僧侶とは即ち・・
【僧侶とは即ち・・】
荒地の国でギルドに登録しただけで、独自のルートを探して生活していた。
しかしパーティを助けた事を切っ掛けに、ある冒険者たちから目を付けられたしまった。
そこまでなら、まだ魔法職の続行だったが、不遇職だからと強引な手段な上、冒険者ギルドからもいらぬ嫌疑をかけられ、ギルドからの追放までされる事になった。
港町へ向かう途中で、呼ぶ事も無く『使徒の訪れ』が、僕の目の前に現れる。
「今回の場合は仕方無かったんでしょう?」
「まあ・・、そうなんですが・・」
目の前に命の危険に晒されている人たちを、自分の都合で、見捨ててこの先、その思いにさい悩まされるより、ずっとましだと思うし、見捨てたくもなかった。見捨てるつもりもなかった。
しかしあの町で、あのギルドでやって行く自信は正直無かった。
「でも、やっぱりノバ君よね」
「えっ!?」
「こっちの話よ」
良く聞き取れなくて聞き返すが、ただ優しく微笑むミツカ様。
「そうそう、勝手に現れてゴメンなさいね」
「いいえ・・、とっても感謝しています」
神様はずっと見ていて、自分個人の事を心配して『使徒の訪れ』送ってくれたのだろう。
「冒険者登録は、偽装の指輪に、透明化して飛行で何とでもなるし。後は今後の相談をしましょうかね」
「はい、お願いします」
風系の魔法使いになる時、幾つかのルールを神様と取り決めていた。
初めに、ギルドの中堅になる。
中堅になって、あっちこっちから声がかかってしまうか待つ。
番外編で、ギルドを使わない方法もある。
番外編のはずの、ギルドを使用しないを、いきなり選択してしまった。
(ここが失敗の原因かもしれない)
「うーん、流石にこのパターンは初めてだし、どうしましょうかね」
「はい、ちょっと困ってしまっていて・・」
「人助けは、ノバ君を英雄にするか・・。となるとノバ君の気持ち次第ね」
「えっ、僕の・・気持ですか?」
「これから先の旅路に、とても大切よ?」
「どう言う意味でしょうか?」
「ノバ君、人助けの度に逃げるつもり? それとも人助けはもうしない?」
「っ!?」
神様の言葉に衝撃を受ける。この先誰も助けないのかと・・
「そ、それは・・」
「厳しい事を言うかもしれないけど、そろそろ決める必要があると思うわ。何でも一人で出来る訳ではないと感じ始めて入るんでしょう?」
「はい・・」
自分の生活は、多くの人たちに助けられていた事を思い知った。
ボッチでは生きて行くのはままならない。
ソロであっても、多少の人との関係は必須である。
とは言え、再びパーティによる裏切り行為が目の前に現れた。
「もう少し・・時間を・・、考える・・」
「分かったわ。心の傷がそう簡単に癒えるとは思わないから。今回の一件は有名になって、パーティから誘われてしまい、その上で裏切られた、と割り切り次へいきましょう」
「と言う事は、他の職業に?」
「そう。提案として、人を助ける職業をやってみましょう」
「・・僧侶職、ですか?」
「その通りよ」
自分を裏切ったパーティの四人のうち三人が就いていた職業・・
「ゴメンなさいね。ノバ君はこの世界で生きるために、一歩踏み込んだ所に入ってるの」
「分かります、分かっています」
神様の言いたい事は分かる、ただ自分の心が付いてこない・・
「もし、もしノバ君が望むなら・・」
「僕が・・、望むなら?」
「私が養ってあげてもいいのよ?」
自分で生活をしない、ヒモのような生活をするなら、こんな悩みは全くない。
「ダ、ダメです、それは絶対に。これ以上、神・・ミツカ様にご迷惑を・・」
「私が貴方をこちらに呼び寄せた。その責任は取るわ」
非常に魅力的なお誘いではあるが、何より前の世界の訓練村の教え、自立に反する。
「イヤイヤイヤイヤイヤ・・、ダメダメ、絶対にダメ!」
「そう、残念ね」
ローブで顔を隠しているから口元しか分からない。
でも残念と言っているのに、ミツカ様から嬉しそうな雰囲気が感じ取れる。
「ミツカ様。僧侶職・・やってみます。でもパーティは・・」
「分かったわ。いきなり全部なんて無理でしょうからね」
僧侶職・・
パーティ・・
神様の言う通り、これから先の暮らしを考えると、乗り越えなくちゃいけない壁だ。
やるだけやってみよう。
無属性魔法の透明化と、移動魔法群の飛行魔法で港町へと入る。
『職業選択の自由』で再び無職になり、就活神殿で僧侶になる。
[ 名 前 ] ????(ノバ)
[ 職 業 ] 聖系魔法使い
[ レベル ] 1
[ 生命力 ] 50
[ 技 力 ] 40(+100)
[ 腕 力 ] 5
[ 耐久力 ] 5
[ 知 力 ] 20
[ 精神力 ] 20
[ 早 さ ] 5
[ 器用さ ] 10
[ 運 ] 10
[ スキル ] 聖系魔法(初級)
偽装の指輪を外した状態がこれ。
[ 名 前 ] ノバ(ノバ)
[ 職 業 ] 聖系魔法使い、聖者
[ レベル ] 1
[ 生命力 ] 50
[ 技 力 ] 9999
[ 腕 力 ] 5
[ 耐久力 ] 5
[ 知 力 ] 999
[ 精神力 ] 999
[ 早 さ ] 5
[ 器用さ ] 10
[ 運 ] 10
[ スキル ] 聖系魔法(神級)、無属性魔法(神級)、技力回復量・速度(神級)、魔法効果補正(神級)、魔法制御(神級)、無詠唱技能、複数魔法同時起動技能、同一魔法複数発動技能、経験値取得率神級、レベルアップ補正神級
聞きたい事があったので、神官に聞いてみた。
「あの、ステータスを見て不思議だと思ったのですが?」
「何かご不明な点が?」
「職業は、僧侶では無いのでしょうか?」
一緒にステータスの表示された板を、一緒に見てみる。
「なる程、なる程」
「えっ? どう言う事でしょうか?」
一人で納得している神官に、理由を確認する。
「聖系と言う才能を持っている方と言うのは少ないのです」
「そうなのですか?」
「教会と言う組織で修行する事で、神様から才能を与えられます。そう言う方が、そのまま教会で職業に就くと僧侶となり、それ以外が聖系魔法使いとなります」
「へぇー」
「既に教会に勤めていると言う事から、僧侶になれるとも言われています」
「あっ、なる程」
魔法使いは、特に働く場所が定められていない。
僧侶は教会と言う組織に、就職していると言う意味なのだろう。
「ちなみにですが、教会で働かないと上級職に成れないのでしょうか?」
「うーん、ちょっと調べてみましょう」
そう言うと、就活神殿内で共有されている資料を調べてくれる。
「どうやら聖系魔法使いの方は、そのまま教会へ向かわれていますね」
「聖系魔法を持っていて、教会に勤めなかった人は居ないと?」
「そう言う事のようです」
では偽装していない状態で付いている、聖者と何なのだろうか? と言うか何故二つも?
「参考までにですが、僧侶の上級職とは何がありますか?」
「司祭、司教、大司教、枢機卿、教皇があります。そうそう、得意分野別に回復支援の治療師、攻撃の退魔師、肉弾戦の僧兵などの二つ名が付く事があります」
「二つ名・・ですか?」
「普通は職業の所は一つなのですが、司祭と治療師と言う風に二つ付くのです」
「そうなんですね」
職業の所に二つある理由が判明するが、聖者が出てきていない。
「あのぉ・・、聖者と言うのを聞いた事があるのですが?」
「ああ、ありますね。教皇の上です。そして誰にでも持てる二つ名ですね」
「教皇より上で・・、誰にでも持てる?」
いやいやいや、教会に属していないと教皇になれないはずなのに、何故聖者に成れる?
「はい。聖系魔法が神級に至った人であれば、誰でも」
「ああ、なる程・・」
神官の言葉を、即座に理解した。僕の聖系魔法が神級のための聖者なのだと。
礼を言って、転職料を支払うと就活神殿を出る。
神様から生活援助金の他に、何故か転職祝い金として結構な額を貰っている。
ヒモの様な生活はダメと言いながらも、定職に就けず今に至っている。
そのまま冒険者ギルドへ行って、聖使いDとして登録する。
「聖系魔法使い? 珍しいですね、教会に行かれないのですか?」
ギルドの職員からも珍しいと言われてしまって、ちょっと緊張した。
初っ端から目立ちたくないのに・・
協会よりも冒険者になりたいとか、ごまかしてギルドを飛び出す。
そのまま依頼を受けずに、町の外へ出て、無属性魔法で透明化と飛行で、神様から教えられた場所へと向かう。
その島は、島全体が広大な森を持っていた。
「この島だね」
木々の間を潜り抜け、大地に降り立つ。
苔むして、濃い緑のむせかえる香り、空も緑の天蓋・・
「うーん? 何でここが、僧侶の不遇になるんだろう? 魔法阻害領域ではあるけど」
街道に沿って町に向かうが、特に僧侶に対して難しい部分は感じられない。
ただ所々に火気厳禁と書かれた看板が立てられている。
「何でこんなに看板が立てられているんだ?」
意味もなく町やギルドがこんな事をするはずがない。
そんな他愛もない事を考えながら町へと入って行く。
特に城壁の様な物も無く、ただ衛兵が街道に立っているだけ。
「身分証を」
「はい」
冒険者ギルドの登録証を提示する。
多分職業の所だろう、視線が止まり怪訝そうな顔になる。
同僚を呼び、何やら言葉を交わし、冷たい視線を投げつけてくる。
「入っていいぞ」
「ありがとうございます」
特に何か言われる事も無かったが、衛兵の視線は背中にずーっと突き刺さる。
居たたまれなくなり、冒険者ギルドを見つけると飛び込んでしまう。
前回と同様に、ギルドを使用しない方法をやってみるつもりだったのに・・
仕方なく、そのまま受付の職員の所まで向かう。
「初めまして。えーっと、聖使いDと言います。今、荒地の国から着いた所でして」
「それはそれは。遠路はるばる森の国、冒険者ギルド中央支部へようこそ! と言いましても、私自身も最近こちらのギルドに転属となりまして」
お互い簡単に自己紹介を済ませ、冒険者ギルドの登録証を見せる。
確認のために受け取り、内容を見た瞬間、その場の雰囲気が凍りつく。
「・・えっ!?」
何事かとキョロキョロするが、雰囲気を作り出しているのが目の前の職員と知る。
「本日はどう言ったご用で?」
先程までのフレンドリーな態度が、一変して冷たく固いものになる。
二人の衛兵から受けた視線の、何倍もの冷たい視線を受ける。
「あ、あのぉ?」
「ど・う・い・っ・た ご用件で?」
職員の態度の変化の理由が分からないが、何時もの様に、嘘の言い訳をする。
「えーっとですね。師匠から魔法の武者修行に行って来いと言われまして・・」
「つまり、私たちを馬鹿にしに来た、と言う訳ですね」
「えっ? えぇぇぇ!? どうしてそう言う事になるんですか?」
武者修行が、ギルドの職員を馬鹿にしている事になるのか、全く分からない。
「ご存じないのでしょうが、ここは魔法阻害地領域と言いまして・・」
「あっ、知っています・・けど」
「・・知っていて?」
職員の醸し出す雰囲気が更に悪くなる。もしかすると闇落ちすれすれじゃないか?
「と・う・ぜ・ん、この地域は魔法職から見捨てられました。当然僧侶にも!」
「は、はい!?」
職員の怒りに、直立不動の体勢を取ってしまう。
「先人たちの尊い犠牲で、この森は豊かな薬草、様々な薬やポーションの原材料は元より、貴重希少な素材の宝庫となりました」
「ご、ご苦労を・・」
「回復できる魔法使いや僧侶に見捨てられた冒険者たちは、この森で生まれる薬が命綱であり、生きて行く人々の生命線でもあるのです!」
正に草を食んで命を繋いでいる人々の所へ、ヒョッコリ聖系魔法使いが現れて、修行ですと言われて、はいそうですか、なんて到底受け入れられなかったのだろう。
職員の怒り、正確にはこの森、いやこの島に住む人々の怒りを思い知らされる。
表情には、とっとと帰れこの野郎! 今すぐ目の前から消えろ! と書いてある。
僧侶や聖系魔法使いの不遇を通り越して、嫌われた場所なのである。
「待ちなさい」
二人とは別の所から声がかかり、そちらへと向く。
「冒険者同士、お互いに助け合う場所。それが冒険者ギルドのはずだ」
「ギルドマスター・・。森の国に聖系魔法使いなんて・・」
尚も言い募ろうとする職員を推し留めて、登録証を目にする。
「聖使いD君と言うのか。僧侶では無く聖系魔法使い・・」
ギルドマスターは、未だに直立不動のノバに視線を向ける。
「もし君が受けてくれると言うなら、頼みたい仕事がある」
「「えっ!?」」
ノバと職員の驚きの声が重なり、お互いの顔を見合わせる。
ギルドマスターは、職員に向かって話す。
「君はこのギルドに来て日が浅いから知らないだろうが、この森、この町の傍に特殊な場所があるんだ」
「っ!? も、もしかして墓守ですか?」
職員も思い当たる事があった様子で返事をする。
「ほう、良く知っていたね。そう、彼には墓守をやってもらいたいんだ」
「し、しかし、あれは・・」
「あのぉー、墓守とはどのような仕事なのでしょうか?」
職員とギルドマスターが話している横から、ノバが割り込む。
「聖使いD君は、この町に来る時に看板に気付いたかね?」
「ええ。火気厳禁と言うやつですよね」
「そうだ。この町は薬とポーションで成り立っている。冒険者もね。山火事はその全てを灰にしてしまう死活問題で、仕方がないでは済まされない」
「はい、そう思います」
ここは魔法阻害領域、一たび火事が起これば、自然鎮火を待つしかない。
せめて破壊消火で延焼を食い止めるのが精一杯であろう。
「厳しく火気の使用を禁じているが、当然、火の使えない冒険者たちは危険が増す」
「野宿や戦闘で火を使えないと言う事ですか」
「その通りだ。貴重希少な薬草を守るため、討伐の依頼が多いが、命を落とす物も多い」
「・・・」
「遺体が見つかればまだ良い方だ。骨さえ食われる者も居る」
この手の話は、此処だけに限った話では無い。
しかし目の前には薬草の宝庫。火は絶対に使えない、魔法阻害領域で魔法も使えないでは厳しいだろう。
「せめてもと、冒険者たちを弔った場所、墓地があるのだ」
「なる程・・」
これもどの町にもあるが、大概は教会に併設されていたりする。
「しかし教会が無いせいなのか、どう弔ってもアンデッド化してしまい、村人を襲うという事件が発生した」
「それは・・」
教会は死者に対するエキスパート。確かにアンデッド化の原因の一つかもしれない。
「そこで墓守として、冒険者たちにアンデッドの討伐を依頼した」
「・・それで?」
未だ自分に依頼があるのだから、解決には至っていない事ぐらい簡単に予想が付く。
「その冒険者たちが帰って来ない。過去に数回送り込んで入るが」
「そうですか・・」
「ここの冒険者たちは物理攻撃職ばっかりで、火も使えない。逆にアンデッドにやられたのか、何かの理由で精神を病んで逃げたのかは分からない」
どんなアンデッドかにもよるが、聖系や火系の魔法は元より、火その物が使えなのは、正直キツイだろう。
「そこで渡りに船と言わんばかりに、聖系の魔法使いがこの町を訪れてくれた」
「ギルドマスター、本音がボロリと出ていますよ」
「取り繕っても仕方あるまい。いくら憎い聖系魔法使いでも、人の命には代えられん」
確かに本音がダダ漏れではあるが、ギルドマスターの決断は正しい。
上に立つ物は好き嫌いと、使える使えないは別に考えなくてはならない。
そして自分は聖系魔法使いで、この問題解決に適した能力を持っていると自覚している。
「分かりました、お受けします」
「受けてくれるか! ありがたい」
その場からすぐに、墓地のある場所へと連れて行かれる。
グルっと一回りしてみるが、見た感じも、肌に感じる雰囲気も、特に変な事は無い。
「もしアンデッドが出るとしたら夜だろうから、深夜番が良いだろう。本当は毎日と言いたい所だが、体調を崩されても困るので、そのへんは調整してくれ」
「分かりました。明るい内にもう少し調べて行きます」
「そうか、頼む。ああ、あと火気厳禁でな」
「・・はい」
ギルドマスターの別れ際の、最後の釘刺しに苦笑いしてしまう。
墓地の中や周辺を確認しながら、自分の魔法をスキル『魔法効果補正』と『魔法制御』で調整する。
特に何もないように感じると言う事は、突然何かが起こる可能性があるという事でもある。
「不測の事態に備えて、色々準備した方が良いかな?」
独りごちると、あちらこちらに仕掛けを施しておく。
全ての作業を終えると、一旦町へと戻り夜に備える事にする。




