三上菜乃花 ダウナー系コミュニケーション障害
カラリと保健室のドアが開き北斗が気づく。
「あら?どうしたの?気分でも悪いのかしら?」
北斗の問いかけに生徒は、
「カ、カウンセリングの、せ、先生いますか?」
「いるよ」
開いた相談室の向こうに誠史郎は立っていた。
「どうしたのかな?話せるのなら、話してごらん?」
誠史郎がうながしながら相談室に使用中の札がかかる。
「あ、あの、あたし、ク、クラスでうまく話せなくって」
「ほう、クラスメイトとか?」
「は、はい会話しているとそのうち分からなくなって、何が何だか分からなくなるんです」
『軽くパニックを起こしているな』
「だ、だんだん話すのが辛くなってみんなから離れてきちゃって・・
いま、ぼっち状態なんです。どうしたら治るでしょうか?」
『滑舌が悪く、友人との軽い会話ができない。ダウナー系コミュニケーション障害の疑いありだな』
誠史郎は心の中でつぶやく。
「大丈夫。すぐに治るよ。無理に自分から話さなくてもいい、相手の話にうなづくだけで十分だよ。
ただし、その時は必ずその人の目を見ること」
「えっ?」
「話している人の会話に相づちをうち、興味を持ってみよう。
それからクラスメイト全員と仲良くなる必要はないよ。
少しの人数から始めていきなさい。理想を高く持ってはダメだよ」
「は、はい」
「自分が話したい事は事前にメモしておくこともよいね」
「自信を持って、自分に自信を持つことから始めよう」
「大丈夫。何事も言うじゃん。小さいことからコツコツと。とね」
笑顔で誠史郎が語りかける。
「は、はい・・わ・わかりました・・で、できるかわからないけど・・」
自信なさげに保健室を出ていく菜乃花。
「どうしたんですか?彼女?」
「ダウナー系コミュニケーション障害かもしれませんねえ。
表現したい事がうまく出無くて滑舌が悪くなってしまうんですよ。まあ軽いほうだと思いますから、
自分自身に少しずつ自信を持つようにしていけば何とかなるかな?」
「まあクラスメイトの協力も必要だなあ。ちょっとお願いしてみるか」
「つまづいちゃったら面談してみよう。まあ、クラスメイトと仲良くなりたい欲はあるし」
コーヒーを飲みながら誠史郎は校庭の方を眺めていた。
「まあ、原因を見つけないと解決しないの当たり前だけどさ」
北斗に聞こえないように呟いてみた。