」


初めて聞く魔法に、ちょっとビックリする。


「それから、何事か? だったかな?」

「そ、そうです。何かあったのですか?」

「あった、ではなく、これからあるのだよ」


そう言うと、ノバを取り囲むように円陣になる。


「な、何ですか!?」

「君に大事な薬の素材になってもらいたいんだ」

「・・・えっ!? 薬の? ・・素材?」


ギルドマスターの言っている事が全く理解できない。


「世の中を作り直す魔王と言う薬を、召喚する素材ににね。まあ早い話が、魔王召喚の生贄になってもらいたいんだ」

「なっ!? 魔王の召喚? な、何を考えているのですか!?」


自分が神様に召喚された理由が、強制的に思い出される。


「私たちの様な優れた人材が、こんな所で埋もれさす様な世界は間違っている。魔王によって世の中を創り直し、我らが王となって、皆を楽園に導いてやろう」


何を言っているのだろうか、この男は?


魔王が自分のたちの言う事を聞くとでも?

もし呼び出せたとしても、真っ先に喰われるのは・・


「あなた達は・・」

「そこまでです!」


僕の言葉に被せる形で、ギルドマスター達とは全く別の方から声が聞こえた。


「・・えっ? 職員さん!?」

「聖使いノバさん、下がって! ギルド特別監査官です。このギルドでの行方不明事件で不審あり、と内偵調査を行っていました!」

「・・えーっと?」

「申し訳ありません。聖使いノバさん、あなたを囮にしました」

「ありゃりゃあ・・」


どうやら僕は、行方不明事件を究明するためのダシに使われたらしい。


「で、特別監査官殿、それでどうするつもりだね?」

「ギルドマスター。魔王を召喚する儀式のために、冒険者を犠牲にしてきた事は、今の話の中で明白になっています」

「だから、どうだと言うんだね?」

「既に森の国王都ギルド本部に、動きありを伝えてあります。どちらかが逃げ延びれば、あなた方は終わりです」

「では君たち二人とも生贄になってくれれば、魔王の誕生は早まるし、秘密は守られるという事だね?」


僕と監査官を包囲する輪が縮まる。


「聖使いノバさん、私が時間を稼ぎます。逃げて下さい。王都のギルドに行けば、後は上手く取り計らってくれますから」

「監査官さんは?」

「私は・・、あなたを囮にした責任を取らなければなりません。殿を務めますから、逃げて逃げて、必ず王都まで」

「・・逃げる?」


僕は監査官の言葉に、首を傾げる。


「どうやら、こいつはお前より利口な様だぞ? 既に手遅れが分かっている」

「・・手遅れ?」


今度は、ギルドマスターの言葉に首を傾げる。


「聖使いノバさん。時間がないんです、急いで!」

「うーん、分からないんですよね。逃げる? 手遅れ? どう言う事ですか?」

「クックックックッ、どうやら頼みの綱は、気が狂っちまったようだな。恐怖でよ」

「しっかりして下さい。あなたが、あなたが最後の・・」

「ホーリーウォール」


静かに一言発すると、墓地を囲むように、煌く聖なる壁が現れる。


「「なっ!?」」

「分からないんですよ? 教えてもらえませんか? ギルドマスターの方が捕まるとか、倒されるとか言う事は無いのですか?」


呆然とするギルドマスターや、邪教のメンバー一人ひとりに視線を巡らせる。


「ば、馬鹿な・・。これがホーリーウォール? 何故、直線の壁が円周状になっている?

いやそれよりこの高さ、輝きはとんでもない強度のはず。ここは魔法阻害領域だぞ・・」


聖系の魔法は、アンデッドだけでは無く、全属性にも効果が出る。

聖なる壁は、術者の能力によって強度も高さも変化する。


その場に居る全員が、自分たちの逃げ場を失った事を悟る。


「お、お前・・、何者だ?」

「えっ? ご存じないんですか?」

「こんな力を持った奴なんか知らん、聞いた事もないぞ!?」

「聖使いノバですよ? 墓守の・・シャイニングミラー」


言葉の途中で、魔法を発動する。


聖系の魔法を乱反射させる、ドーム状の結界を展開する。


「馬鹿な! 二つの魔法を起動しつつ、維持できるだと!? 二重起動技能か!?」

「シャイニングミラーって、単体じゃ何も意味が無いはず・・って、まさか!?」


敵同士のギルドマスターと、特別監査官が愕然としている。


魔法のは道具などを使わない限り、一人では、一回につき一つの魔法が限界である。

そんな中、二つの魔法を起動できる能力を、二重起動技能と呼ぶ。


しかし僕が神様から与えられている能力は、複数魔法同時起動技能だ。


僕は両手を高く天に向ける。


「ホーリースターアロー!」


弓を引くような動作をすると、聖なる弓矢が手に現れ、矢の側の手を離す。


幾千の聖なる矢が全方位に放たれる。


シャイニングミラーによって、聖なる矢が乱反射され、ホーリーウォールで逃げ場のない邪教徒たちは、何度も撃ち抜かれる。


「ば、馬鹿な・・複数の魔術師で行う複合魔法・・だと。しかもこの数や範囲は・・一体・・?」


何種類の魔法が組み合わさって、一つの形となる複合魔法。

一人一回一魔法が限界ならば、複数の人間で行う事を前提に考えられた魔法である。


「聖系魔法って、支援回復だけじゃないんですよ?」


脳裏に自分を裏切った二人の姿が、フラッシュバックする。


「す、凄い・・」


監査官の口から、溜息の様なつぶやきが漏れる。


「監査官さん、急いで町へ戻りましょう。聖系魔法はアンデッドを滅ぼす魔法で、生者に関しては封印にしかなりません」

「わ、分かりました」


町の人たちに助けを求めるために、二人は町への道を急ぐ。






町への道を急ぎながら、監査官が聞いて来る。


「ギルドマスターも言っていましたが、あなたは一体・・」

「詮索している余裕があるんですね」


監査官の言動に、苦笑いで答える。


「だって、あのホーリーウォールの変形に強度や大きさ、魔法阻害領域で上級魔法や、たった一人で複合魔法なんて普通じゃ考えられませんよ?」

「うーん、確かギルドのルールで、個人の詮索はご法度のはずですが?」

「そ、それは・・、そうなんですが・・」


監査官とのやり取りで、もうここには居られないかもとの思いが過ぎってしまう。


「監査官さん、待って下さい!」

「えっ!?」


僕の停止の呼びかけで、二人はその場で立ち止まる。


目の前に町がある。

無数の灯りがある。


「・・ま、まさか?」

「町の人たち、全員で僕たちを出迎えてくれるのですかね?」


ギルドマスター達と揃いのローブを身に纏い、お出迎え・・


「そ、そんな・・、町全体が邪教徒集団だったなんて・・」


一人が進み出て、ローブの顔の部分を捲る。


「し、信じられない。・・町長、何故ですか?」

「ふむ。ギルドマスターが倒されたのかな? まあ、仕方がない。我々の方で儀式を進めるとしよう」


監査官の言葉は、全く聞こえないかのように振舞う。


「くっ・・」


向こうは灯りを持ち、こちらは漆黒の森を駆け抜けなければならない。

流石に町の人たち全員が相手では、二人が無事に逃げきれる可能性は少ない。


「聖使いノバさん。流石に街中まで仕掛けはしてませんよね?」

「仕掛け・・ですか?」


どうやら墓地には事前に仕掛けがあって、大技を使えた理由だと勘違いしているようだ。


「申し訳ありませんが・・。どうやら手加減している余裕はないようです」

「えっ!?」


僕の言った言葉、手加減? 一瞬理解できなかったのか、監査官が振り返り、目を見開き固まる。


「な、何だ・・それは・・」


町長の驚愕の表情と言葉が、監査官の言動に追従する。


「ホーリーシューティングスピア マキシム!」


ノバは大木と見まごうばかりの光り輝く槍を空へ投げる。

町民たちは呆然として見送ったため、逃げる機会を失う。


天高くで爆発したかのように、聖なる槍が雨霰のように降り注ぐ。


「「「ぎゃぁぁぁあぁぁぁー!」」」


絶叫が響き渡り、槍の集中豪雨が終われば、全ての町民が槍に縫い付けられている。


「ホーリーシューティングスピア・・、上級・・魔法なのに、今の威力に、範囲・・」


上空からの無数の槍の散開放出する魔法だが、町全体などあり得ない。


「監査官さん、急いで王都へ。この土地では封印は長く持ちません」

「は、はい! 今すぐに!」


僕に急かされて、町にあった馬で王都へと不眠不休で駆け込む。


急がなければ、一人で町の人たちすべてを見張るのは不可能だと分かったのだろう。


ギルド本部へ駆けこみ、事の次第を全て報告。

ギルドの手に余ると判断され、王宮へと報告。

急いぎ軍の手配がなされ、邪教徒の町へと向かう。


封印は解ける事無く、ギルドマスターや町長、町民すべてを縫いつけていた。


軍の人たちに協力して、少しずつ封印を解き、一人残らず捕縛されて行く。




その混乱の最中、ひっそりと僕は姿を消す。





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